騎士団長に無力!
ニコニコとしているカレンを尻目にレンはリコにカレンの正体を伝える。
「リコさん、あの人は近衛師団の団長です。以前訓練をさせてもらったことあるんだけど、めちゃくちゃ強かった。リコさんでも全力でやってギリギリかもしれない……。」
それを聞いたリコは納得したのか眉間にしわを寄せてカレンを睨む。カレンの魔力と気迫を感じ取ったのか横顔からはとても強張っていた。
レンは思わず耳を畳み、毛を逆立てて威嚇する。そんな二人を見て、カレンは恍惚な表情を浮かべた後、目が本気になった。
「それじゃあいくよ!」
カレンは剣を思い切り振り下ろした。その攻撃は前回の時とは大違いで当たったらただでは済まないのがわかる威力だった。その攻撃を見たレンは恐怖で体が動かなかった。
「『風の大楯』」
短く詠唱した魔法だが、風でできた大きな盾が剣風を霧散させた。
「お、召喚魔法とは珍しいね。たまさんと少し違うけど……。それならこれでどうかな?」
「っ!『水の鎧』、『風の鎧』!」
高速移動でリコに近づいて剣で吹き飛ばしたが、防御魔法で直撃の威力を殺した。しかし、剣風までは防げず、競技場の壁に吹き飛ばされた。それを見たレンはとっさに石を拾い、それをカレンに投げつけた。飛んでくる石に対し、剣を構える。
「前回と同じ攻撃じゃ、意味がないよ!」
「『爆煙よ、包み込め!』」
剣で振り払おうとするとカレンの目の前が黒い煙で覆われた。レンが拾ったのはただの石ではなく、火の紋章が封じられている石だった。火の紋章で放つことができる【爆煙】は小さな爆発と煙で視界を遮る魔法である。カレンが煙に包まれている間、リコの元へと走った。
「リコ!大丈夫!?」
リコが起き上がるのを確認し安堵した瞬間、背後から吹き飛ばされた。壁にぶつかる瞬間、リコが手を上げ、レンの周りに風の鎧が出現する。風の鎧のおかげで衝撃が大幅に軽減された。【爆煙】を至近距離で受けてもぴんぴんしているカレンをみて二人は嫌な汗をかく。
「敵に背を向けてはいけないよ!意識は必ず向けること!」
「でたらめすぎる……!」
「でも……私たちが目指す世界とはこういうものなのかもしれません。やるしかないですよ、レン君。」
「どうやったら、一撃与えられるのか……見当もつかない……!」
「私に考えがあります……。」
それを聞いたレンは持っていた魔石を地面に殴りつけて砕き、それをカレンの周りにバラまいて爆発させた。その行動を見ていたリコはあまりにもパワープレイすぎて若干引いていた。競技場内に砂埃が立ち込め、再びカレンの視界を遮った。レンは座り込んでいたリコを抱え、岩の陰に身を潜めた。お姫様抱っこをされたリコは、レンが自分よりも小さいのに簡単に抱えて走っている姿にときめいていた。近くの大きな岩場に身を潜め、二人は作戦会議をする。
「考えっていったい……。」
「レン君のあの魔法を使います。あれなら私の手数を増やしてくれるかもしれません。」
レンは一瞬ポカンとしていたがリコの言ったことを理解して慌てて説明した。
「あ、あれから一度も発動したことないんだよ!?そもそもまた暴走するんじゃないかと不安で……」
「わかります。でもそれしか勝つ方法がありません。レン君、私の魔力にリンクしてください。リンクしてあなたの魔法の根源に直接魔力を与えます。」
リコの目は本気だった。レンはリコが意外と好戦的な性格であるということを思い出し、つばを飲み込む。突然風が吹き、煙が晴れた。カレンは一薙ぎですべての煙を払っていた。華麗に剣を振るう様はとても美しく見える。そして相変わらずにこにこして戦うカレンを見て、レンは腹を括った。
「っ……!ええい!リコさん、やるよ!」
「はいっ……!」
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