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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
高校生編 二年生 冬
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お正月とお泊まり ④

 朝食をとった後、片付けも終わり三人でひと段落していた。昨日の夜から続いていた騒動も落ち着いて、まったりとした時間を過ごしていた。


「……今日一日どうしようか?」


 美影が外を眺めながら寂しそうな口調で呟くように俺と絢に問いかけてきた。今朝から雨がパラパラとしている。本格的に降っている訳ではないが、どんよりとした空が続いている。一応予報では午後からは回復傾向のようだ。


「そうだね……」


 絢も困ったような返事しか出来ない。同じように俺も悩んでいたが、年末に美影達が来るからと片付けをしていた時に出てきた物を思い出した。


「あっ⁉︎ ちょっと待っててよ!」


 俺が威勢よく返事をしたので、美影と絢が少し呆気にとられたような顔をしいた。俺は急いで部屋に戻り、こんな時の為にと纏めて置いていた小、中学校の卒アルや昔のスナップ写真を持ってリビングに戻った。美影と絢は始めは驚いていたが、楽しそうな表情になった。特に美影は中学の卒アルと修学旅行などの行事で撮った写真を熱心に眺めていた。


「……中学の卒アルは絢の家にもあっただろう」


 美影に問いかけると首を左右に振っている。


「ううん、見てないよ。今日が初めて、なかなか見る機会がなかったのよ」


 美影の返事を聞いて絢が笑みを浮かべて笑っている。


「うん。喋ることがいっぱいでこれまで写真を見る機会はなかったわね」

「へぇ……そうなんだ……」


 俺は相変わらず仲が良いんだなと、偶々目の前にあった小学校の頃の幼い三人で撮った写真を眺めていた。


(美影も絢も幼いけどやっぱり面影があるな……)


 美影と絢の顔を見て思わず笑みが溢れそうになった。美影は卒アルを見ながら絢と楽しそうに会話をしている。次に手にしたのは修学旅行の写真だった。修学旅行の写真が次々に出てくる。


(あれ⁉︎ 意外と絢と写っている写真が多いな……まぁ、仕方ないよなあの時は……)


 これまで意識していなかったが、かなりの枚数で一緒に絢と写っていたので驚いた。美影が驚いていた俺を見て手にしていた写真に興味を示す。隠す訳にもいかず、美影に修学旅行の写真を手渡すと数枚見て拗ねたような声で呟いた。


「……うらやましいな、あーちゃん」

「えっ、な、なに?」


 突然発した美影の声に反応した絢が不思議そうに窺っている。俺には美影の拗ねた理由がなんとなく分かった。


「……だって、いっぱいあるよ……一緒に撮っている写真が」

「そ、そうかな……」


 本気まではいかないが美影は不満そうな顔をしている。絢はそんな顔をした絢に少し焦っている。


「あっ、それ……絢と同じ班で俺が写真を撮る係りだったから自然と一緒に写っているが多くなったんだよ」

「……そうだったの、ごめんね、あーちゃん。じゃあ……来月の修学旅行はいっぱい写真を撮ってよ、約束だよ!」


 美影に変な勘繰りをされないように俺が理由を説明すると、美影は納得したようで笑顔になり逆にお願いをしてきた。拗ねた美影の顔は可愛かったので、俺は照れた感じで頷いていた。

 二月の初めに修学旅行がある。初日と最終日が観光で大半の日程がスキーになっている。俺にお願いをして、何かを思い出したようで美影は絢に確認をする。


「そうそう、あーちゃんの修学旅行の詳しい日程分かった? 会えそうかな?」

「うん、大丈夫そうだよ。私が初日でみーちゃん達は三日目になるのかな?」

「本当⁉︎」


 嬉しそうな顔の美影と絢の会話を聞きながら俺は全く意味が分からなかった。


「……どういうこと?」


 絢が説明するには、絢の学校も修学旅行が同じようなコースで日程がズレているようだ。。俺達の学校と絢の学校の観光する場所の日程が被っていて、俺達が三日目の夜で絢は初日で時間は二時間くらいだ。


「……そんなこと出来るのか?」


 俺が半信半疑な口調で話すと、美影は自信のある顔をしている。


「うん。大丈夫だよ!」


 なにか根拠でもあるのか、美影は自信満々に大きく頷いて、絢も笑顔で小さく頷いていた。


「絢もそれで良かったのか? 学校の友達とか?」

「うん。まだ初日だし、友達とは後で予定があるし、それになんか三人で旅行に来た雰囲気になれそうじゃない‼︎」


 一応は心配して聞いてみたが、俺の思っていた以上に絢がはしゃいだ感じで話すので少し驚いていた。その後も美影と絢は暫く修学旅行旅行の話題で盛り上がっていた。


(なにも問題が起きなかったらいいけどな……)


 でも今、先の事を心配しても仕方ないので、とりあえずこれからどうするか考えることにした。

 修学旅行の話題と写真も一通り見終わりお昼前になった。俺としてはもう少し古い写真に食いついて欲しかったがいまいち反応がなく、過去の情報は引き出せなかった。残念ながら美影の三人にこだわる理由は分からずじまいだった。

 ネタも尽きてしまい手持ち無沙汰になる。外を見ると雨は上がっていたが、まだ雨雲は残っているみたいだ。


「雨が上がっているみたいだから、買い物にでも行かない?」

「う〜ん、どうしようかな……」


 俺の問いかけに美影と絢は顔を見合わせて少し悩んでいる。二人の微妙な反応を見て、誘うのを失敗したかなと残念な顔をした。二人はそんな表情の俺を見て、微笑みながら小さく頷いた。


「……もう分かったわ。ちょっとだけ時間を頂戴……準備するからね」


 美影はそう言って絢と立ち上がり、リビングを出て出かける準備を始めた。俺も準備をしようと一度部屋に戻った。

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