デートのお誘い!
レンは石の精製をしつつ、もう一つ魔道具を作っていた。この魔道具はリコと模擬戦をしているときの発想を運用したものだった。あの時はただの筒状のものだったが、石を使うことでもっと小型化かつ精度のあるものができるのではないかと研究していた。その中でカレンとの初稽古を思い出した。
「魔力を纏って攻撃力が上がるなら、魔力を直接飛ばして当ててみるのもいいのかな……?」
レンは石を飛ばす魔道具を一旦置いて、前腕と同じ長さの棒を作ってみる。ミスリルは魔力を流しやすい性質であるが、留めることには向いていない。そのためレンは頭を抱えた。
「どうやってとばすんだよぅ……。」
机に頭を乗せて泣き言を言っているとサクラが近くに来て顔を覗く。目が合うとレンは飛び上がり毛が逆立つ。急に現れると猫族はびっくりして威嚇をする習性がある。サクラはケラケラと笑い簡単に謝っていた。そして、少し恥ずかしそうな顔をした。
「レン君、学園祭はどうするの?」
「なにするって、たぶん研究してる……かな?どうしたの?」
「で、デートとかって興味はないの?」
デートという単語を聞いてレンは尻尾をぴんと立たせる。恥ずかしくなってきたのか、だんだん耳が垂れていく。感情が表に出やすいレンをサクラは楽しんでいた。
「え!オ、オレと……デートって……ま、まだ君のこと……」
サクラは少し嬉しそうな顔をしていたが、首を横に振り、レンの腰をバシンと叩く。離れたところで研究中のリコに指を向けて、ジト目でレンを見る。
「アタシじゃなくて、リコちゃんと!パートナーなんでしょ?」
ついにレンは一気に顔が熱くなって落ち着きがなくなった。尻尾が千切れるのではないかというくらい勢いよくブンブン振られる。
「い、いや……まだ……パートナーじゃない……んだけど……。」
「えぇ!?あんなに息ぴったりなのに!?」
「……オレじゃ、もったいないよ……。」
レンの消極的な発言に落胆した。キッとレンを睨みつけて彼の頬を引っ張る。
「い、痛い痛い!」
「いい?リコちゃんに合うパートナーはレン君しかいないのよ。よく考えてみて。レン君はこの学園の中で唯一リコちゃんと長く一緒にいるの。」
サクラはレンの鼻に指をびしっと乗せて、顔を近づける。
「だから絶対に学園祭でパートナーを申し込むこと!じゃなきゃリコちゃんはもう二度と君に振り向かないと思いなさい!!」
そういうとプンスカしながら外へ出て行った。何が起きていたのかわからずリコは首をかしげてドアを見ていた。レンは緊張してリコを見ることができず、研究に手を戻した。サクラは戻ってくることはなかった。
(リコとパートナーか……なれたらどれだけいいか。)
いつの間にか日没を知らせる鐘が鳴った。帰り支度をしているとリコがこちらへ来た。
「レン君、サクラさんは何か怒っていた気がしたのですが……。何かあったのですか?」
「え、いや……ケンカはしてないよ。その……。」
リコは首をかしげて見つめていた。その表情は少し不安な感じだった。
レンはリコを見て意識する。鼓動が速くなる。のどが渇く。逃げてしまいたい。
そんな感情に支配されたが、サクラに言われたことを思い出し、胸をぎゅっとつかむ。
(当たって砕けろ!)
「リコさん!……その、学園祭……一緒に回りませんか?」
驚いた表情をしていたが、すぐに微笑み、うれしそうな表情で頷く。
「はい、いいですよ。予定を開けておきます。」
レンの学園祭デート交渉はうまくいった。その光景をサクラは窓から見届け、帰ることにした。
(アタシがキツネの肩入れをするなんてなぁ……)
レンはリコに取られてしまったが、その足取りはとても楽しそうなものだった。
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