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教師最強の保健室の先生!

 補習授業が終わり、走って部室に向かっていると部活の時間も終わりに近づいていたので下校するヒトが多かった。

 部室に行くとリコが実験をしていた。かなり実験の回数を行ったのだろうリコの周りには魔道具の残骸が山積みとなっていた。普通の魔力量では到底この量を作り続けることはできない。レンは改めてリコの魔力量の多さを実感する。

 リコはかなり集中しているのか、レンがいることに気が付いていないようで独り言を言いながら魔道具の製作をしていたのであった。

 

「お疲れ様です。今日は早く終わってきたの?」

 

「……はっ!?れ、レン君!?今何時ですか?」


「授業が終わって、補習授業受けたのでもうすぐ日没時間だよ?」


 リコの顔がだんだん引き攣っていく。レンはその様子を見て口に手を当てて驚いていた。

 

「……授業サボってしまいました……。」

 

「リコさんにしては珍しいね。それで、魔道具はうまくいきそう?」


 リコは首を横に振り、残念そうな顔をしてうつむいた。思わず手がリコの頭を撫でようと動いたが、レンは思いとどまり、手を引いた。パートナーでもない、ましてや恋仲ですらない男性が女性の頭をなでるのは言語道断である。マナー違反で、最悪かみちぎられても文句は言えない。

 

「……いいえ。紋章を組み込めるところまでできるのですが、発動がどうしてもできないのです。」

 

「うーん……。召喚魔法はほかに使える人はいるの?」


「ほかの術者ですか……。確か、王族の人が使えた気がします。」


 レンは腕を組んで考え込む。レンには王族には知り合いなんていないが司書とカレンの顔が浮かんだ。一昨日、コテンパンにされた思い出がよみがえり、苦い顔をする。

 リコはその様子を見て首をかしげていた。レンはそんな思い出をかき消して、リコの力になってくれると思い、リコに会わせることにした。


「リコさん。ちょっと来てください。」


「えっ!ちょっ……。」


 レンは思い切ってリコの手を引き部室を出た。するとリコは急に立ち止まった。彼女のほうを見るとうつむいていて目を逸らしていた。繋いでいない手は制服の首元にあるリボンの端を掴んでいた。耳が垂れ、尻尾が膨らんでいたので、恥ずかしがっているようだった。

 

「ご、ごめん……なさい。逃げたりしないので……その、手を放してもらえませんか……?こ、こういうことに慣れていないので……、きっと面白くないですよ。あと……お風呂入ってないので……触らないほうがいいかと……。」

 

「……えっと、オレはリコさんと一緒に歩きたいなって……ダメ?」


 リコはレンにそう言われ、少し驚いたが、観念したのか抜け出そうとする力がなくなった。恥ずかしいと言う気持ちが強いのか、目を合わせてくれなくなってしまう。

 

「……わ、わかりました。す、少しだけですよ……?」


 レンは何とか押切り、そのまま手を繋ぎ図書館へと歩いて行った。

 レンがこのような行動をしたのは、レンなりのリコへのアピールであった。学園内を歩いているといろんな人が二人を見ていた。

 それもそう、リコは学園で首席の成績である。そして、ミステリアスな雰囲気を醸し出し、美人と有名だったからだ。彼女はモテないはずがなく、入学時から上期生や同級生からもパートナーのアプローチされていた。

 だが彼女にアプローチした者は見事に玉砕していった。魔力量も多く、【召喚】という希少で強い魔法をもっている彼女にとってパートナーを得るのは常に後回しであり、研究、特に召喚術の研究が最優先だったからだ。そもそもパートナーがいなくても十分な強さを持っているので、彼女の中ではどうでもよく、勝手に群れを成して鬱陶しく感じていた。

 そのような対応をしていた彼女が特筆するところのない――もとい、全身包帯巻きのレンと手を繋いでいるとなると、絡む人も出てくる。

 

「おい、なんでお前はリコちゃんと手を繋いでいるんだ!」


「なんでと言われても、オレはリコさんと同じ魔法技術部だし、それに……」


 レンは左頬に衝撃が走りそのまま吹き飛んだ。レンは突然のことで受け身も取れず、地面を転がった。熊族のパンチは威力満点で、顎にクリーンヒットしたレンは立ち上がることができなかった。


「レン君!あなた!!どうしていきなり殴るのですか!?レン君が何をしたっていうのですか!?」


「こいつは雑魚のくせに俺に楯突くからだよ!こんな雑魚より俺は強いからリコちゃんとのパートナーは俺がふさわしいんだよ!!」

 

