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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
中学生編 二年生
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秋雨とトレーニング

 二学期も体育祭が終了してクラスの雰囲気も良くなってきた頃、今日は雨が降りグラウンドには大きな水溜りが出来ている。

 五時限目が終わりホームルームが始まるまでの間、自分の席に座って外をなんとなく眺めていた。すると後ろ席の女子がシャーペンで背中を突いてきた。


「あんたの部は練習があるの?」

「あぁ、いつもの場所で練習する予定だけど、なにか?」


 突いてきたのは、大仏円(おさらぎまどか)で小学校からずっと同じクラスで幼馴染みの女子だ。

 何故、大仏が不満そうな顔をしているのかというと、雨が降っていなければ外で練習するはずだった。しかしこの雨で外の練習が無理そうなので校舎の渡り廊下や外階段で筋トレをすることになる。


「目の前を右に左に走られたら、アタシ達の練習の邪魔なのよね!」


 大仏は吹奏楽部で個人練習する時に渡り廊下や外階段で吹いているので、雨の日の練習場合が被ってしまうのだ。


「邪魔って酷くない? 一応は注意しながら練習してるけど……」


 理不尽なことを言われて、困惑した顔をしていると大仏が何か思いついた表情をした。


「それじゃ体育館の階段でやればいいんじゃない、結構広かったんじゃないの?」

「あの階段か……そういえば最近あまり他の部は使ってないな」

「じゃあ決まりね!」


 何故かドヤ顔で言い切る大仏だが、全くバスケ部とは関係ない。でもコイツの性格なら仕方ないのだ。


「バスケ部じゃないのに勝手に決めるなよ、でも今日はとりあえずあそこでいいか……」

「これで邪魔されずに練習が出来るわ」


 ここで反論しても変に長引くのも策ではないと諦める。そんな気も知らずに大仏の顔は満足気だ。タイミングよく、教室のドアが開いて担任の先生が入って来た。


「席に着けよ、ホームルーム始めるぞ」


 そう言いながら先生が教壇に向かい、帰りのホームルームが始まった。終わり次第、先に部室へ行って練習場所の変更を伝える事といつもと場所が違うので練習の内容も変更しないといけない。 そんなことを考えながら先生の話を聞いていた。


 ホームルームが終わり急いで部室へ向かったのでまだ誰も来ていなかった。とりあえず着替えて準備をして他の部員達が来るのを待つことにした。暫くして次々と部員がやって来て、最後に少し怠そうに慎吾が来たが、明らかに練習をやりたくなそうだ。


「雨が降ってるけど、練習するのか?」

「勿論するよ、今週末は試合だし」


 予想通りの質問で苦笑いをして答えた。


「えぇ〜やっぱりするのか……」


 愚痴をこぼしながら仕方なさそうに慎吾も着替え始めた。全員が着替え終わり、体育館の階段前に集合する。キャプテンなので部員達の前で練習場所の変更と練習内容を説明する。


「今日はこの階段と階段の踊り場で練習することにしたから、とりあえず効率よく練習する為に、二班に分けるよ」


 レギュラー班と一年生班に分けて、キャプテンという立場と後輩たちの世話ということで俺は一年生側に着くことにした。最初の練習場所は、階段に一年生班で踊り場にレギュラー班にした。階段はダッシュなどの脚力のトレ二ングで、踊り場は腕立てとかの筋トレをすることにした。


「それじゃ始めるよ!」


 号令で各班とも練習を開始した。ちなみにこの階段は体育館の中にあり、一階が武道場を兼ねた小アリーナと各部室で、二階が大アリーナで普段の練習はこちら側を使用する。

 練習を始めて一時間くらいになり、そろそろみんなバテ始めてきたので休憩をとり、トレーニングと場所も入れ替えるようとした。


「おーい、十分間休憩して、それから入れ替えるよ!」


 俺の掛け声で各自座り込んだり水分補給をはじめる。俺自身も水分補給をしたが、体力に余裕があったので日頃あまり見ることが無い一階の小アリーナで練習をしている部活の様子を見に行った。

 そこには笹野達がいる女子卓球部が練習をしているが、見学するのも変な感じなので笹野がいるかいないかだけ確認することにした。ちょうどそのタイミングで一対一で練習を始めるところだった。俺には気がついていない様子だ。

 笹野の姿を確認したところでトレーニングの続きを始めることにした。


 今度は二階の踊り場で一年と筋トレを始めて、一階はレギュラー班が階段ダッシュを開始した。少し時間が経ち後輩たちに気を配りながら筋トレを続けていると、たまたま一階にいる慎吾の姿が目についた。

 よく見ると案の定サボっていて、どうも誰かと話をしているようだ。


「慎吾は疲れたら直ぐにサボるからな……」


 ため息を吐きながら呟いていたが誰と話しているのか気になり、よく見てみると女子卓球部のキャプテンだった。


(あぁ、そういえば、あの二人は同じクラスか……だからね)


 慎吾はまだ他にも何人かと一緒に会話をしているようだ。全員女子卓球部のようで、慎吾が何やら相談しているようにも見える。さすがに声まで聞こえないので内容が全然分からない。だんだんとイラッとしてきたので、慎吾に聞こえるように大きな声で注意しようとした。


「お〜い、慎吾サボるなよ〜」

「ハイハイ、わかりました!」


 俺があまりキツイ言い方をしなかったので慎吾からやる気がなさそうな返事が返ってきた。慎吾達は会話の途中だったのだろう、ちょっとだけ話を続けて彼女達は練習に戻っていった。

 それから三十分ぐらい続けたが、練習自体がかなりダラけてきたので頃合いかなと判断して、みんなに聞こえるように大きめな声で合図をする。


「よ〜し、練習終わろうか!」


 俺の掛け声に反応して、後輩たちと一階にいる慎吾達も声を揃えて挨拶をする。


「お疲れサマでした――」


 真面目に練習したのか疑いたくなるぐらい元気良い声だ。こんなトレーニングで身についたかどうか分からないが、本日の練習はこれで終了になった。

 部室に戻り、着替えて帰宅の準備を始めていると慎吾が突然、なにか企んでいるような顔をして声をかけてきた。


「来週の土曜はヒマ?」

「特に用事もないし大丈夫だけど」

「そうか、じぁ予定空けとけよ!」


 慎吾は笑みを浮かべながらその予定を発表する。


「女子卓球部と遊びに行くぞ――」

「えっ……マジか?」


 俺は驚きで着替えていた手が止まってしまう。慎吾が言ったことが瞬時に理解出来なかった。


(おいおい……大丈夫なのかよ……)


 期待よりも不安が大きくて、どうしようかと悩んでいた。

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