学園祭デート!
ついに学園祭当日となり、レンは家から走っていく。
(準備は万端だ……!あとはオレが頑張るだけだ!)
学園は祭りでにぎやかでヒトが大勢いた。
毎年のことではあるのだが、レンは生まれてこの方学園祭に行ったことがない。理由としてはレンが孤児であることがあげられる。数は少ないが、この前路地で出会ったハイエナ男のように人攫いがよくあらわれるようで、レンの施設からも消息を絶ったヒトがいたからだ。
レンは部室前に行くとリコが待っていた。
いつもの制服とは違い、水色のワンピースを着ており、三つ編みの髪を解いていた。いつもより、かわいく見えたリコにドクンと心臓が跳ねる。
(こんな、見え見えの状態じゃダメだ!リコさんは絶対警戒する……!)
レンは息を整え、走ったこととリコへの恋心を悟られないように平静を装う。
「リコさん、お待たせしました。」
「いえ、私も来たばかりなので待っていませんよ?それでどこに行きますか?」
「どこか行きたいところとかあったりする?」
リコはそう聞かれ少し悩んだ。すると少し照れ臭そうな顔をしていた。
「実はちょっとおなかが空いています……。」
舌を少し出し、照れ隠しをする。レンには効果バツグンであり、ドキドキが止まらなくなる。
「そ、それじゃあ、屋台で何か食べようか?」
「はい!」
学園外からもヒトが集まっており、正門前は特に食べ物系の屋台が多く、食べるものには困らなかった。
小麦粉の生地の上に野菜や魚介類を乗せ、それを棒に巻き付け、上からソースをかけて食べるもの。砂糖を煮詰めたものに、粉をかけると突然膨らむ謎のお菓子。丸っこい生地のなかに魚介類やチーズが入っているもの。一口サイズで甘くてふわふわしたちょっぴりお水が欲しくなるお菓子。円盤形のモチモチの生地で中に餡が入っているお菓子などいろんなものがあり、リコは悩んだ。
そして、リコのキュウっと腹の虫がなる。恥ずかしくなってお腹を押さえると、レンはリコを近くの岩へ座らせる。
「ちょっと買ってくるから待ってて。」
しばらく座って待っていると、レンが戻ってきた。先ほど見たものを全て抱えており、リコは驚いた。
レンはリコが物欲しそうに見ていたものをすべて覚えているという記憶力に脱帽した。しかし、さすがのリコでもこんなには食べられない。二人は目を合わせると失笑した。
「張り切って買いすぎちゃった。……一緒に食べようか?」
「はい!」
レンとリコは全て食べ終えると、再び屋台巡りをした。
小さな棒状の魔道具で風の弾を撃って、的を狙い撃ちするもの。紙でできた釣り糸で景品の書かれたタグを水の中から吊り上げるもの。異常に暴れて難易度設定を間違えているのではないかと思う小さい魚型魔獣をすくうもの。さまざまな屋台を一通り楽しんだ。
「レン君は魚魔獣をすくい上げるアレは上手でしたね!」
「猫族の意地だよ!リコさんも普段の戦闘の経験から的当ては百発百中だっだね。」
二人は屋台を存分に楽しんでいた。いつの間にか夜になっており、アナウンスがかかる。
『ただいまより、花火大会が始まります!パートナーがいる方はもちろん、いない方も存分に楽しんでください!』
アナウンスが終わると屋台についている光がすこし暗くなった。
すると、ピューという音とともに光が空に打ちあがる。一筋の光上空へと上がるが消え、一呼吸置くとドンッという爆音とともに夜空に緑、赤、黄、橙など様々な色が混ざった可憐な華が上空に咲いた。
「きれい……。」
うっとりと花火を見ているリコを見て、レンは鼓動が速くなった。呼吸を整え、リコの手を繋いだ。
「ちょっとついてきて!」
レンはリコの手を引き場所を移動した。初めて繋いだ時と違い、リコは拒否をすることなく、むしろしっかりと握り返していた。
デートプランを練る時、レンは下調べをしており、人が少なく、それでもきれいに花火が見られるスポットを調べていた。
その場所に到着すると、予想通り人は少なく、空に咲く花火と湖に反射する花火が見られる絶景だった。
すこし会場から遠いのが難点だが、誰にも邪魔をされることなく大きく花火が見られ、リコは目がキラキラしていた。
「リコさん。」
とても真剣な声がして振りむくとレンが膝をついていた。リコは状況が飲み込めず、慌てた。そのような状況だがレンはしっかりリコを見つめた。手足が自分のものでないような感覚に陥るが覚悟を決める。
「リコさん、今日はオレと一緒に学園祭を回ってくれてありがとうございます。今日はとても大事なことをお伝えしたいと思って、お誘いしました。」
レンは頑張った。頑張って声を震わせながら切り出した。
人生初の告白を始めるのであった。
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