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プロローグ

暗闇に、鈍く光る銀色。


迫りくる脅威に、傷だらけの"それ"は恐れ戦いた。

歴然とした力の差。

容易に想像できる、自身の未来。

これも平衡を乱し人を襲った罰か。



必死に逃げるが、ふいに目の前に立ちはだかる壁に"それ"は足を止めた。



月明かりに煌めく銀の長い髪を靡かせながら、雅な着物に身を包んだ美しいその人はゆっくりと伏せた瞼を開いた。

現れた金の瞳に射抜かれる。


あぁ、駄目だ。自分は彼女に―――



無謀と分かっていながら"それ"は、彼女へと襲い掛かった。

次の瞬間、激しい痛みが身体を貫く。

切り裂かれる身体から、青白い炎が燃え上がる。

その炎は瞬く間に身体を包み込み、"それ"は声を上げる間もなく、灰となって消えていった。



彼女はそれをただ見つめていた。

ふと、彼女の背後から男が声をかける。

それに応えると、彼女は"それ"がいた空間へ小さく呟いた。




「さようなら」




そうして、暗闇には静寂だけが残った。

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