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極道の初期装備

「この者をひっ捕らえよっ!」


御意ぎょいにっ!」


兵士達の声に呼応するかのように、銃声が幾度なく轟き渡る。


つい数秒前まで血気盛んであった兵士達十名が、

刹那せつなで血を流して動かないむくろと化した。


 ――なるほどな、マサの言ってた通りだ


その場に居る一同、一瞬の出来事に何が起こったか理解が追いついてはいなかった、ただ一人石動不動(いするぎふどう)を除いては。


「どうすんだよ? 国王さんよお

あんたの不用意な判断のせいで、

忠実な部下をこんなに死なせちまったぜ?」


自分がやったことでも他人のせい、そこは極道たる所以ゆえんか。


王もまた不測の事態に動揺を隠せない。


「ま、魔法か?」


だが、石動をよく見れば、先程までは何も持っていなかった筈の手に、何かを持っている。


「い、いや、武器かっ!」



降って湧いた惨状に、三卿も体の震えが止まらない。


「こ、これはっ、由々しき事態でございますぞっ」


「セキュリティチェック、身体検査はドロリー卿の部下が行った筈ではっ!?」


「そもそもの警備責任者はトンドル卿ではございませんかっ!」


「いや、この中に勇者と内通している者が渡したのかもしれませぬっ!」


しかし、こんな非常時でも責任逃れが優先順位の第一位、ちゃんと相手を蹴落とすことも忘れない。


実際のところは、アロガ王が大層なご高説をぶっている間に、こっそりとコンパネから石動の初期装備である拳銃を取り出し、隠し持っていたに過ぎないのだが。


 ――転生とやらの前に、マサの説明を聞いておいて助かったな



生き残っている兵士達、石動に向かい身構えてはいるが、状況が分かないため、迂闊に動くことは出来ない。


「あんちゃん達よ、せっかく鎧着てるのに、

頭丸出しってのはどういうことだい?

……そんなに死にたいのかい? 俺は眉間は外さないぜ?」


「陛下の御前では頭部装備を外すべきと強く提言されたのはボヤルド卿でございましたなっ!?」


「い、いや、それは、スパイや陛下のお命を狙う暗殺者が入り込まないよう、顔をしっかり見せるというセキュリティ対策であって……」


「これは追及責任がございますなっ!」


三卿にとっては兵達の命よりも、追及責任優先ということなのか。



「何をしておるっ!早くその者を捕らえぬかっ!」


苛烈な王はそれでも力でのごり押しを辞さない、それもまた覇王としてのプライドなのか。


「大将が馬鹿だと、あんちゃん達も大変だな」


「まぁ、武器持って襲って来る以上、

あんちゃん達にもられる覚悟ぐらい、あるよな?」


パァン パァン パァン


そう言い終えるや否や、非情にも再び銃声が何度も鳴り響く。


弾丸は兵士達の眉間を貫き、背にする壁の深くまで食い込でいる。


「しかし、すげぇ威力だな、この拳銃チャカ

……まぁ、この威力なら鎧着てても無駄だったかもな」


 ――マサが言ってた通り

 こいつは普通の拳銃チャカじゃあなさそうだ

 弾数制限がないってのも便利過ぎるしな



この場に同席した護衛の兵士達が全滅したという事実を前に、部屋の片隅で小さくなって震えている三卿。


「き、貴公ら、ワシの後ろに隠れようとするなっ

ワシは肉の盾ではござらんぞ」


筋肉マッチの巨漢トンドル卿の後ろに隠れようとするボヤルド卿とドロリ―卿。


「その無駄な肉、い、いや、鍛えあげられた筋肉の今こそ出番ではございませんかっ!」


「そうですともっ!我々は脳筋ではないっ!

い、いや、頭を使うのが専門なのですぞっ!」


-


この部屋の兵士達をみな殺しにした石動は、高い所から見下ろしているだけであった、この国の王に銃口を向ける。


「よおっ、王様、どうするよ?

今日はこれで手打ちにするってなら、今回は俺も引くぜ?」


アロガ王は石動の言葉を鼻で笑う。


「愚かな勇者よ、この程度で勝った気になっているのか?」


「軍事力の物量こそが我が国の覇権国家たる所以。

いくら強力な武器を手にしようとも、覇権国家の圧倒的な物量の前では、いずれ貴様も力尽きよう」


「そんなことも分からぬのか、この痴れ者めっ!

……ここから無事に生きて帰れると思うなよ」


石動の脅しの前にも、王者の威厳が損なわれることはない。


「そうかよっ!」


王に向けた銃口、石動はその引き金を引く。


「ひぃぃぃぃぃっ!」


抱き合ってまるで乙女のような悲鳴を上げている三卿達。


だが、王は自身の前に防御壁をはってこれをはじき返した。


「あわわわわわっ」


跳弾が三卿達の真横をかすめ、壁へと深く食い込む。


「ふはははははっ!」


王は高らかに笑い声をあげる。


「その武器の威力は大したものではあるが、

乱世の覇王たる我には効かぬわっ」


「余が標的である以上、軌道の特定もたやすい。

魔法で防御壁をはればこと足りることよ」


「その程度の読みで、この我に刃向かうとは、驕ったな、勇者よ」


王は誇らしげに高らかに笑ったが、

次の瞬間、勇者の逞しい拳が王の左頬を直撃していた。


「そうかい」

「銃がだめなら、もうぶん殴るしかねえな」


顔をひしゃげ、王の折れた歯が宙を舞う。


そのままアロガ王は二回、三回と転げてぶっ飛ぶ。


この魔法すらあるという不思議な世界で、覇王を名乗っている以上、銃弾を防ぐ手立てがあるかもしれないことは石動も予想はしていた。


だが、この速度で飛んで来る弾を防ぐには、さすがに弾に相当集中しなければならい筈、そこに大きな隙が出来るだろうと石動は考えた。


そこで、銃を撃った瞬間、即座に王の懐へと飛び込んだ、自分自身でも驚く速さで。


「すげえ、吹っ飛んだな

まさかここまで飛ぶとは思ってなかったぜ」


 ――この王様と俺に体格差はさほどねえ

 筋肉量もそんなには変わらないだろう……

 どうやら筋力五倍ってのは本当みてえだな


-


意識を失って倒れているアロガ王をひょいと持ち上げ、後ろから抱きかかえ、こめかみに銃口をつきける石動。


そのまま三卿の方を向くと、彼らはすでにへたり込んで、抱き合って震えている。


「おい、そこの三馬鹿っ」


「ひぃぃぃぃぃっ!」


石動のドスがきいた声に飛び上がる三卿。


「逃走用の乗り物を用意しろ

……この世界にも馬ぐらいあるよな?さすがに」


石動がそう言う前から、もうすでに三卿達は神頼みをはじめていた。

「おぉ、我らが主たる神、アリエーネ様よ、どうぞ我らをお救いください」

「もうもはやアリエーネ様におすがりするしかございません」

「どうぞ哀れな我らにアリエーネ様のご加護を」


「……」


「ちょっと待て……

お前らが崇め奉ってるアリエーネってのは、

もしかして、俺をここに寄こしたあのクソアマのことか?」


「な、なんという罰当たりなことをっ!」

「大陸統一教会が信仰する偉大なる神ですぞ、アリエーネ様はっ!」

「この不遜な勇者に、どうか天罰をっ!」


「あぁ、ダメだな、こりゃぁ……

この世界の住人とは分かり合える気がしねえわ」


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