レン調査隊、出動!
国外調査当日。レンたちは早朝のまだ完全に明るくなっていない時間帯に身支度を済ませて、部室を出た。
この時間帯に学園へ来るものはおらず、いつも賑やかな学園とは打って変わって静まり返っていた。
正門を出て、通学路を歩いていると、サクラは振り返り、目を見開いていた。レンとリコもサクラを見て振り返ると、【太陽】の魔法から光が漏れ出し、学園を照らしていた。
それは、一年間過ごしてきた中で一度も見たことがない光景であり、とても美しく、感動のあまり三人は言葉を失った。朝の冷たい風がビュウッと吹き三人は我に返った。
「なんだか、ちょっと寂しくなっちゃたな……。」
「そうですね。毎日通っていましたし、これから二月も帰られませんから……。」
「さみしいけど、オレ達は卒業試験でちょっと行って来るだけだから、早く終わらせてまたこの景色を見に行こうよ。」
「あ、それいいね!それじゃ、ちゃちゃっと終わらせてやりますか!」
「はい。では、調査の目的地に行きましょう。レン君、指揮をお願いします。」
「え!?お、オレ……?」
レンは突然隊長に任命され、戸惑っていると、サクラはレンの肩を叩き、後押し……というよりもダメ押しされた。
「任せたよ、隊長のレン君!うーん、レン調査隊でいいかな?」
リコと目が合うと、しっかりと頷いた。後ろ頭を掻きながら、隊長という立場を受け入れ、再び歩き出した。
「それじゃあ、レン調査隊行きますか!」
『おお~!』
元気いっぱいの掛け声が学園の近くで響いた。
太陽もすっかり明るくなり、そろそろお昼を回りそうな頃、レンたちはまだ国内にいた。国外に出るまでは学園から大体一日かかる距離だ。魔法を使って走ってもいいのだが、魔力が枯渇すると野営はおろか戦闘に突入した際、強い魔法を放つことができなくなる。
ご利用は計画的に、である。そうならないように、三人はゆっくりだが歩いていたのだ。
幸い、国内は弱い魔獣しかおらず、サクラとリコの魔力量に恐れをなして近づいてくることはない。レンは長い時間歩くことには慣れているが、サクラとリコは少し疲労が見えていた。レンは小高い丘の頂上だったこともあり、カバンを置いていく。
「そろそろ、休憩にしようか?」
「そうですね。一度休憩をはさむのがいいかと思います。」
「アタシはおなかペコペコだよ~。」
岩場に座り、三人は干し肉を食べることにした。この肉は、店で購入したもので、そのあたりにいる弱い魔獣の肉から作られた食材だ。肉は硬めであるが、三人には牙があるので問題なく食べられる。
魔獣には大まかには獣型、虫型、水生型、植物型に分けられる。この中で虫型と水生型が食材に適している。一番の理由としては、国内で数がかなり多いことと、捕獲や討伐がしやすいことがあげられる。
植物型は国内にはほとんど生息しておらず、見かけたとしても子供踏みつけるだけで倒せるほど弱い。そして、倒されると可食部がなくなるほどボロボロになって消滅する。
獣型は一応肉を食べることができるが、そんなに美味しくないうえに攻撃的な個体が多いので戦闘能力が必要となる。
そのため個人や食材関係の職業からは敬遠され、傭兵など戦闘系の職種の者に討伐を依頼される。そして、三人が食べているのは水生型の魔獣の肉である。
「長閑だねぇ。国外に行ったらこんな感じに休めないんだろうね。」
「そうかもしれないね。オレ、戦災孤児だったからこんな遠くに来たの初めてなんだよね。」
「私もこんなに遠くまで歩いたのは初めてです。」
「レン君って孤児だったんだ!?生まれた時から?」
「うーん……両親の記憶はないんだよね。まあ、ずっと施設の中で育っていたからよくわからないんだ。」
「ふうん。お姉さんがよしよししてあげようか?」
「い、いや、しなくていいよ!?しかもお姉さんって同い年じゃないか?」
サクラは「ちぇ~」と言いながら手に持っていた残りの干し肉をほおばっていた。
リコはなぜかキリっとしてレンを見ていた。サクラ言動で嫉妬しているのかと思いきや、サクラに便乗して頭を撫でようとしていた雰囲気であった。レンは苦笑いをしながら、収納カバンから大きめの水桶を取り出し、空中に水の紋章を描いた。
「『清浄なる水よ、われらの渇きをいやす水を生み出せ。』」
飲み水の魔法であり、レンの腰ぐらいの高さから水がザバザバと流れ落ち、水桶いっぱいに水が入った。それを水筒に移して三人で分けた。普通の水の魔法でも飲み水として使用することができるほどの鮮度はあるが、桶を破壊してしまうほどの威力がある状態で出てくるので木の水桶では桶が破壊され、採取が困難である。そのために飲み水の魔法というものがある。これは生活用魔道具にも入っているメジャーな魔法であるのだ。
そして、サクラやリコが発動すると最小限の威力にしても桶に収まらず、周囲も水浸しにするので彼女たちは、家の水場などでしか使えない。その点レンは普通に発動しても桶いっぱいの量にしか出ないので丁度良いのだ。こういう時は魔力量もそこそこでよかったと実感している。水桶を収納カバンに仕舞い、立ち上がった。
「よし、行こうか!」
「はい。」
「はーい。」
三人は再び歩き始めた。道のりは長いが国内はとても楽しい雰囲気であった。
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