妖狐と野狐族の関係!
レンはもう一つシャシンで気になったところを聞いてみることにした。
「この妖狐に事情があると言っていたけど一体?」
「そんなこと知りたくもありませんっ!!」
両手を力強く握りしめ、ギリギリと歯を鳴らして威嚇のような感じだった。レンはリコが妖狐のことになるとなぜ怒っているのかわからなかったので、オロオロしていた。司書は「ふぅ」一呼吸ついて再び口を開いた。
「まぁ落ち着くのじゃ。相変わらずおぬしは妖狐になると怒るのぅ。少年の疑問を晴らさんといけないから黙って聞いておくのじゃ。まず、妖狐と野狐のことを説明せんといかんな。先ほど言ったように妖狐は野狐から突然変異で生まれたものじゃ。女王とこの娘、その二人しか個体が存在しておらん。女王から生まれた娘も妖狐じゃった。ここにおられるのが女王じゃ。」
司書が指をさしたその先に漆黒の長髪、鋭い目つき、この世界の衣装では見られない格好をしていた。写真を見ただけでその強さが分かるような雰囲気をしていた。
「そして父親は野狐族であった。そしてこの娘は生まれてすぐ、父親に売り飛ばされたのじゃ。それは妖狐の希少性ゆえに、な。」
リコは口を押えて青筋を立てて絶句した。目の敵にしていた妖狐は野狐族によって悲惨な目にあっていたから。
「氷狼族でこの国の王によって父親は捕まり、処刑された。しかし、娘は売り飛ばされた後で帰ってこなかったのじゃ。この事件によって妖狐の女王は野狐族との縁を切り、野狐族に対して粛清を行ったというわけじゃ。まあ後に母娘は再開できたのじゃから、少しずつ和解へ導かれると思うぞよ。」
リコはその話を聞き、悩んでいた。
いままで野狐族だけ除け者にされていた同族をみて、妖狐をずっと憎んでいた。事実が判明し、周りの野狐族が妖狐に文句の一つも言わなかったことに合点がいった。
「ど、どうしてそのことを言ってくれなかったのですか?」
「おぬしは全然聞く耳を持たんかったじゃろ。」
そう言われて心当たりがあったのかリコは思わず黙ってしまう。司書はやれやれといった表情で写真を片付けに行った。リコは混乱しているとレンが傍に来て、背中に手をポンと置く。
「リコさん、無理して飲み込む必要はないと思うよ。」
「で、でも……私、ずっと勘違いしていて……」
「うん。少しずつ、少しずつでいいから、相手のこと知っていければいいんだよ。」
「少年の言う通りじゃよ。どうしても駄目なら距離を取ればよいのじゃから。」
「はい……。レン君もありがとうございます。」
「さて、もう夜じゃ。気をつけて帰るのじゃよ。」
司書が外に指をさすと、既に闇に包まれていた。
「ありがとうございます、老師。」
「また困ったら来るよ!」
そういって二人は図書館を後にした。夜の学園はとても暗かった。猫族のレンでも光の魔法やランタンがなければ全くと言っていいほど見えなかった。幸いレンの持っていた魔石と光の魔道具で辺りは見えるようになっていた。レンは少し気まずそうな顔をしてリコの方へと向く。
「どうしよう……」
「どうしたのですか?」
「魔道具の魔法の残量が少なくて、光が町まで持ちそうもないなぁ……」
「では、部室に泊まりましょう。無理して街道を歩くのは危険ですから。」
「り、リコさんはオレと一緒にいてもいいの?」
リコと部室に泊まることになり思わず声が裏返ってしまう。リコは焦っているレンに気づいていないのか淡々としていた。
「レン君は突然襲ってきたりしないと思っているのですが?」
「お、襲わないよ!」
「襲うにしても私は肉食なので肉は食べても美味しくないと思うので推奨できません。」
(この子食べ物として襲ってくると思っているみたいだな……。)
レンとリコの思っていることがかみ合っていないことにレンは気が付いた。悶々としながらレンは部室の扉を開けた。
そして、それぞれ部室でリコはソファで、レンは机に突っ伏して寝ることにした。
☆
レンが目を覚ますとリコはまだ眠っていた。外を見ると夜が明け始めていた。
猫族のレンは夕暮れや明け方の薄暗い時間が活動するには最適である。学園が始まるには時間があるので魔道書や古文書を読むことにした。昨日はリコの召喚術が魔道具にできないことが分かった。この国の最高の魔法技術士とはどういったヒトなのか妄想しながら本を読んでいた。
ふと自分の作った紋章を封印する石の試作品を見てもっと性能の良い石にしたかった。リコの魔法にも耐えられる強い石。しかし、高級な素材は使えない。
学生にどれだけ戦闘が得意なものがいてもドラゴンスケイル級の素材なんてとることが不可能だからだ。となると、現状の素材で精度を上げることが課題となった。
「おはようございます。レン君早いですね。」
「リコさん、おはよう。オレは猫族だからね、早起きなんだ。それよりも寝られた?」
「さすがに本調子ではないですが一応は寝られました。」
彼女の目元には隈があった。碌に寝られなかったのだろう。そして彼女からは今までにない香りが漂う。レンは彼女がお風呂に入っていない話を聞いていたので、思わず自分のにおいも確認していた。
「今日、私は授業を終えたら帰ります。ですからレン君は研究に没頭してください。それでは。」
彼女は足早に部室を去っていった。レンも授業の準備を始めた。すると扉が勢いよく開いた。
「たのもーっ!!」
元気よく入ってきたのは狸族の女の子だった。しばらく二人の間に沈黙が漂う。レンは人付き合いが得意ではないのでこの子のテンションについていけていなかった。
対して、この女の子は社交的なのかとても元気でテンションが高く、お互いがかみ合わず沈黙してしまったというわけだ。だんだん沈黙に耐えられなくなった彼女はオロオロする。
「えっ?ここ、魔法技術部だよね?」
「う、うん。そう……だけど。」
「アタシ、サクラ!見ての通り、狸族です。今日から魔法技術部に入ることになったので挨拶に来ました!キミの名前は?」
「オレの名前はレンって言います。」
「そっかぁーレン君だね!よろしくね!」
両手でレンの手を握りしめ、ぶんぶんと振った。すると学園の鐘が鳴り始めた。授業開始の予鈴だった。
「ヤバい!遅れるっ!!」
「いそげーっ!!」
2人はドタバタしながら教室へと急いだ。
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