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召喚魔法使いのリコ!

 リコとレンは帰り支度をしていた。彼女の帰り支度が終わるのをみて、レンは勇気を出して聞いてみる。

 

「あの……い、一緒に帰る?」

 

「いいですよ?」

 

 帰り道、レンは女の子と一緒に帰るのが初めてで緊張して黙っていた。リコはもともとよく話すほうではないらしい。そのおかげで沈黙のプレッシャーは軽くなり、空を眺める。

 地底にある世界とはいえ空はある。創世記のころの獣人たちが地核を利用した大魔法で空間と太陽、空気、水を作り上げたというのだ。詳しい話はレンの知識ではよくわかっていないが、取り敢えずすごいことなのだと思っていた。レンは風景を眺めながら歩いているとリコが口を開く。


「レン君、あなたはどうして魔法技術部に入部したのですか?」

 

 沈黙が破られ、まさか彼女から話しかけてくるとは思っていなかった。突然話しかけられたのでレンは変な声が出てしまう。

 

「へぁ!?な、なに?」

 

「ですから、あなたはなぜ魔法技術部に入部したのですか?」

 

リコは首をかしげて質問していた。その仕草が可愛らしく見えてレンは鼓動が少しばかり早くなる。

 

「うーん……オレは、地上の世界に行きたくて入部したんだ。」

 

「はい。」

 

「それで魔法技術士になって地上の世界に行けるチャンスが欲しくてね。」

 

「……あなたの魔力では魔法競技部のほうがまだ成績上げられると思うのですが。」

 

「いやー……オレじゃ選抜組には入れないですよ。それに、魔道具を作るのが趣味なんで。」

 

「そうなのですか?中等級くらいの魔力量だと思うのですが?」

 

 リコのように魔道具を介さず魔力の総量が見える人はこの世界ではかなり少ない。それだけリコの魔力がずば抜けているということ。魔力の総量が高いほど、探知にリソースを割くことができるためである。

 

「オレ……魔法が無くてね……ハハハ……。」

 

 レンは乾いた笑いをする。その中に惨めな感情が込められていた。リコはそんなレンを見て疑問に思って首を傾げる。

 

「どうして笑うのですか?別におかしくないと思うのですが?」

 

レンはリコの指摘に思わず黙ってしまう。そしてリコが再び口を開く。

 

「いいじゃないですか?魔法がなくても魔力さえあれば戦うこともできますので心配はしなくても。それに恐らくですが、あなたは魔法を発現していると思います。」

 

 リコの発言にレンはモヤっとした感情が芽生える。今までどれだけ魔法の呪文や儀式をしても発動しなかった。基本的に紋章を描けば誰でも発動は可能だが、レンにはなぜかそれができなかった。そして昨日の入学テストでも発現なしと診断された。そのような状態で発現しているというのだ。レンは揶揄われていると感じて拳をギュッと握る。

 

「……な、何を根拠にそんなこと言うんだ!?昨日も発現なしって言われたんだぞ!」

 

 大きい声を出して反論した。リコは大きい声に少ししかめ、ひるんだがすぐに立て直す。彼女はレンに対して敵対する気は無いため、冷静にかえす。

 

「いきなり大きな声を出さないでください。私は【解析】の魔法は持ち合わせていないので、あなたの魔法は特定できません。」

 

 レンはリコのあいまいな答えを聞き、更に怒りを燃え上がらせようとすると、リコは手を前に出して制止の表現をし、話を続ける。

 

「それでも大体のカテゴリは予測がつきます。あなたの魔法種別は「補助」である可能性が高いです。」

 

「ほ……じょ……?」

 

 レンは聞いたことのない魔法種別を言われ、戸惑ってしまう。

 

「はい、それも付与術みたいなわかりやすいものではないです。」

 

「付与術と違うって補助魔法ってなん……どんなもの?」

 

「系統外の魔法なので詳しくありませんが、私も同じく補助魔法に分類される魔法を発現したので、レンくんの気持ちはとてもわかります。」

 

 レンは驚いた。自分の魔法が補助魔法であることと、リコの魔法も同じだというのだ。この世界で魔法を使えるものではわかりやすく三種類に分けられる。元素魔法、事象魔法、付与魔法があり、国民の九割以上は元素魔法、事象魔法、付与魔法を発現する。それは特別な条件が無いため、入学の際に行われる魔法のテストでも簡単に発揮することができる。

