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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
中学生編 三年生
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街の灯りと想い

絢の視点です。

 まだ胸のドキドキが止まらない。帰宅してお母さんに「どうしたの? 顔が真っ赤よ、熱でもあるの……」と心配されてしまった。

 よしくんと別れてもう三十分くらいになるけど、顔の火照りが治らない。

 ちょっとだけ期待していたかもしれない。でも実際に目の前で言われると……公園での場面を思い出すとまた顔が熱くなってくる。


「はぁ〜」


 大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとした。告白はされなかったけど、進路の事はちゃんと話してくれた。私も本当は二回目の進路調査の頃には知っていたけど、よしくんが言っていたようにそのことで関係がギクシャクしそうでこれまで話題にしなかった。

 お互い同じ想いをしていたのならもっと早く話して楽になれたのかなぁ……もし今日、よしくんの告白の最後まで聞いていたら、明日から何か変わっていたのかなと考えていた。


(明日、きっとよしくんは気まずそうにするからいつも通りに話してあげよう、でも本当は私も恥ずかし……)


 翌日、教室に着くとよしくんは座って窓の外を眺めて何となく元気がなさそうだった。


(昨日の事、引きずっているのかなぁ……)


 私は鞄を置いて、静かによしくんの所に近づくけど気がついていない様子で外を眺めたままだ。


「おはよう」

「えっ、あ、おはよう……」


 不意を突かれたのか、よしくんはかなりびっくりした表情をした。やはり昨日の事を気にしているみたい……


「昨日は、ありがとう……ちゃんと話してくれてありがとうね」

「ううん、こっちこそごめん……」


 よしくんはまだ元気のない顔をして私の方を向いてくれない。このままではといけないと恥ずかしい気持ちを抑えてよしくんを励まそうとした。


「よしくんの事、分かってるよ。待っているから、大丈夫だよ」

「⁉︎」

 私が優しくよしくんの耳元で囁くと驚いた顔で私を見上げる。よしくんは真っ赤な顔で慌てふためいている。

 私は「ふふっ」といたずらっぽく笑うとよしくんもやっといつもの表情になり、「こらっ」って怒った顔をして、二人で笑顔になれた。私は安心して、席に戻ると由佳も登校していた。


「絢……朝から見せつけてくれるねぇ……」

「えっ、な、何?」

「何じゃないわよ、さっきのは」

「あっ、あの昨日、いろいろあったというか……」

「顔が真っ赤だよ、絢」


 そう言われて俯いてしまったが、由佳は昨日の事が気になるみたいで、更に追及してくる。私は仕方なく昨日の夕方からの事を話した。


「はぁ〜、それでね……」


 由佳は大きなため息を吐き、よしくんの方をちらっと見るとまたため息を吐き呆れたような表情を浮かべる。


「まぁ、絢が良いと思うならいいじゃないの、しかし似た者同士というか何というか……」

「いいの、それで」


 私がふてくされたように言うと、由佳は「ハイハイ」と言って、席に戻っていった。

 由佳が言いたい事も分からない訳ではない、まだ卒業まで四ヶ月もある。残りの時間、このままの関係でもいいかなぁと……今は、この当たり前にいるような関係が……卒業してしまったらもう出来ないのだから……その先はまた考えよう……


(私は変わらず好きなんだからね!)


 よしくんの方を振り向くと友達と楽しそうに何か話しているみたいで、私の視線には気がついていない。でもいつもと変わらない風景で安心して授業の準備を始めようとした。

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