「嫌いです。貴方みたいな平気で人を傷つける人は嫌いです!!レン君は強くなくても私に優しくしてくれる、頼れるヒトなので、少なくとも貴方なんかより魅力的です!」

 

 リコは熊族の学生にきっぱりというと、レンの元に行き氷の魔道具で氷を作り、患部を冷やしていた。その姿を見た男子生徒は歯をギリリと鳴らし、手を上に掲げ詠唱を始めた。リコはその行動に気が付いておらず、レンの看病に当たっていた。


「あいつ、完全にキレてるぞ!誰か先生を!」

 

「あぁ、そうかよ……『大地より生まれし大岩よ、わが槍となり—』」


 詠唱が完了する前に男子生徒の首筋に刃物が突き付けられていた。それは大きな鎌状の武具だった。刃は薄水色の魔力でできた武具であった。持ち手の部分には黒い塊が握られておりそこから刃が伸びていた。刃は男子生徒の首の毛を少し刈り取っており、少しでも動けば首が落とされるイメージが簡単に湧く。そしてその魔道具の持ち主は学園の教師だった。


「今すぐ魔法を破棄しろ。でないとここで処罰する。」

 

 低く、冷たい声が学園内に響く。

 

「保健室の先生が丁度近くにいてくれてよかった……!」


 保健室の先生と聞き観念したのか男は魔法を破棄し、振り上げていた手を下ろす。そして、抵抗する気がないようだが、教師は光の帯で捕縛する。すると騒ぎを聞きつけたほかの教師が駆け付け、男は連行された。

 教師は鎌を収め、レンの元に行くと詠唱を始めた。

 保健室の先生と呼ばれる彼女は羊族だった。染色液で髪を青い色にし、一対の角が側頭部から生えていたが、形状は羊族よりも山羊族のものに近かった。

 保健室での業務をしているみたいだが教師の制服を着用していた。そして漏れ出す魔力は高密度で、その威圧感から魔力を解放するとカレンにも対抗できるほどであると思われる。

 

「『癒しの力よ、彼の者の傷を癒せ』」


 詠唱を行い、魔法を発動させるとレンが光に包まれる。腫れていた頬は治癒し、昨日受けた傷も完治していた。保健室の先生はレンに巻かれた下手くそな包帯を回収して立ち上がった。

 

「もう治ったから歩けるはずだ。後日、お前に状況を聞かせてもらうから、今日はもう行くといい。あの者の処罰は我々に任せなさい。」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 リコは深々とお辞儀をすると保健室の先生はそのまま去っていった。レンは【治癒】の魔法を受け、何とか歩けるまで回復したので再び歩き始めた。すると今度はリコが手を離さなかった。

 レンは少し笑みを浮かべ、図書室へと向かった。


「なんだかかっこ悪いところを見せてしまったな……。」


「かっこ悪いところなんて見てませんよ?」

 

 リコはレンが熊族に殴られたことを気にもしていなかった。リコは繋いでいない手を前に出して、何かを構えていた。

  

「しかし、あの武器はすごいですね……魔力をあんな自在に形を変えられるなんて。」


 「あれって、近衛師団の人とかも持っていない武器だよね?」


 「はい、あれは調査隊の専用武具と言われています。あらかじめ設定していれば魔力を注入するだけでその形になるとか……」

 

 保健室の先生が持っているという武具は魔道具の一種であり、リコがよく知らないのは、その情報がほとんど出回っていないというところが大きい。戦闘部隊であるはずの近衛師団が持っていないのは材料が希少であることが理由に上がるが、一番は魔力の消費による継戦能力の低下があるからだ。現存する武器の攻撃力・耐久力をあの武具に持たせようとすると魔力の消費が大きくなり、長時間戦闘ができなくなる。これは、戦闘が長引くと確実に不利になってしまう大きな欠点である。

 利点とすれば携帯性の良さであり、変形可能による武器にもなれば農具・工具にもなるところだ。また、調査隊は短期戦闘に特化していることもあり、この魔道具が好まれている。

 

「私もいつか、あのような便利な魔道具を作られるようになって、みんなの役に立ちたいものです。」

 

「そうだね。リコさんならきっとすごい魔道具が作られるんじゃないかと思うよ?」

 

 そう話しながら二人は図書室へと歩き出した。


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ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

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