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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
高校生編 二年生 冬
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三学期と反省 ②

 部活は、新人戦の三回戦を勝利して県大会に出場することが出来た。一回戦は問題なく勝利して今日は二回戦がある。


「今日勝てばワンチャンあるかもしれないな‼︎」

「……勝てばの話だろう?」


 やたらテンションが高い皓太を俺は冷静に受け止めていた。もちろんこれから試合が始まるのだから気持ちは上げないといけない。皓太の気持ちも分かるが、俺にはいまいち気持ちが乗らない理由があった。昨日の試合はスタメンで出場して得点もいつも通り取っていたので結果を残しているし、調子が悪い訳ではない。


「ノリが悪いな……マネージャーになにか言われたのか?」

「いや、なにも言われてないから……すぐに調子が悪そうだったら美影がらみにするんだよな……」

「……そんな顔されても説得力ないからな! 本当に自覚があるのか?」

「だから……」


 何度も違うと言っているが、皓太はなかなか理解してくれない。諦めようとしていると、思い出したように話題を変えて聞いてきた。


「今日は割とのんびりとしているけど、いつもはこんなにくつろいでいないよな?」

「……そうかな、いつもと変わらんよ」

「う〜ん……まぁ、いいか……」


 面倒なことになるかなと不安になったが、皓太はあっさりと諦めた。そのままスマホを見始めたので空知か芳本あたりからメッセージでも来たのだろう。

 確かにいつもなら試合前の空き時間に絢と会っていた。絢に会うこの時間は試合前の楽しみでもあった。でも年明けの二試合とも絢に会っていない。今回もここで時間を潰して絢に会う気はなかった。


「意外と時間が経たないな……」


 もうそろそろ時間になるのかと時計を見ると、予想外に時間が過ぎていないので思わず呟いてしまった。


「なにかあったのか?」


 呟きに反応した皓太が再び話しかけてきた。今度は真面目な顔つきをしていた。


「……えっ、いや、別に、ないことはない……」


 いきなりで焦った俺は訳の分からない返事をしてしまい、皓太が困った顔をしている。


「……笹野と山内のことか?」


 さっきの冗談のようなノリではく、今度は真面目な雰囲気で問いかけてきた。


「……あぁ。正月にいろいろとあってな……気持ちに自信がないんだよ」

「なるほどね……簡単言えば、お前は浮気をしているということか?」


 俺があまりに暗い顔をするのでわざとなのか皓太は茶化すような言い方をする。でも皓太の言う通りなので俺は反論が出来ずに黙ってしまった。沈黙が続いて周囲の試合の歓声がやたら耳についた。


「……う〜ん、でも宮瀬達の場合は違うな……わざわざ山内が浮気のチャンスを与えてるような気さえするからな、でも笹野限定なんだろう」

「あぁ、そうだ……他の女の子だとちゃんと嫉妬したり、怒ったりするんだ……まぁ、当たり前だよな」

「ははは、そうだな……やっぱり山内でもちゃんと嫉妬したりするんだな」


 普段はクールなイメージがあるので美影のことをよく知らない他人はそう見えるらしい。以前皓太は直接美影に確認していたが……


「……皓太、後で叱られるぞ……美影のカンは鋭いからな」

「怖いこと言うな……まぁ、それは置いといてやっぱり難しいな、宮瀬達は変わってるから……第三者の俺はなんとも言えない。宮瀬達三人で解決するしかない、後は山内と笹野のことを聞いてみることだな」


 皓太に変わっていると断言されてしまうが妙に納得するしかなかった。俺が難しい顔をして悩んで再び黙ってしまう。


「さて、そろそろ時間になるぞ。これからは試合に集中だ!」

「……そうだな」


 気持ちを切り替えて試合に臨もうと大きく頷いた。メンタルは以前より強くなってきたと思っている。練習で厳しく鍛えてきたので大丈夫なはずだ。試合前の練習でも問題なくシュートを決めていたので、普段通り平常心でプレー出来る。そう自分に言い聞かせた。


 試合直前に皓太が俺の所へやって来て、無言のまま上の観客席に指を差している。


「……あっ、なんであんな目立つ場所に座っているんだよ」


 観客席の一番手前ですぐに目につく場所に絢がいるので思わず呟いてしまった。皓太はやれやれといった顔で俺を見ている。美影は知っているのかと探すと、この試合はベンチでスコアをつけるみたいでその準備に追われていたのでまだ知らないようだ。

 もう一度絢のいる観客席を見上げると、絢が俺の視線に気がついたみたいだ。


(……やっぱり怒っているな、あの表情は間違いない)


 珍しくしかめっ面をしている絢だったが、それはそれで可愛かった。


(ダメだな……そんな考えをしていたら)


 顔が緩みかけたが、自分にもう一度言い聞かせて気合を入れ直して試合に入っていった。


(試合に勝って、二人の喜んだ顔を見よう)


 試合が始まってすぐに皓太からの鋭いパスをもらいシュートを決めた。調子は悪くない、精神的にも問題ない、今日はいけると判断した。

 でもさすがに強豪校だけあってこれまでのように試合が進まない。お互い点を取っては取られて、取り返したらまた取られるの繰り返しで点差が無い状況がつづいた。


「かなり調子がいいじゃないか?」

「ん……まぁ、でも意外と冷静な感じで出来ているかな」


 俺に声をかけた皓太がマイボールで自陣から攻め上がっている。今のところチームの最多得点を上げている。チラッと絢がいる所目をやると試合開始前のしかめっ面が嘘のように嬉しそうな顔をしていた。

 ハーフタイムになりベンチに戻る。試合中は冷静にスコアをつけていた美影が笑顔で俺の所に来た。


「今日は絶好調だね!」

「……いいのかな、よく分からないけど」

「うん。かなりいい調子だよ。ただ相手が強いからね、なかなか点差がついてないけど、大丈夫!」


 いつも以上に美影は気持ちが入っているようだ。


「とりあえずは今のところ目標は達成かな?」

「えっ、なに⁉︎ 目標って?」


 俺が何気なく呟いた言葉に美影が不思議そうな顔をして窺っている。まさか聞こえているとは思っていなかったので俺は慌ててしまった。俺の慌て具合を見て美影は気になったみたいでジッと俺の顔を見ていた。

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