心地よい村人生活に忍び寄る恐怖
お読み頂き有難うございます。現実に目覚めたデアシラの村人生活です。
そして、私の魔術学院行きは潰えた幼馴染みの旅立ちの日。
受験料を支払ってないから、どっちにしても最早資格は消えたのさ。
持たざる者、我が家の勝利!
「なあ、デアシラ。考え直せよ。寂しいじゃないか」
カーデンにお前と一緒に学院行かない!と宣言して何やかんやと私に付き纏って来てた。
普段は私の方がストーカー気味だったけど、立場が逆転してる。
お前の寂しさ如きの為に、危険生物に殺されて一家離散させられてたまるか!
「しつこいなあ。丸ごと無利子無担保で私の授業料払うなら、行ってやってもいいよ」
奴の背後のおじさんおばさんが、必死な青い顔で拒否ってるから無理だろうけどね!
育たない魔力の為にもう奮戦とかしたくないし!命大事!犬死に追放!
正直、前世ゲーム知識に裏打ちされた知識が私には有る!野草採りに鉱石掘りで暮らしていけそうなんだよね。
今回リアルなお金が掛からない学習って、素敵!
案外幸せはお近くに眠っているのかも!
私は顔だけ幼馴染みのルートで息の根を止めたくない為に、奴との共存学校生活を棄てたんだ!
やったね!命とお金とお家は大事だよ!!スーッキリ!幸せの青い鳥はお近くに有るものね!
そして、奴が学校にボッチで旅立って2ヶ月。
手紙が届いた。
……何だよ、意外と寂しがってんのか?ちょっと愛い奴めに転身するルート?
……そうだよね。ちょっとばかしイケメンでも、村人は村娘と結ばれるのが幸せだったりするからね。
そうかもね。うん、きっとそう。
このデアシラが懐かしくて恋しくなったんだな?だって村中で手紙貰ったの私だけだしぃ!
……いかんいかん。他の村娘達に知られたらジェラシーの炎で焼かれちゃう。んもう!
どれどれ?
『学校楽しいよ。そんでさ、可愛い子と出会えたよ、ヘへ。恋の進展が有ったら夏休みにそっちに連れて行くかも。応援してくれよな!デアシラも来るべき』
ぐっしゃり。
「黙れこの疫病神が!!」
おおっといけない。つい握力がマックスで発動しちゃった!
端的に読む価値無しな内容だったわ。村娘にイレギュラー起こらないよね。ウッカリウッカリ!んもうデアシラったらウッカリ!初心忘れるべからず!カーデン滅ぶべし!!
「デアシラ、何やってんの?」
「あ、ナナ!いい天気だね!」
いやあ、村娘同士で友情を育んで固まるべきだよな。チャラくも村を出てった過去の人なんかに関わらないぞっ!
「この間貰った傷薬なんだけどさ。アレ何であんなベットベトなの?改良してよ」
「スプーン一杯の水と混ぜろって説明した直後、お前が柄杓の水を混ぜたからだろ。二度と売らんからな」
はあ、やっぱ村人ダメだわ。広い心が減っていくわ。やっぱり外から好い人来ないかなー。
「デアシラ心狭いー」
「ナナ意地汚いー」
……ちょっとばかし取っ組み合いの喧嘩を久々しちゃったな。まあ、ナナ如きに負けないけどね!
「デアシラの馬鹿ーーーー!!」
「風評被害を弁償しろナナの馬鹿ーーーー!!」
……ふう、何だかんだムカつくけど平和だわ。あ、其処に街中で高く売れる毒キノコ発見。毟って乾かさなきゃなあ。それから薬草摘みと、鉱石掘りだわ!!
「ふんふんふふ~ん~、可愛くもないそんな私ったら愛されて~モテモテな人生に~」
ふふん大量大量。思わず前世の流行りの歌も鼻歌ってしまうわ意気揚々!本日の鉱石掘りと薬草摘みを終えた私の耳に、近所の井戸前立呑屋(別名オッサン達の社交場)からショッキングなニュースが飛び込んできた。
「………黄金のガサガサが其処の鉱山の森で出たらしいぞ!!」
「あんなショボい森で!?」
何でよ。
離れたい運命から逃れられない感じですかね。




