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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
高校生編 一年生
63/237

休日とお出かけ

 今日は終業式で二学期が終了する。朝、学校に着いてからこの二学期は色々な事があったなと振り返っていると、教室の入り口の方から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


「お―い、由規」

「何だよ、珍しいなぁ、わざわざ教室まで来て何の用だ?」


 志保が教室まで来る事は滅多にない、用事があっても大体部活の前後に言ってくる。


「明日、何か用事がある? もし無かったらお願いを聞いて欲しいのだけど」


 手を擦り合わせてお辞儀をしながらお願いをするような顔をしている。志保は普通にしていると可愛い分類に入る。

 元々、背も低いので見上げる感じでそんな顔をされると流石に無下に出来ないのでとりあえず聞いてみた。


「分かった、特に用事も無いし、暇だからいいけど……あまり変なお願いは勘弁してくれよ」

「変なお願いなんかしないよ、えっと、由規の部活の復帰と復帰後の初勝利をお祝いをしようと思って……」


 少し恥ずかしいのだろうか顔を赤くして俺を見ている。素直に嬉しいと思ったが、お祝いって何をするのだと疑問になる。でも志保には色々と世話になったし、お願いの一つくらいはと軽い気持ちで受ける事にした。


「それでどうしたらいいんだ?」

「うん、朝の十時に駅前で待ち合わせね」


 まだ顔は赤いがホッとしたようで嬉しそうな顔をしている。


「分かったよ、十時だな」


 俺はそう言って頷き、志保の顔を見てニコッとする。志保は約束が出来てご機嫌な軽い足取りでそのまま教室を出て行った。

 その日の放課後の部活の時に、何故か志保は全く明日の話をしてこなかった。そして部活が終わり帰る時に一言だけ「楽しみだね」と俺に言って楽しそうに美影と一緒に帰っていった。


 翌日、俺は約束の時間より早く待ち合わせの場所に行った。街並みは昨日がクリスマスイブだったのでまだクリスマスの飾りが残っている。

 志保の事だからお祝いとか言って結局デートがしたいだけなんだろうけど、今回は素直に聞いてあげようと思ったのだ。

 十時少し前に志保が住んでいる方から来るバスが到達した。

 多分このバスに乗っているのだろうと思って眺めていると予想通り志保らしき人物が降りてきた。それに引き続き見たことある人物が降りて来た。


「あれって、美影じゃない?」


 思わず独り言が出てしまうくらい意外だった。志保の私服姿は昨年の夏の合宿の時に見たので何となく想像した通りだったが、美影の私服姿は今回が初めてだった。

 美影らしいと言ってしまえばそのままだけど、清楚な感じで可愛らしい感じが漂う雰囲気だ。別に志保の私服が可愛くない訳ではない、志保らしく爽やかな感じでピッタリだと思う。


「おはよう、由規。待った?」


 志保が嬉しそうに話しかけてきた隣で少し困惑した表情の美影がいる。


「何で宮瀬くんがいるの?」

「何で美影が?」


 俺もほぼ同じタイミングだった。すると志保が楽しそうな顔で俺と美影を見る。


「だって三人の方が楽しいじゃない」


 そう言って笑いながら胸を張るが、背が低いのであまり迫力がはない。

 志保が言うには、美影に俺がいる事を話すと遠慮するし、俺には対してはただサプライズとの事だった。きっと志保なりに気を遣ったのかもしれないし、単純に二人っきりが恥ずかしかったのかもしれない。


「それでどこに行くの?」

「えっと、この前オープンしたアウトレットモールだよ」


 志保が張り切った様子でテンションが高めだ。アウトレットモールはこの駅から三駅ほど乗り、降りた駅からシャトルバスに乗り、ここから三十分弱で到達する。背の低い志保が前に立って先導する。


「じゃあ行くよ!」


 俺と美影が顔を見合わせて小さく笑い、志保の後ろについて行った。


 シャトルバスが思ったより混雑していて予定より少し時間がかかったがアウトレットモールに無事到着した。


「やっぱり人が多いわね……」


 先程までの勢いが消えて志保は少しウンザリした顔をしている。シャトルバスに乗った時、人に埋もれていたので多分その影響かもしれない。


「仕方ないさ、一応今日はクリスマスだし、冬休みの初日だし……」


 俺はそう言ってぐるっと人混みを眺めて、美影に同意を求めると苦笑いをしていた。


「そうねここに居ても仕方ないし、行きましょうか」


 美影がそう言って歩き出そうとした。


「ちょっと待って……」


 今度は志保が慌てた様子で間に入ってくるので、俺は驚いた感じで尋ねてみる。


「いきなり、何だよ」

「えっとね……迷子になったらいけないから手を繋いで行こうかなぁ……」


 恥じらいながら段々と志保の声が小さくなる。

 その姿を見て一息つき今日は志保の言う通りにするつもりだったので手を差し出そうとした。

 その瞬間、俺の横からスッと手が伸びてきて志保の手を取る。

 びっくりしてその手の主を見ると美影だった。美影はちょっぴり意地悪そうな笑みを浮かべている。


「ふふふ、大丈夫だよ、志保。私が繋いであげるから安心して」


 志保は一瞬呆気にとられて美影に繋がれた手を見た。残念そうななんとも言えない顔をしていたが、諦めて美影には何も言わずに大人しく手を繋いでいた。

 俺はそんな二人が可笑しくて笑いそうになったが、二人の後ろをついて行く形で店を廻ることにした。


 いろんな店を一緒に見て、所々俺は、店の外で待って二人の様子を見ていた。

 志保はこれまで練習で割と長い時間一緒にいることが多かったが、美影はクラスが一緒とはいえそんなに長い時間一緒にいたのは学祭の準備をしていた時ぐらいだ。

 改めて、私服姿の美影を見ると、かなりのレベルの高い子だ。いつも制服姿で意識していなかったが、背もそこそこあり、スタイルも悪くない顔もかなり綺麗で周りからの視線を感じることが多い。

