売られていったヒロイン
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足掻くカーデンに対峙するデアシラとソラニ兄弟with酒場の人々です。
「……ええと、デアシラ。このふたりが好きなのか?」
「村と私を襲いに来た女を連れてきたカーデンよりは、凄く好きだけど」
何言い出すんだこいつ。寧ろ自分に好感度が残っているとでも!?大した自意識過剰野郎になったもんね!?
「……デアシラって、俺の事好きじゃなかったんだ……。長年の幼馴染みの俺より、こいつら二股だなんて」
はーー!?いや何だこいつ!!自分の事を棚に上げて、人を男好き女みたいな目で!!
「昨日来られたばっかりのアルファーディ先生とガーランド君に失礼な事言わないでくれる?ガーランド君のお陰で黄金のガサガサを生け捕り出来たし、アルファーディ先生は村を守るのを……手伝ってくれたに等しいのよ!?」
うん、ヒロインを黄金のガサガサ化してくれたのガーランド君だし。でも先生は……流石に私の手柄オンリーにするにはちょっとな、って思うのよ。ど、どう言って良いか分からない。
「ま、まあまあ。デアシラ嬢ちゃんお平らに」
「村を救ったヒーローに言うことじゃねーぞ、カーデン」
ギスギスでギッシギシ軋む空気に耐えかねた酒場の受付のオッサンとマスターが口を出して来た。
ちょっと歯軋りぐらいしてたかもしれないわ。後ヒーローじゃなくてヒロイン!!
……いや、ヒロインも地雷だわ。ヒーローでいいか。うん、村のヒーローデアシラ……。何だろう、女子力が益々朽ちていきそう。
「兎に角、カーデン。お前もう帰れ。親父さんもお袋さんもお前を学校に行かせる為に必死で働いてんだぞ。勝手に帰ってきてぶち壊してどうする」
「え?あ……」
そう。前は村に居なかったから目の当たりにしなかった、こんな大した産業もないパッとしない街道から外れた田舎の村で魔術学校の授業料払うって、かなりの苦行だと思い知った。
……おばさん、この前フラフラで仕事してたしなあ。多分、ウチの両親も私が通ってたら……その挙句大惨事って……。
返す返すも前世で親不孝してしまった……。
後多分、田舎は情報が高速で回るからカーデンが黄金のガサガサ連れのヒロインを引き入れたって伝わってると思うわ。
其処を言わないのがマスターの優しさ……なのかなあ。言ってやりたいけど、空気がなあ。
勢いを削がれてしまったわ……くそう。
「魔物を研究するにしろ、ズズグロさんの罪を償うにしろ、貴方が故郷で油を売っている暇は有るのでしょうか」
おお!?アルファーディ先生!!この雰囲気の中やるじゃん!!流石!!
「な、何だよ!!偉そうに!!デアシラ、考え直した方が良いんだからな!!」
あ、消えた。移動魔術かなあ。
何だあいつ。安っぽくなったなあ。序盤の良い感じのカーデンは幻過ぎでしょ。……いや、別に思い出しても感じ良くはなかったか。空気読めないし女の子にチヤホヤされるの好きだしそれで諍いが起こってもトンズラしてたな。
……でも、それでも単なる調子のいい村人って言うか、幼馴染だったのに。
本当に顔だけの……いや、物語によく出てくる嫌な魔術師になったみたい。まだ学生だけど。
「二股はあっちでしょうに……」
「だよなー」
ソラニ兄弟が嫌そうに眺めてる。……魔術の才能が無い私には分からないけど、残渣がどうの言ってるから、行き先でも探ってるのかな。
「ゴ……ギュウ」
うええ。ヒロインが鳴いてやがる。黄金のガサガサの鳴き声、濁音でキモイ……。ガーランド君が無音で本当に良かった。でも、その彼が何故か檻籠を足蹴にしてるのは何故だ。
「あの彼、この籠をパクろうとしてたみたいです」
「はあー!?」
あの野郎!!何考えてんだよ!!
「魔力を込めて踏みつけているので、持って行かれるのを防ぎました」
「よくやったあんちゃん!!アイツマジ碌でもねえな!!」
酒場のマスターが顔を真っ赤にして怒ってる。そりゃそうよな。高く売れるってホクホクしてたのに、パクられる所だったんだから。
あ、カーデンは全国の冒険者ネットワーク酒場を出禁措置にしてやるって。
……カーデンの家って葡萄農家で此処の酒場に卸すお酒を造ってるんだけど、おじさんとおばさんの肩身がまた狭く……。
「全く!!知り合いでも甘い顔したらいけねえな!!」
「……ゴゴ……」
……それから間もなく、隣町の酒場から借りてきた馬車で黄金のガサガサヒロインが運ばれていった。
……これで、私の死亡ルートは潰えた、と思いたいわ……。
「じゃあ帰りましょうかデアシラ」
「デアシラのお母さんが晩御飯ご馳走してくれるって。ありがと」
……このふたりも居ることだし、当面は幸せに暮らせそう……。
居る間に、宿屋を継いでくれる入り婿の件を考えなきゃなー。どうしたもんか。
次はエピローグですね。




