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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
中学生編 三年生
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修学旅行 ④

 次の目的地にはバスでの移動になった。観光地なのでバスも観光客が多く乗っていたが、無事に二ヶ所目のお寺に着く事が出来た。

 このお寺も有名なだけあって観光客が多くて心配だったが皆んな逸れたりする事なく見て回れた。午前中はこの二ヶ所だけで時間的には余裕のある行程になっていった。この後は昼食の時間になっている。再びバスで移動して昼食場所に到着した。

 三ヶ所目は、かなり大きなお寺で山の中腹にあるので市内が一望できるようだ。バスから降りて、参道を上がって行くと入口が見えた。参道もかなり観光客が多くて逸れそうになったがなんとか到着出来た。

 先ずは本堂から見学をして周り、一通り見たところで、境内を周ろうとした。


「私達はそこの神社に行きたいのだけど……」


 白川が俺に聞いてきた。その神社は縁結びの神さまとして有名である。それを聞いて健と博之が不満そうな顔をしていた。


「俺達は行ってもつまらないからな」

「そうだな……ここで三十分だけ男女別行動にしようか?」


 本当は班で纏まって行動しないといけないがリーダーである俺が提案をしたのでみんなは納得して、三十分後に今いた場所に集合する約束で別行動になった。


 女子三人は縁結びの神社の方に向かい、男子三人は境内を散策することにした。だが散策と言っても健と博之もそんなに興味がないようなのでサラッと歩き直ぐに飽きてしまい時間が余る。


「さて、どうしようかね……あまり時間も経っていないし、多分まだ戻ってきてないだろう……」


 男三人で顔を見回して考えたが何にも思い浮かぶ訳がらない……丁度そんな時に違う班の奴がすれ違って健と博之に話しかけてきた。

 俺はあまり面識がないがこの二人とは仲が良かったようで、だんだんと話が盛り上がってきて、俺はただ立っているだけで話にも加わらず退屈になった。


「健、博之、先に集合場所に行ってるから」


 そう二人に告げて時間には早かったが集合場所に向かうことにした。

 集合場所に着くと既に一人だけ待っていた。


「あれ……大仏だけ?」


 そこには大仏の姿だけで白川と笹野の姿はなかった。


「そうよ、あの二人はまだ神社の方にいるんじゃないの? 私はあんまりそういうの信用しないからお参りして直ぐに戻ってきたの」

「そうか、お前らしいな相変わらず……」


 俺が笑みを浮かべて話すと大仏は当たり前ような顔をしていた。


「そう言えば、アンタどうするつもりなの?」

 

 いきなり真面目な顔をして大仏が尋ねてきて俺は一瞬呆気にとられてしまう。


「何だよ急に……どうするのって言われても」

「はぁぁ⁉︎ 分かってないわね! 朝の電車の中での会話よ」

「やっぱり全部聞いていたのか……盗み聞きは良くないな……」

「何言ってるの、そうやって誤魔化すつもり?」


 機嫌が悪そうに大仏が聞いてくるが、俺は答えたく無いので適当に誤魔化そうした。だが腐れ縁で幼馴染みの大仏なのでそう簡単に見逃してくれそうになかった。


「誤魔化すもなにもとりあえず今はこのままでいいかなと……」

「そんな事言ってるとまた後悔するんじゃないの? ホントこのヘタレが!」


 さすがに俺の性格をよく知っている上で、本当の事を言われてしまいムッとした。でも言い返しても無駄なような気がしたので黙っていたが、少し俯き加減に大仏の顔を見ないよう呟いた。


「どうであれ俺から何か言える立場じゃないだ……」

「ナニその答えは、アンタはホントに面倒くさい拗らせ野郎なんだよ……」


 大きくため息を吐き大仏が呆れた顔をしていたら、同時に俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


「お――い、わり――遅れて!」

「ごめんね、大仏さん、宮瀬くん」


 全員が戻ってきたが、白川は俺と大仏の様子を見て微妙な空気を察したのか俺に小声で尋ねてきた。


「大仏さんと何かあったの?」

「別にたいした事ないから……気にしないでいいよ」


 愛想笑いをして答えたが、白川の表情は全く信用していない。俺はこれ以上追及されないように次の場所へ行く事をみんなに告げた。


 バス通りに出るまでの参道を下りながらお土産屋を眺めていたらある事を思い出した。


(そうだった恵里にお土産って頼まれてたの忘れてた。何か買わないと煩いだろうな……)


 丁度お土産の種類が沢山ありそうなお店があったので、ここでお土産を買ってもいいかと尋ねたら全員が賛成してくれた。


(何がいいのか? やはり無難にキーホルダーかな)


 店内を見回しキーホルダーがある所を見つけたが、結構な種類がある。定番なものから可愛らしいものまで色々あるが、女子が喜びそうなものを探していくつか見つけた。

 その中から球体の中が動いてスノードームみたいなものに決めた。


「あれ、宮瀬くん、可愛いキーホルダー買うんだ」


 振り返ると声の主の白川と笹野が立っていて何か探しているようだった。


「これ? 後輩に頼まれてね。忘れないうちに買っておこうと思って」


 手に持っていたキーホルダーを見せた。


「それで可愛いのを選んでいたんだ……だって絢ちゃん」


 そう言って白川が笹野の顔を覗き込んだら、笹野は白川の耳元で何かを話したが聞き取れなかった。 気にはなったが、俺は購入する為にレジへ向かった。


(笹野は何か言いたい事でもあったのか? もしかしてこのキーホルダーが……)


 考え事をしながら店の外に出ると健が待っていた。


「次に行こうぜ、時間は大丈夫なのか?」

「まだ時間は大丈夫だよ、全員揃ったら……」


 言い終わる前に全員が揃ったのでバス停に向かった。予定では後二ヶ所に行く事になっている。結局、笹野と白川が何を話していたのか分からずじまいだった。

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