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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
中学生編 三年生
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夏合宿 ②

 一日目の最後の授業が終わり入浴を済ませたら、就寝時間まで自習時間になる。自習は授業で使っていた部屋が解放されて自由に部屋を選べる。

 真っ先に入浴を済ませて、三部屋解放されていたので一番人が少ない部屋を選んだ。あれから白川が絢とどんな話をしたのか分からないが、とりあえず一人で勉強をしようと誰も誘う事はしなかった。ここに来る前に絢と白川が入浴に向かっている姿を見たので確実にこの部屋にはいないのだ。

 夜になると山の中だけに気温は平地より涼しいので、勉強が捗りそうな気がして一人で座り勉強を始めた。一時間くらい経ち集中していて気が付かなかったが、部屋の中の人数が結構増えていて驚いた。

 いつの間にか隣にも女子が座っていたけど、顔を見ていなかったので誰が座っているのか分からなかった。少し難しい文章問題を終えたところで、一息つき誰が座っているのか気になり横の席の女子をちらっと見てみると見覚えのある顔だった。


「あっ、あれ?」

「やっと気が付いたみたいだね」

「い、石川さん……い、いつの間にす、座ってたの……」


 焦って噛んでしまい恥ずかしかったが、石川さんは遠慮がちに笑って答える。


「三十分前くらいかな、集中しているみたいだったから声かけづらくて……驚かせてごめんね」

「そ、そんなことないけど、こっちこそ気を使わせたみたいで……」


 申し訳なさそうに返事をしたら、石川さんはそんな事はないと手を横に振り否定していた。


「私も集中出来たし、気にしないで」


 そう言ってテキストとノートを見せてくれた。テキストには書き込みと蛍光ペンでマークがしてあり、ノートも丁寧な文字で整理して書かれていた。静かな自習室の中で話をしていたら、他の人の勉強の邪魔になると思い一度部屋の外に出ようとした。


「石川さん、ここで話しすると迷惑がられるから一旦部屋から出ようか?」

「そ、そうだね」


 石川さんは頷き、一緒に部屋の外に出た。部屋から出て、廊下の途中にあったベンチに二人で座った。

 すると石川さんがすぐにイタズラぽく言ってきた。


「『さん』づけはやめて欲しいなぁ、同級生だし知らない仲でもないし、よそよそしいからさぁ、そうだなぁ……『志保』でもいいよ」


 石川さんのはにかんだ笑顔が可愛らしいかったので一瞬ドキッとしたが、ここで初めてフルネームを知ることが出来た。


「さ、さすがに下の名前で呼ぶのは……石川でいいかな?」

「……しょうがないなぁ、いいよそれで」


 そうは言ってもまだ数回しか会っていないのに、俺は恥ずかしくて言えない。石川は返事に残念そうな顔をしていたがすぐに笑顔に戻った。

 その後お互いの学校の事などの話をしていたが、この前の大会の時に話した内容が少し気になったので聞いてみることにした。


「石川はもう志望校ってもう決めた?」


 突然の真面目な話で石川は驚いた表情をしてから恥ずかしそうな表情に変わった。


「え、えっ、ま、まだはっきりとは決めてないけど、A府高校かな近いし……」

「い、一緒の志望校だ……」


 今度は俺が驚いたが、石川はもっと驚いた顔をして笑顔になった。


「ほ、本当に⁉︎」

「う、うん」

「やった――! これで宮瀬くんと一緒の学校に……」


 その先の言葉は聞き取れなかったが、石川の顔が赤くなったのは分かった。


(もしかして同じ学校に行く事になれば、この前石川が言っていた事を本当に実行するのか)


 合格してからの話で、それに確認するのも恥ずかしくて結局聞くことはなかった。


「まぁ、お互い志望校に合格するように頑張ろうな」

「断然やる気が出てきたよ、早速勉強の続きをしよう」


 何かを決意したのか石川は急に立ち上がって勢いよく歩いて自習室に戻ろうとした。石川の姿を見て俺は軽く笑い同じ様に立ち上がって自習室に戻った。

 それから就寝時間前まで集中して勉強をして疲れたので、しっかりと熟睡することが出来た。


 翌日、目が覚めて時計を見ると六時を十五分ほど過ぎていた。六時半からは外の広場でラジオ体操があるので、慌てて顔を洗い着替えて集合場所の広場に向かった。


「お、おはよう……」


 背後から聞き慣れた声だがいつもと違う感じがする。振り返ると絢が恥ずかしそうな表情で立っていた。隣には白川とその友達がいてお互い顔を見合わせてやれやれといった顔をしていた。


「おはよう……意外と夜中は涼しかったけど大丈夫だったか?」

「う、うん」

「そうか、俺は涼しかったし疲れていたから結構熟睡したよ」

「わ、私は由佳ちゃんと話していたら遅くなって……」

「今日も大変そうだからあまり無理するなよ」

「あ、ありがとう……」


 絢の様子はいつもと何か違う感じがするけど、とりあえず機嫌は治ったようなので一安心した。多分隣にいる白川が咋夜遅くまで話をしたのだろう。白川には感謝して、絢には分からないようにお礼を言った。

 体操も終わり朝食を済ませたら、お昼までびっしりと授業がある。勿論、合宿なので仕方ないが結構ハードな時間割が続いた。授業合間の休憩時間も五分程度で短かったが、絢と少しだけ話をする事が出来た。昼前の最後の時間は午前中のまとめのテストだったが、これまでの確認テストなのでそれほど難しい問題ではなかった。


(終わった……お腹空いたなぁ……マジ疲れた)


 大きなため息をつき暫く顔を机に突っ伏していたら絢がやって来た。機嫌は良くなったみたいで安心して絢の顔を見る。


「どうしたの……」

「お、お昼一緒に食べない?」

「う、うん、いいよ」

「先に行ってまってるね」


 そう言って白川達と軽い足取りで部屋から出ていったが、絢の表情はいつもと変わらない優しい笑顔に戻っていた。絢の笑顔を見て午前中の疲れが少し癒されたような気がした。大きく息を吐き机の上を片付けて急ぎ気味に部屋を後にして昼食に向かった。

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