おまじない発動せず
お読み頂き有難う御座います。
「デアシラあー」
次の日ー。イケメンのすがるような目でも、私を死に追いやる原因となった歳上はウザいと思う派でーす。
昨日多少慰めてくれたっぽいけど寝たら忘れましたー。
サッサと冒険者ネットワーク酒場の御用事をお聞きして退散しやがれ。
あーもう、我が宿特製モーニングセットを出してやらねばならんのか。
嫌だわー。早くこの村から退散してほしいわー。
「お客様、石のようなお粥か、パンのような石かどちらになさいますか?」
んもう、些細な早く帰れオリジナルおまじないを繰り出してやるわ。
残念ながら、前世のおまじないはタオル巻いた逆さ箒くらいしか再現出来ないんだよなー。流石にお茶漬けは再現できないんだよなー。
あ、紅茶掛けた麦粥は普通に不味かったわ。出してやれば良かったな。
パンのような石は前に私が暇つぶしに彫ったお手製よ。シンプルなラグビーボール型に削って、3つ並んだ上のクープがとってもよく出来たと思うわ!
「小姑みたいな嫌がらせはやめてください!!僕の話を聞いてくださいよ!!」
「なんだいデアシラ。ちゃんとお客さんの話は聞いてやんなよ」
こんな客の皮を被った疫病神に優しくするなんて、酷いよお母さん!!結構コイツのせいで、私の未来がガチで潰えるのに!!
「君は、黄金のガサガサって実は……ヤマアラシみたいな生物なの知ってますか?」
「知りませんけど」
へー虫じゃないんだ、わー教えてくれて感激ィ!とでも言うと思ったか!!
てめえ、よくもトラウマ死因を口にしたな!と言えない。私は可憐な村娘だもん!まだ周りにはお母さんもいるから、クレイジーな電波をシャウトしたくないもん!
「兎に角、デアシラ。此処に居ては危険です」
「今なら何処に居ても危険ですよ。室内が一番ですね」
寧ろアンタが連れてきたんじゃ無かろうな、黄金のガサガサを。
喉元まで出かかるこの恨みが募る思い、コイツにとーどけ!!
「僕と魔術学院に行きましょう。今度こそ僕が守ります」
「こんな田舎の村人なので、お恥ずかしながら先立つものが御座いません。
お客様、お食事が終わられましたらお引き取りください。他のお客様のご迷惑となりますので」
ったくよお!客商売は辛いわ!!
私の死亡フラグの元凶にまで優しくしなきゃいけないなんて!
銭にならなきゃ叩き出すのになあ!
「デアシラ!!君の身が危ないんです!!」
「まあ村人としてとっても怖い。そうなんですか、村人怖ーい」
私はこの村から出んぞ!!例え黄金のガサガサが近くに出ても、冒険者か傭兵が報酬につられて退治してもらうのを、村人Dとして期待する立場なんだからな!!
………んん?
そうだよ、そういやコイツは魔術学院で先生がやれる程の魔導師じゃん。
コイツが私のトラウマを成敗すりゃいーじゃん!
折角心配してんだから、退治すりゃWin-Winじゃん!村も酒場も大ハッピーな大団円じゃーん!!
……ヤバイな、私ったら!追い詰められて素敵なアイデアが出てしまったわ!!実は凡庸じゃ無かったかも、なーんてね。私は単なる村娘だから!
「お客様、魔導師なんですよね」
「はい、ですからデアシラに注意喚起を」
「………お客様が酒場に行って、討伐依頼を受けてください。そして倒してください」
「…………え?」
何ボケッとした顔してるのよ。
「えじゃないんですよ。私の心配をするなら黄金のガサガサを倒してください」
「……………」
いや、何を黙ってんだこの魔導師野郎。さっきの偽善コメントはどうした役立てよ。
「いや、討伐までは………そのお、えっと……」
「殺られる前に殺れってこの前酒場のスローガン貼ってありましたよ?
おひとりが嫌ならパーティを募集しましょう?」
「いや、ひとりがどうとかではなく」
「なら早く疾くスピーディーに私を危険に晒す黄金のガサガサを退治してください」
「勘弁してください!!弟を退治とか無理です!!」
「……はあ!?」
弟を退治?弟?
聞き間違いにしては単語が物騒だわ。
挙動不審な魔導師、アルファーディが本音を少し溢しましたね。




