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世界の一部を知る!

「ニンゲンって……」


 ポチおのニンゲンという単語を聞いてレンは不安な顔をする。


「地上世界の人類。魔物も元ニンゲンで失敗作なんだけどね。彼らは定期的に侵略しに来るからね。アイツら結構強いから、君の魔道具はいつか必要になるはずだよ。」


「どうして、ここに攻めてくるのですか?」


「どうしてって、失敗作だから。人類の進化の実験のね。滅ぼすんだとよ。」


 レンはポチおの話を聞いて驚愕した。彼にとっての地上世界は未知で希望にあふれていたから。だが、地上世界の人類の目的はこちらの世界の人類を滅ぼすつもりであったこと。レンの中での地上世界の理想が崩れ去り、落胆した。その様子を見てレンの肩に手を置く。


「まあ、気を落とさないの。まだ、地上の情勢についてはよくわかってないから。」


「ただ、魔物とニンゲンが時々侵略してくるだけさ。しっかり防衛しないと大切な人、守れないから。」


 ポチおは紙と黒鉛を持ってきて紋章を描いた。学園の授業でもよく見かける紋章だったのでついつい早口で答える。


「火の紋章!ですね……!」


「正解。まず石に炎の紋章を封印。これを軸にこの石をセットして魔力で結んであげたら……わかるね?」


「遠隔で炎の魔法が発動できるということでしょうか?」


「そのとおり!」


 指を「パチンッ」と鳴らしてニコッと笑った。


「しかも六つ重ねて大規模魔法になるから、出力も高い。この魔道具のサイズでこの威力は紋章を封じていない即時発動の魔道具じゃできない芸当だよ。それに、小さい魔法陣を六重にしているからね。容量も軽いし、同じの七個持っていれば同じ魔法が再現できるんじゃないかな?」


 レンは目をキラキラさせてポチおを見つめていた。それを見て苦笑いする。

 

「これがこの魔道具のいいところじゃないかなと思うよ。あとは君次第だし、実験もして成果を報告するだけだよ。」


 レンは大きくうなずいて石を見ていると、リコの顔が浮かんだ。


「あの、無理だと思うのですが、【召喚】って魔法は封印できませんよね。」


「やめときな。【召喚】は契約の魔法に分類されるし、そもそも補助魔法は封印できても劣化や暴走が起こるからやめた方がいい。それで失敗してあばら骨全壊しちゃって、あと内臓が吹っ飛ぶかと思ったからね。めえさんにめっちゃ怒られたなぁ。」


 ポチおに衝撃的な回答をされ、デメリットが満載で背筋が凍った。ポチおは立ち上がり背伸びをした。大きなたれ耳の裏をポリポリと搔きながら窓越しで外を見る。


「さて、そろそろ日が暮れるし明日も授業があるんだろ?」


「あ、ありがとうございます!とても参考になりました!」

 

 レンはポチおにお礼をいい、工房を後にした。ポチおは工房の前からレンが表通りに出るまで見届けていた。空を見ると太陽の光が弱まって夜へと移行する時間だった。

 町は夜になると仕事終わりのヒトたちが多くなるので、必然的に飲食店へ向かう人が集まり、町はどんどんにぎわっていく。

 今いる通りは工房が立ち並んでいるが、魔道具屋はいろんな職業からの需要が高く、夜に買いに来る客が多いので夜になっても営業している。また、夜の街は火が出ている時間とは違い、手をつないでパートナーと歩いている人たちが多かった。

 思春期真っただ中のレンはあっけにとられていると人にゴツンとぶつかった。


「あ、ご……ごめんなさいっ!」


 レンはぶつかった衝撃で尻餅をついた。ぶつかったのはレンと同じ猫族の女性だった。白と黒の毛色をしており、髪の毛も毛色と同じ色で短髪だった。

 そして何よりかがんでいる状態で手を差し伸べてきたので襟の隙間から魅惑の丘が二つ見えていた。もちろんその先も見えている。それを見たレンは思わず口元を押さえる。

 女性はその事に気付き、レンに顔を寄せる。しかも、服の中がよく見えるように襟を広げながら。

 

「あら~、こちらこそごめんね~。ん~……キミ、かわいいね……。お姉さんとイイコトし・な・い?」


「だ、大丈夫ですーっ!!」


 思春期の男の子には少々刺激的なものを目にしレンはそそくさと逃げ出した。町の広場の方まで走ると家の方に向かって歩くことにした。息を整えながら火照った顔を落ち着かせようとしたが、その光景を思い出し、また熱くなる。

 

(あの女の人、絶対酔っぱらってた!あと、何だろうあの、吸い込まれそうなニオイ……)


 そんなことを思っていると、肩をトントンと叩かれた。


「ひゃっ!ご、ごめんなさいっ!」


「なにをいっているのですか?レン君。」


「リコさん!?はあ……よかったぁ~……。」


「なんだかよくわかりませんが、やっと見つけました。」


 リコが何を言っているのかわからず首を傾げた。


 「明日、必ず部室に来てください。ヒミツ、ですので今はそれだけしか言えません。お願いします。」


 深々とお辞儀をするとリコは去っていった。その後ろ姿はなぜかとても楽しそうな、嬉しそうな感じだった。リコからも先ほどの女性と同じような香りがし、首をかしげた。深く考えてもよくわからなかったがとりあえず家に帰ることにした。


 ☆

 

 レンは家に着くと制服を脱ぎ、衣文かけに服をかける。ポチおから教わったことを急いでメモする。

 台所に立ち、食糧庫から缶詰を取り出す。缶詰を開けると中身は魔獣肉であり、保存料が多いので決して良い食事ではない。良い食事ではないが、孤児の施設からの支給品である物なので食べる。

 一応、通貨や生鮮食材も選べるが、家には新鮮な食材を保存できるような魔道具を持っていないので必然的に缶詰めになる。そのまま立ったまま食事をして、片付けるとカラスの行水のごとく入浴を済ませ、クッションベッドの上に丸くなる。仰向けになった際、ぽつりとつぶやく。


「リコさんって今まで付き合ってた人とかいないのかな……。まあオレが言えたもんじゃないけど……。」


 そう呟くと、レンはいつの間にか意識を手放しており、丸くなって眠った。

いつもありがとうございます!

『良かった!』

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『続きを見たい!』

と思って貰えましたら、

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正直に伝えていただけると今後の作品にしっかりと反映していきたいのでよろしくお願いします。

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ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

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