苦戦する羊と犬!
ポチおはめえが持っている魔道具と同じようなものを使い魔物と対峙していた。それはめえの鎌状の武器ではなくブレード状の武器になっていた。
「数が多いな、じゃじゃさん、早く来てくれねぇかな……」
などとぼやきながら三体の魔物をあっという間に切り伏せた。残るは一体であったが、他の魔物と違い魔力量ははるかに上だった。
ポチおは魔道具を握り直し、魔物に接近した。目にもとまらぬ速さで剣撃を当て続けるも、魔物の異常に硬い両腕で防がれていた。そして魔力の刃が折れ、弾かれる。その隙に左回し蹴りで蹴り飛ばされた。空中で一回転し体勢を立て直し、着地した。
「おいおい、お前も大概だが、オイラの魔力も負けてないんだけどな……右腕と内臓やっちゃったな……。」
ポチおは魔物に対して牙をむきにらみ合った。口からはそのダメージが判るほど血が出ていた。右腕は力無くダラリと垂れていた。
もともとポチおは前衛が向いていないタイプのヒトであるため、距離を取りたかったが、そうすると国民を戦闘に巻き込むことになるのでそれを封じられていた。
にらみ合っていると突如、強大な魔力反応がポチおと魔物の感知に触れ意識をそちらに向けた。
「おいおい……学生の分際で【灼熱】ぶっ放すのかよ……。オイラも負けてられねぇな……!」
目を魔物に戻すとすでに間合いに入られており戦慄する。
(や……やっちまった……!)
ダメージを最小限にとどめるよう濃い魔力を展開させて身にまとわせた。
魔物の強烈な跳び蹴りがポチおにヒットする瞬間、二人の間に板状の魔力壁が複数出現し、魔物の蹴りがそれにあたる。薄いガラス状のものが次々と割れるような音を立て貫通し、ポチおを吹き飛ばした。
ポチおは左手で地面をつかみ、ブレーキをかけた。直撃したものの、壁と魔力で威力が相殺されたのかダメージが想定よりも少なかった。次の瞬間、彼の体が光に包まれ、折れた右腕に感覚が戻る。内臓の痛みも和らいだ。ポチおは後ろからくるヒトに目も合わせずに、魔物を見る。
「ナイスタイミング、めえさん……!」
「後衛職のお前が前線に出てどうする?死にたいのか?」
「それは、緊急事態だったし……はい、申し訳ございません。後ろに引っ込んでます……。」
めえのとても冷たい目で見られ、ポチおは委縮して、後ろに下がる。めえはため息をつきながら、現在の状況をポチおに報告する。
「にゃんこは他の区域でじゃじゃとくろんぼと組んで交戦中。ルゥとたまとサムは避難誘導中だ。」
「了解。今回の親玉は恐らくアイツだ。服の下はわからんがドラゴンかも……」
「ふむ、あっちの【灼熱】は?」
「魔力からして、レンとそのパートナーだな。アイツらほんとに学生かよ?」
めえは少し微笑み、魔物と相対した。鎌状の魔道具に魔力を込め、強く輝き、活性化させる。
「いつものように雑に攻撃して【結合】させてくれ。それに合わせて私も攻撃する。」
「了解!」
というとポチおは腰袋から三角錐に持ち手がついた小型魔道具を魔物に向かって投げつけた。
☆
リコはレンから譲渡された紋章の詠唱が終わり魔法を発動させた。天にも昇る勢いで火柱が立つ。
今までの火魔法でもなく、召喚魔法で出せる火力をはるかに凌駕していた。風と火の属性を複合させることで【灼熱】という属性に変化していた。それを可能にしたのはレンの【重撃】魔法の効果によるものである。
魔法の複合は繊細なコントロールが必要かつ、相手の魔法と協力する必要がある。そして、他人の魔法は変更できないのがふつうなのだ。なにより複合魔法はその制御の難しさから地面に描いて行うのが基本である。
【重撃】は既にある紋章に手を加える、それほど異端な魔法である。もちろんレンの負担も激しく、魔力がほとんど残っておらず同じことをもう一度とはいかないと思っていた。
火柱が収まると魔物がいた場所は木や岩などすべてを焼き尽くし更地になっていた。もちろん魔物も同様に焼き尽くされ、核の部分であろう謎の石だけが残っていた。
「……こ、これで何とか討伐できたはず……!」
「あの石……何だろう?」
――触ってはだめ。
女性の声が耳元でして、振り返ると誰もいなかった。石のあったところを見ると風の刃で粉々に砕かれている最中であった。
「今の声は精霊『シルフ』の声です……。レン君、貴方にも聞こえたのですか?」
「う、うん。あの複合魔法も二つの声がして教えてくれたんだ……」
リコは少し考えて、以前めえが行っていたことを思い出す。
「私だけでなく、レン君も魔法が変質したようです。私の【召喚】の影響で……」
「変質ってこういうことなのかな……?まだ、発動して日も浅いし、よくわか——」
突然二人の獣人が森から吹き飛んできた。
「保健室の先生!?」
「ポチおさん!?」
「おまえたち!まだ逃げていなかったのか!?」
「おいおい……めえさんと組んで勝てないってやべぇぞ……!」
めえとポチおは森の中から出てくる魔物に牙をむきながら立ち上がる。
魔物は四人の姿を見て、不気味にニィっと笑った。
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