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一進一退の攻防!

 サクラはリコが足止めしている隙に魔道具の詠唱に入る。


「『変幻自在の斬撃よ、我にその力を付与したまえ。』『韋駄天のごとく足りぬく速さを我に与えたまえ。』『灼熱の炎よ、わが剣に纏いすべてを焼き切る力を与えよ。』」


 三つの詠唱を完了させ付与術を自身に掛けた。燃える剣、高速移動、変則斬撃が可能になり、サクラはクマに向かって走り出す。

 接近するとやはりゾウが庇いに入ってくる。それを見越していたサクラはゾウにめがけて斬撃を行う。その斬撃はゾウには当たらず、変則斬撃により無理やり軌道を変え後ろのクマに襲い掛かる。灼熱属性が付与されているので肉が焼けるにおいと共に【重撃】による複数斬撃を与える。

 文字通り身を焦がすような激痛でクマが悶える。そして、散った火花が体毛や装備に引火し火だるまになり、ズゥンと倒れる音がした。それを見たゾウはとてつもない速さでサクラに突進をする。

 しかし、サクラは高速移動の魔法でそれを見てからでも簡単に回避する。飛び上がりゾウに斬撃を与えようとすると、意図もしていないところからの攻撃でサクラは吹き飛ばされる。

 彼女は吹き飛ばされ、地面に打ち付けられ転がる。


「サクラさん!?」


 呼びかけるも彼女は気を失っているのか立ち上がることができなかった。レンは焦って、サクラの元へ走る。


「オレの責任だ……。助けなきゃ——」


「戦闘不能者への回復と追撃は禁止だ!気にせず戦うといい!」


「でも……」


「サクラさんの魔力は消えていないので気絶です。私たちはあの二人を何とかしなくては……。」


 よく見るとクマの獣人は後ろに控えていた兵士たちに水をかけられ、運ばれていった。サクラも同じように女性の救護班がすぐに回収していき、隅の方で治療を受けていた。トラとレンの目が合う。リコの水の弾丸魔法を【重撃】で増やしていく。その威力は最初に撃ったけん制用のものと桁が違い、演習場に大穴がみるみる空いていく。それでもトラは素早く後ろに下がり、ゾウが攻撃の盾になる。やはりゾウに対しダメージが与えられていなかった。大きな体格であるはずが、いとも簡単に回避されるため、リコは少しムキになって速射から連射に変え、雨のように降り注ぐ弾丸を放つが、それだとゾウには大したダメージにならなかった。レンは水浸しになった演習場を見てハッとして、リコに作戦を簡単に伝える。

 

「リコさん、【灼熱】魔法を組みます!」


「え!?は、はい!『火の精霊、サラマンダー、風の精霊、シルフよ。我が声に応え顕現せよ。』」


 レンの指示でリコはサラマンダーとシルフを呼び出した。


「精霊様、灼熱を組むのでご協力お願いします!」


 レンは紋章に意識を集中した。リコはレンの意図は読めていなかったが、時間を稼ぐため風の弾丸と突風の魔法を展開し、けん制を行っていた。どれだけ狙いを定めてもトラは回避し、威力はないものの突風の魔法でゾウの歩みを止めていた。


「レン君!このままでは持ちません!」


 リコが焦って振り返るとレンは丁度【灼熱】を組み終えたところだった。紋章をリコに託し、レンは発動範囲と場所に指をさす。


「あの水たまり達に魔法を打ち込んでくれ!」


「よ、よくわかりませんが行きます!『灼熱よ、その力を解放し、すべてを焼き尽くせ!』」


 リコは水たまりの水に魔法を打ち込む。トラとゾウは自分のところに来なかった魔法を見ていると、水が突然爆発した。冷えた水に急激に熱を与え、突沸現象が起き、熱湯がトラたちに襲い掛かる。トラが腰に下げていた魔道具を展開すると二人は光に包まれる。この光は【守護】の魔法であり、熱湯による攻撃を守るものだった。熱湯の雨が終わると魔法が解け、魔道具が壊れる。


「まだだ!『煮えたぎる水よ、吹き荒れる風にて高温の大気を形成せよ!』」


 レンはルナティクスであらかじめ火の魔法と風の魔法を待機させていた。熱湯により発生した蒸気に火の魔法で加熱し、その蒸気をトラとゾウのいる範囲に渦巻く風を発生させる。

 レンの魔法では威力が足らず、トラたちの魔力を突破できないので魔法によるダメージはそれほど期待できない。しかし、この魔法は加熱と風を発生させるだけなのでそもそもダメージはない。

 レンの狙いはトラだった。同じ猫型獣人であるレンは蒸気の恐ろしさを知っている。猫型獣人の体毛は自身の脂で水を弾くが、洗浄液やお湯を浴びるとその脂は溶けてしまい、撥水効果がなくなる。それは蒸気でも同じであり、油はどんどん溶けていく。そうなると、ふさふさだったトラの毛並みはシナシナになり、トラの本体というべきか体のラインが浮き彫りになる。

 その魔法を見たアスランは同じ猫型獣人のため、すごく嫌な顔をしていた。

 そう、この魔法による攻撃は完全に猫型獣人への嫌がらせなのだ。レンは空中にルナティクスを投げ、指揮棒のような杖を取り出し、詠唱を始めた。


「とどめだ!『すべてを凍らせる冷気よ、その力であたりを銀世界へ変えよ!』」


 【氷結】魔法で演習所を凍土へと変えた。先ほどの蒸気による攻撃とこの凍土に変える魔法はゾウには一切効いていないようだった。しかし、体毛による防寒機能を完全に失っているトラには有効であり、ガチガチと歯を鳴らし、鼻水を垂らし、くしゃみが止まらなくなり動けなくなった。

 そんな姿を見たアスランは顔を抑え手合図で周りの兵士に指示をするとトラは毛布にくるまれ、回収された。リコとゾウはその光景を見て目を見開き、言葉を失っていた。まさか、レンの魔力で強敵の一人を倒してしまうことが起こったためである。

 演習場の端で治療を受けていたサクラは意識を取り戻しており、彼の成長を見てリコはを羨ましく見ていた。

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