 一方補助魔法は、先ほどの三種類の魔法では言い表せない魔法のことで使用者の数が圧倒的に少ない。魔法のテストの形式では条件が難しいこともあり発揮することがままならないため、魔法なしといわれることがある。レンはその補助魔法に属しているということだった。そして、リコもまた補助魔法に属している。


「補助魔法は発動条件が変なものが多いので、入学の検査で発動するのは困難なのです。あんなへっぽこな検査をするくらいなら、【解析】を魔道具化すればいいのですが、その魔法は魔道具化するのが困難であるから……ブツブツブツ……。」


 リコは何やら呟き始めたので、レンは気になることを聞いた。


「リコさんは何の魔法がつかえるの?」

 

「私は【召喚】です。……実演したほうが理解しやすいですね。」

 

(……おい。)

 

「『風の精霊よ、わが魂の声を聞き給え。彼のものに風の鎧を纏わせよ。』」

 

 リコの呪文が終わるとレンの体の周りに空気の流れが生まれ、毛並みが乱れはじめた。どんどん強くなり、しばらく待っていると風が安定し風の膜ができた。するとリコは落ちている石を持ち構えた。

 

「運動は苦手ですが……いきますっ!!」

 

 助走をつけてレンにめがけて思い切り石を投げた。石は放物線を描いて飛んできた。だが投げられた石はかなり遅いのでレンは逆に驚いた。

 

「ちょっ……え……?この速度なら手でとれるけど……。」

 

 手を伸ばして捕ろうとすると石は風に阻まれ目の前で落ちた。リコを見てみるといつもと変わらなさそうな表情だがとても得意げな表情に見えた。

 

「ほかの精霊も使役できますが、大体このような感じです。」

 

「すごい……。もっと、強いヤツできるの!?」

 

「はい、できますよ。ですが、長時間詠唱やさすがに紋章を組まないと暴走すると思います。」

 

「暴走するとどうなる……?」

 

「町が消滅すると思います。」

 

 真顔で答えられレンは大爆発を起こして消し飛んだ町を想像して苦笑いを浮かべた。するとリコが、少し俯いた感じで話す。

 

「レン君。再々申し訳ないのですがあなたの詳細な独自の魔法はわかりません。専用の魔法や魔道具があれば判るとは思います。参考程度に補助魔法の仲間としては【再生】【自動】【狂化】などがあげられます。この魔法以外にも存在はしているはずです。私からの提案ですが……」

 

 リコが近づき指でピッと横に斬ると風の鎧を解除される。レンはその動きをかっこいいと思って、思わず真似をしてしまう。リコはそんなことを気にせず真剣なまなざしで見つめてきた。

 

「レン君は私の助手になってください。私の研究をサポートお願いします。見返りに、あなたの魔法を一緒に探します。どうですか?」

 

 レンは悩んだ。彼女の研究はおそらく高難度の魔法を扱うはずだ。魔法の難易度が高いほど魔法事故の危険も伴うが彼にとって魔法が発現するという見返りはとても大きかった。

 

「オレ、リコさんみたいに賢くも魔力もないけど、それでもいいの?」

 

「はい。私は運動や体を動かすのが苦手なのでそこのサポートをお願いしたいです。」

 

「そっか、そういうことなら任せてよ!」

 

 レンの役割がはっきりして笑顔になった。リコは口に手を当てて少し考える。


「でも、レン君は自分の研究は決めて発表しないと成績に加点はされませんよ?」

 

「そうでした……。」

 

「もうすぐ夜になります。そろそろ帰りましょう。」

 

 地底世界の夜は暗い。しかし、町まで帰れば違う。太陽の魔法が時間で暗くなるようだが詳しいことはレンにはわからなかった。町の広場にたどり着くとリコがこちらを向き、お辞儀をした。

 

「それでは失礼します。また、明日から作業の助手の方をよろしくお願いします。」

 

「あ、うん。またね。」

 

 彼女は町の奥へと消えていった。レンは彼女の姿が見えなくなっても立ち止まっていた。レンは胸に手を当てると、鼓動が速い気がした。

 

「もしかして、オレ……リコさんのこと……。いやいや!早く帰って研究内容を考えなきゃ!!」

 

 レンは家に向かって走り出した。レンは目標が見つかり、初っ端でつまづいてできないと思っていた友人を得て充実した感情に満ち溢れた。どんな研究をしようか、リコの研究は一体どんなものなのか気になることがいっぱいで入学してはじめてワクワクしていた。そして、これからレンは魔法技術部を中心にした学園生活が始まるのであった。


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