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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
高校生編 二年生 冬
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修学旅行の後

 修学旅行が終わり、二年生も残り少なくなってきた。後は学年末の試験が残っているぐらいだ。部活は春の地区大会に向けて練習が続いている。


「どうした宮瀬、なんかあるのか?」


 今日は朝練があったので皓太と教室に戻ろうとしていた。


「いや、別に……」


 今の心情を皓太に説明しても笑われるか、呆れるかどちらかなので誤魔化そうとしていた。


「練習もなにか集中してないような感じで……また山内と笹野の関連か?」

「……」


 ため息混じりに皓太が俺を呆れたような顔で見ている。練習中は考えないようにしていたのに皓太には見透かされたようで思わず黙り込んでしまう。


「今度は何が起こるんだ、またお前の家にでも集合するのか?」

「げっ……なんで……」

「おっ、適当に言ったのが当たったか、でもいいのかこのまま曖昧なことを続けて……修学旅行でも気になっていたけど本当はどっちなんだ山内と笹野の?」


 鼻で笑っていたが少しづつ真面目な顔を皓太がした。気がつくと教室まであと少しの所までやって来た。美影は朝練に参加していないので教室にいるはずだ。この流れだとこのまま話の途中で教室に着いてしまう。


「……まぁ、なんとかなるさ……」


 これ以上追及されないように無理矢理話を断ち切ろうとしたが、皓太はムッとした顔をする。真面目に俺のことを考えて問いかけたので怒るのは当たり前だ。


「いやいや、なんとかって……そもそもこれまでなんとかしてこなかった結果だろう?」

「……そうかもしれないが、今は……」


 皓太の問いかけをはぐらかすように教室に入った。俺と皓太が揉めるような口調で教室に入ったので、美影はすぐに気が付いて俺達を見ている。皓太も美影の視線に気が付き、追及するのをやめて自分の席に向かった。

 俺は少しホッとしたが、皓太の顔はまだ気に入らないような表情だった。美影が心配そうに俺の所にやってきた。


「どうしたの、何かあったの?」

「……たいしたことじゃないから、大丈夫だよ」


 あまり心配させないよう答えたが、美影は納得していない顔をしている。さすがに美影を誤魔化すことは出来ないが、なにかを察したのか美影はそれ以上何も聞かなかった。


「ねぇ、やっぱり中止にしようか明日のこと……」

「えっ⁉︎」


 美影はなんとも言えない顔をしている。残念そうというか悲しそうな表情だ。もしかしたら最近の俺の様子を見て気にしていたのかもしれない。そんな顔をされると俺は中止にしようと言えない。困惑してはいるけど、嫌だという訳でもない。


「でも来年は出来ないんだろう、だから今年しかないって言ってたじゃないか」

「……うん」


 この話を美影が俺に伝えてきた時に言っていた言葉だった。美影は小さく頷いていたが少し元気がないように見えた。美影の姿を見て俺は少し反省をした。


(美影は悪くないのにあんな顔をさせてはダメだ。全ては俺の責任なんだからしっかりと支えてあげないといけないんだ)


 美影は俺の為に明日のことをを考えてくれいるんだ。だから俺はあんな態度をとってはいけないのだ。気を取り直して美影に伝える。


「明日は何時頃に来るんだ? 楽しみにしてているからな手料理と手作りのケーキ」

「……うん」


 やっと笑顔になって、少しだけ恥ずかしそうに頷いた。その日の放課後は久しぶりに肩の荷が下りたように気持ち良く部活が出来た。


 翌日、午前中に部活があって美影と絢が集まるのは午後三時頃の予定だ。部活はいつも通りに終わり、皓太も昨日のことは何も言ってこなかった。練習中に皓太に話しかけてみたが、特に変わった様子もなく普段通りだった。でも逆に何も触れてこないのが不気味な気がした。

 自宅に戻ってから美影達が来るまで時間があったので、この前の修学旅行の写真をノートパソコンに取り込んで整理していた。美影から送ってもらっていたデータも一緒に整理して編集をしていた。


(この写真は……別のフォルダにしておこう)


 タワーで撮った絢との写真は後日絢が送ってくれた。あの時はよく確認出来なかったが、かなり際どいというより完全に絢とキスしているような感じになっている。何枚か撮っていたのは分かっていたけど、あの時は気がついていなかった。


(美影に見つかる前でよかった……)


 今日の話のネタに修学旅行の写真を見ようとしていたので事前に確認してよかった。最近美影が写真を撮ってはよく送ってくれる。そのままスマホに保存しているだけではもったいないよいな気がしてノートパソコンにまとめるようにした。普段の何気ない美影の笑顔やイベントの時の楽しそうな笑顔が収まっている。


(それにしても美影と付き合い始めて半年弱だけどかなりの枚数だな)


 今回の修学旅行だけでもいろいろなあるが百枚以上はある。でも一枚一枚が思い出になっている。


(……これ絢が見たら嫉妬しないかな)


 少し不安になってきた。三分の一ぐらいは三日目の自由行動で絢も一緒に写って入るが、残りはもちろん絢は写っていない。残りは初日の自由行動で撮った皓太達との写真や宿泊先での写真もあるが美影との写真も同じ枚数ぐらいある。


(う〜ん、やっぱり今日はやめておいたほうがいいかな……)


 編集をしながら迷っていると、玄関のインターホーンが鳴った。時計を見ると約束の時間を過ぎていた。慌てて玄関に向かい扉を開けると美影と絢が大きめのカバンを持って笑顔で立っていた。


「ごめんね。ちょっと遅くなって、買い出しに時間がかかったのよね」


 美影がペコっと頭を下げて、絢も同じよな仕草をしている。


「いいよ、そんな謝らなくて……でもまたたくさん買ってきたね」


 美影と絢がそれぞれ買ってきた物を手に持っているので、俺が二人からその荷物を預かろうと手を差し出した。


「うん、楽しみにしててね‼︎」


 美影と絢が嬉しそうな顔をして張り切っている様子だ。俺も笑顔で二人に答えた。また今回もなにかが起きるのか、楽しみと不安が入り混じっていた。


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