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第14夜

「先輩~…そろそろ帰りましょうよ~」



オフィスの自身のデスクの上に頭を突っ伏していた高橋が東雲に言う。

時刻は深夜を回っていた。

連日の事件で対応に追われており、家に帰れない日が続いている。

そろそろ限界とばかりに嘆いていた高橋に、



「先に帰れ」



と、にべもなく返事をする。

別に東雲に合わせて残業する必要はない。

むしろ上司として、部下を無理やり付き合わせるのも気が引けるというものだ。

そういった意味も込めて返事をしたつもりであったが、あまりにも素っ気ない態度に真意は伝わらなかったようだ。

高橋はぶつくさ言いながらPCへ向き直った。


観光バス事件然り、今日の殺人事件然り、立て続けに目立つ事件が発生している。

洞窟で発見された行方不明者の中には以前から捜索願が出されていた人物もおり、そちらへの対応や捜査本部からの問い合わせ(という名の抗議)も多く、また老爺が関わっている事件のピックアップ作業などもあり目が回る忙しさだ。

昼間の事件では狐守が事情聴取を拒否し帰ってしまった為、それに対しても事件を担当している捜査一課から文句の電話がかかってきた。

途中で部長が電話を替わってくれたから比較的早く終わったものの、あのまま東雲が対応をしていたら電話はかなり長引いていただろう。

その部長もすまんが今日はもう帰る、とすでに帰宅しており、他のメンバーも日付が変わる前には帰ったため、オフィスには東雲と高橋だけが残っていた。


カタカタと静かな空間にキーボードの叩く音だけが響く。

その時、隣に座っている高橋が小さく声を上げた。



「どうした?」

「あ、いや…例の老爺についていろいろ整理してたんですが…」



気になる供述を見つけたんです、と高橋は一つの捜査資料を東雲に見せた。

その事件はすでに犯人が逮捕されている。そこには、とある闇サイトについての証言が書かれていた。

この犯人は無差別殺人を計画していたが、ひとりで行動を起こす勇気がなく、その時にこの闇サイトを発見した。

掲示板の書き込みに反応した人物と一回だけ接触したのだがその人物はかなり歳のいった男で、計画について話をすると、その内容では協力できないと言って帰ってしまったそうだ。

その態度に憤怒した犯人は、半ばヤケクソで計画を実行しようとし、不審な動きをしていると警察官に職務質問を受け、そのまま逮捕に至った。

事件は未遂に終わった為あまり大事にはならずに済んだが、少しの間だけワイドショーを騒がせていた。



「闇サイトか…」

「この闇サイトはすでに閉鎖されていますが、犯人が会ったという男が気になりますね」

「そうだな。特徴も一部ではあるが一致する…この線で探ってみるのも一つの手か」

「そうですね」

「それにしても、よく見つけたな」



この事件はAGW対策部の管轄ではない。感心して言うと高橋は照れながら頭をぽりぽり掻いた。



「実は、この犯人を捕まえた警察官、僕の友人なんです」

「ほぉ」

「そういえばこの前久々に会ったときに得意げに話してたなぁと思って、たまたま捜査資料見ただけなんです」



つまり、仕事には関係ない資料を見ていたということか。

本来であれば怒るところだが、今回は見逃しておこう。



「闇サイトに関係のある事件もピックアップしよう。高橋、任せたぞ」

「え」

「なんだ?」

「…なんでもありません」



思い出すんじゃなかった、と高橋の顔に書いてあるが、関係のない資料を見ていた罰だ。

それくらいはやってもらわねば。

そうして、夜は更けていった。


警察の捜査資料って、そう簡単に読めない気もしますが…ここはファンタジーということで…。

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