精霊王の魔法!
規則正しく配置された石の三色の光が目に入る。レンはその光を見てどんな魔法が分からなかったが、魔力がかなり込められていることが分かると、頬に汗が伝う。
「リコさん、あれって複合魔法だよね。」
「え、ええ。しかも風・水・火の複合魔法【万雷】です……。まずいですね。」
リコの頬を緊張の汗が伝う。その汗は風の精霊魔法で瞬時に乾かされる。レンはリコの表情を見て覚悟を決めた。
「リコさん、オレたちも複合魔法だ!どこまででもついていくよ!」
レンはリコとのリンクを強めるために魔力を解放した。背中からくる魔力を感じ、その中にレンの覚悟も感じ取り、リコはサクラに目線を戻す。首に下げたネックレスも同時に強く輝きだした。
「大変かもですが、お願いします!『炎の精サラマンダー、風の精シルフ、水の精ミズチ、地の精ノーム。すべては円環となし、巡り巡れ!』」
リコは持てる精霊をすべて実体のある姿で召喚した。
——ご主人様のピンチです。私たちとあなたで複合魔法を作ります。いいですね?
——【万雷】を防ぐにはわれらでは力不足だ。
——では精霊王をお呼びするときだね。
——……。
土の精は何も言わなかったが協力してくれるみたいであった。
「オレに……リコさんに力を貸してください!」
その意気込みに精霊たちは答え、レンの【重撃】を利用して組み上げていく。頭が真っ白になりそうなほど力を籠め、紋章の組み上げと維持を行う。リコは組みあがっていく紋章をみて、【万雷】の発動を遅らせるためにサクラに風の弾丸でけん制していた。
ついに極限魔法と言っても恥ずかしくない紋章が組みあがった。レンも同時に限界が近づき、堪えていた。
「リコ……さん!これを!」
見上げると今までにない大きさの紋章であり、リコの精霊たちも疲弊して実体を保てなくなっていた。リコは目にぐっと力を込めて、祈るように手を組む。
「みなさんの……レン君の力。受け取りました。『四大元素を司りし大精霊よ。わが祈りの声を聴き入れん。万物を滅さん雷光を打ち払い、われらを守り給え。わが名は、リコ。』」
祈りと共に歌を歌うように詠唱をし、精霊と戯れるように華やかに舞う。そして、契約をしていない精霊に自分の名を告げ、【召喚】を発動する。リコの呼びかけに応え、紋章が光り輝く。
「真っ向勝負、絶対に負けな——っ!?」
サクラはリコの召喚術と決着をつけようとした瞬間、圧倒的な威圧感に気圧されてしまった。膝をつき、丸くなる。歯がガチガチと鳴り、サクラにとって今までにない恐怖を感じていた。
【万雷】の魔法は発動したが、強い光によって守られ、紋章もろとも霧散させられた。
追撃を覚悟した瞬間、サクラの前に一人の女性が間に立っていた。黒く長い髪、異国の衣装、九本の尻尾——女王であった。
「『健やかに。』」
女王はサクラに手を向けると心が落ち着いた。それは錯乱状態などの心が乱されている状態を落ち着かせる【安息】という魔法であった。
そして、強い光の方に向いて指をパチンとならす。その魔法の衝撃波がリコの【召喚】を打ち破り、結界の魔法【守護】もろとも吹き飛ばした。威力は制限されていたのか、魔法だけ吹き飛ばし、建物に被害はいかなかったようだった。
呆然とへたりこんでいるサクラの横を通り、頭をポンポンと叩く。
「見事な【万雷】じゃった。それともう大丈夫じゃ、安心せい。」
レンとリコは何が起きているのかわからなかったが、へたり込んでいるサクラをみて駆け寄った。
「大丈夫ですか!?【万雷】を防ぐまではわかっていたんですが……。」
「う、うん。大丈夫。女王様がすべて吹き飛ばしてくれたみたい。あ~……やっぱり勝てなかった……。」
「女王様が……。あ、それよりもまず発表を終わらないと……!」
「そうだね。リコちゃん、レン君の回収お願いね。」
振り返るとレンは壇上で倒れていた。リコが駆け寄ると、レンはまだ意識があったようだ。リコはレンを抱きかかえ、サクラと共に舞台中央に立った。
会場は戦闘演習のすさまじさに静まり返っていた。サクラはその光景を見て深呼吸する。
「アタシたちはこのような戦闘訓練を日々こなしていました。それでも、魔物を倒すことは困難で、調査隊がいなければおそらく命はなかったでしょう。」
「ですが、皆さんもどの課外活動に入っても日々戦闘演習は欠かさないでください。そして、魔道具で困ったことがあればいつでも頼ってください。」
「すべては……自分……の、みん……なの、大事なものを……守る……ため……スゥ……。」
ついにレンは意識を手放してしまい、力の抜けた男の子の体をリコが受け止められるはずもなく一緒に倒れこんだ。
「……え、えぇっと、以上で魔法技術部の発表を終わります!せ、先生!レン君が!」
発表の終わりを告げると、大歓声と拍手がレン、リコ、サクラに贈られた。
「戦闘演習、めっちゃすごかったぞ!」
「リコちゃーん!美しかったよー!!」
「サクラちゃんも、とても強かったよ!」
「レン君!ナイスガッツだよ!」
レンたちは屋内競技場を後にし、担任のサムがレンを抱えて、めえと共に保健室へと向かうのであった。
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