 志保もなにもなければ可愛いらしさがあるし、俺は周囲の男達から敵対視されてないか不安になった。二人の後ろを歩きながら、美影の横顔を何気なく見ていると志保が俺の頬をぎゅっと抓ってきた。


「痛っ……何だよいきなり」

「ふん! じっと見ていたでしょ美影の顔、さっきから私が何度も呼んだのに全然気づかないし……」


 抓りながら志保は不貞腐れた顔をしている。隣にいる美影は恥ずかしそうに顔を少し赤くして俯いている。俺はさすがにマズイと反省して志保に平謝りをする。


「……ごめん、別に見入っていた訳じゃないだけど……それで何の用事だったんだ?」


 話題を逸らそうと志保の顔を見るけど相変わらず不機嫌なままのだが、仕方なさそうな口調で返事をした。


「もう……そろそろお昼食べない?」

「はい、分かりました……」


 俺は余計な事を言わず素直に答えた。

 フードコートに向かうとピーク時間を過ぎたとはいえまだ人が多かった。まだ並んでいる店もあるが、座席は何とか確保出来そうだった。やっと志保の機嫌も落ち着いてきたようで、ホッとしながら座り荷物を置く。美影がお手洗いに行くと言うので一人席を離れる。


「由規、さっきは美影の……」


 機嫌が直ったかのように見えた志保だったが、美影がいなくなると同時に追及が始まろうとしていた。その時、後ろから久しぶりに聞き覚えのある声がしてくる。


「せ―んぱい、誰だかわかります?」


 いきなり目隠しをされてしまうが、この声とこんな事をする後輩は一人しかいない。


「恵里だな……」

「あったり! さすがですね、センパイ」


 振り向くと髪が伸びたが間違いなく恵里だった。しかも私服姿で以前よりもぐっと大人びた雰囲気で周囲の視線を独り占めするぐらいの勢いだ。

 またそれを恵里は気にすることなく自然に振る舞うのでこちらが参ってしまう。


「相変わらずだな、恵里の存在感は……」

「何を言ってるんですか、私は変わってませんよ。あっセンパイ、体治ったんですか、部活は?」

「あぁ、もう完全に治って、部活も復帰したぞ」

「よかった……安心しましたよ……あれ、マネージャーの人が」


 志保の顔を見て何か思い出したようだ。そう言えば以前、俺が部活を休んでいた時に恵里が来た事を思い出した。


「こ、こんにちは」


 志保がペコリと挨拶をするが様子が変な気がする。


(まさか恵里に圧倒されているのだろうか……)



「こんにちは」


 恵里は丁寧な笑顔でいつもと変わらない様子で挨拶をするが余裕があるように見える。俺は一瞬、頭の中でいろいろ心配をしたが、すぐに少し離れた場所から恵里を呼ぶ声が聞こえた。


「じゃあ、センパイ、また春に会いましょうね。浮気したらダメですよ!」


 ペロッと舌を出して悪戯っぽく笑い、声がした方へ向かって行った。

 まるで台風が過ぎ去ったような雰囲気だ。志保が意気消沈したような表情で固まっていて、予想どおり恵里の勢いと存在感に圧倒されたようだった。

 恵里と入れ替わるようにして美影が戻って来た。


「どうしたの、志保? 宮瀬くん、何かあったの?」


 美影は心配そうな顔をして俺を見るが、何て答えたらいいのか分からない。


「どう説明したらいいのか……難しいな……」


 とりあえず恵里が来たことを説明をすると美影は何とも言えない不思議そうな顔をしている。話終わる頃には志保も大分回復してきて話に加わろうとしてきた。


「……負けないもん……絶対に……」


 逆に段々と闘志が湧いてきたのか、燃えてきたようだ。

 俺はため息を吐き苦笑いをしていたが、最後に恵里が言った言葉が気になった。


(恵里の学力からしたらもっと上のランクの学校に進学するはずだが……)


何か嫌な予感しかしない。そんな事を考えていると、美影はあまり状況が飲み込めずに、しばらくの間不思議そうな顔をしていた。 


 この後、昼食をとりまた店を廻る。途中で三人お揃いのカップを買ったり、復帰のお祝いと言って二人がおしゃれな感じのフォトフレームをプレゼントとしてくれた。志保が言うには「これから試合とか沢山とるから飾ってね」との事だ。


 久しぶりに遊んで疲れた帰り道に、部活の話題になり美影が思い出したように話す。


「この前、顧問の先生とキャプテンが練習試合をするみたいな話をしていたよ」

「へぇ、それは初耳だな」


 俺もまだ耳にしていないし長山達も知らないはずだ。


「でも、まだ具体的には決まってないみたいよ、近場の学校と試合ができたらいいって言ってたけどね」


 美影の情報なので間違いはないので近いうちに連絡があるだろう。俺的にも県大会前に調整を込めて試合形式がある方が助かる。

 最初に集合した駅に着いた時は、もう夕方で日も傾きかけていた。


「んじゃ、また明日。ありがとう、志保、美影。いい気分転換になったよ」


 俺が笑顔で話していると、志保が少し残念そうな表情で笑っている。


「そうね、楽しかったわ。でも次は二人きりで遊びにいくよ」


 そう言いながら志保は美影の顔を見ている。


「私も久しぶりに楽しかたよ、また皆んなで遊びに行こうね」


 志保の言うことを構わずに美影は優しそうな笑顔をしている。そんな二人のやりとりを見ながら久しぶりに心から楽しい一日を過ごす事が出来た。

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