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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
高校生編 二年生 冬
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三学期と反省 ③

 ハーフタイムの間、美影は『目標』と言った言葉が気になったのかずっと俺の様子を窺っていた。試合再開の前に皓太がからかうように話しかけきた。


「宮瀬〜見せつけてくれるな〜時と場所は関係ないのか?」

「何を言ってるんだよ……」

「……確かに調子良さそうだからな残りの時間も頼むぞ!」


 さらりと俺が聞き流すとすぐに皓太は真面目なことを言ってきたので今度は頷いて相槌を打った。

 第三Qも引き続き調子よくリバウンドとシュートを決めていた。しかしなかなか得点差は開かないままだった。第三Qが半分くらい過ぎた頃にチャンスが訪れた。相手が連続してシュートを外し、逆に俺達のチームが連続で決めて点差が少し開いた。


(ここでもう一本取れば……)


 再び相手チームはシュートを外してリバウンドを取ると、ガードの皓太がボールを運んでいく。長山がハイポストに入り、俺がゴール下でローポストにつく。皓太が長山にパスを出して中を伺いながらもう一度皓太にパスを出す。たまたま皓太がフリーになっている。チャンスとばかり皓太は、スリーポイントラインからシュートを放つ。


(あの位置でフリーなら決められるはずだ)


 大丈夫だと判断したが、念の為にリンバウンドの体勢をとる。その油断がいけなかった。


「リバウンド!」


 皓太が珍しく声を出して指示を出す。しかし長山は相手のマークが厳しくて上手いことリバウンドに行けない状態だ。俺も最初のポジションが甘かったのでこのままだとリバウンドを飛んでもボールは取ることができない。


(せっかく流れが来ているんだ、ここは多少強引にでもいかないといけない)


 ここまでかなり冷静に且つ丁寧にプレーをしてきたが、このボールを取る為にかなり強引にリバウンドを取りにいった。シュートが外れてボールが落ちてきたが相手が有利なポジションにいるので無理な体勢になっている。


(あっ、いけそうだ……)


 ボールが手に当たるが、取ることが出来ない。更に体勢を崩してボールを取ろうとしたが、手を掠めてコートの外にでてしまう。


(ヤバイ⁉︎)


 体勢を崩したまま着地したが、相手の足を踏んでしまった。その勢いで足首をひねってしまい、倒れ込んでしまう。ボールは相手チームに渡ってしまうが、すぐ立ち上がれずに試合が止まる。


「大丈夫か?」


 チームメイトが集まってくる。


「あぁ、なんとか……」


 その時は倒れた衝撃で分からなかったが、立ち上がると足の痛みで走れる状態ではない、ベンチに交代の合図を送った。長山に肩を借りながらベンチに戻る。


「宮瀬、すまんな、俺がシュートを確実に決めていたら……」


 皓太がベンチに下がる時に悔しそうに俺に呟いていたので「気にするな」と返事をしてベンチに下がった。

 ベンチに戻ると美影が飛んで来てコールドスプレーとテーピングの準備を始めた。


「痛いでしょう……無理せずにバッシュを脱いで……」

「痛いけど、今はとにかくキツめに巻いてくれ」


 バッシュを脱ぐとまだ酷く腫れては無いがスプレーをかけて美影は心配そうな表情で手際よくテーピングを巻き始める。何度も美影は俺に確認しながら調整してくれた。しかし時間は過ぎて第三Qが終わろうとしていた。試合もいつの間にか逆転されていた。


「無理したらダメだよ」

「……でもせっかくのチャンスを逃す訳にわいかないよ」


 美影は心配そうに見ているが、俺は試合に出場する気持ちで焦っていた。先生が状態を確認に来て俺の様子を見ると「無理そうだったらすぐに交代するぞ」と言って第四Qの頭から出場させてくれたが美影は俺が出るのには反対していた。

 しかし現実はそう甘くなかった。


(……やっぱりダメか)


 足は多少痛むが出来ないわけではない。でも本能的に庇ってしまうのか思ったようにリバウンドが取れなくて、ドリブルでのカットインも出来ない。


「……宮瀬、もう無理するな……」


 相手にシュートを決められた後に皓太が悔しそうに呟いた。得点差も開いてきて、現実的に追いつくには厳しい状況になってきた。無理をして試合に戻ったが、結局何も出来ずに終了した。


「……大丈夫か? 気にするなよ、お前の責任じゃない。ただチームとして選手層が薄いだけだからな、これは俺の責任だ」

「いや……俺が注意していれば……」


 試合が終わって悔しそうな顔をして長山が真っ先に俺の所にやって来た。でも俺はチームメイトには申し訳ない気持ちがいっぱいだった。


 翌日、足はかなり腫れ上がっていた。学校にはなんとかバスと徒歩で通学出来たが、顧問の先生から「一応病院に行って診てもらえ」と言われた。かかりつけにしている病院が通学に使うバスの途中にあるので、学校帰りに寄ることにした。美影にその話をすると「付き添いをする」と言って聞かず、部活は志保に任せてついて来ることになった。


「……いいのか? 美影の家は全く逆方向だしバスも直に行く便はないけど……」

「うん、大丈夫だよ。なんとかなるから、それよりよしくんの足が心配だから」


 俺は何度も一人で行けると言ったのだが、美影は納得してくれなかった。実際、足の状態は骨までいっている感じではなかった。念のために行くだけなので、そこまで不安にならなくてもと思っていた。

病院に着いてレントゲンなど診察してもらい、予想通り骨には異常はなく捻挫という結果だった。一通り診察も終わり、診察代のこともあり母親が来るのを待っていた。


「……よかった。でも安静にしててね。焦りは禁物だよ」

「分かってるよ……」


 美影はすっかり安心した表情をしている。俺は元々そこまで酷くないと思っていたのが、心配してくれた美影に逆らえなかった。


「そうだ……昨日、あーちゃんに会わなかったの? それにこの前の試合も会ってないのよね」


 安心しきったのか急に話題が変わってしまった。美影の中で足の負傷と絢の件が同時に問題になっていたのだろう。足の件が解決してのでもう一つの問題を思い出したようだ。


「……う、うん」


 予期せぬ問いかけに弱々しく答えるしかなかった。美影は不安そうな表情になったが俺はそれ以上答えることが出来なかった。

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