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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
高校生編 二年生 冬
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お正月とお泊まり ①

 ゆっくりと寝ているつもりだったが、泊まっている美影と絢の様子が気になり早くに目が覚めてしまった。部屋から出ると一階のキッチンから物音がして声が聞こえてくる。


(美影と絢はもう起きているのか?)


 静かに階段を降りて、そっと扉を開けてキッチンを覗いてみるとパジャマ姿だったが二人がエプロンをして朝食の準備をしていた。


(……かわいいな、二人とも)


 なんともいえない幸福感を感じていると、絢が俺の存在に気が付いた。


「あっ、起きてきたんだ……みーちゃんと起こそうかなって話してたのよ」


 絢が楽しそうに言うと美影はうんうんと頷きながら小さく笑っている。


「ははは、……残念だったな。でも二人とも昨日はあんなに遅かったのに、あんまり寝られなったのか?」


 二人に起こしてもらえなかったのは半分残念で、半分はほっとしていた。寝起きに美影と絢がいるといろいろと大変なことがある……それは置いておいて、本当に二人が寝不足なのはやはり困ってしまう。


「ううん、大丈夫だよ。昨日の夕方にちょっと居眠りしていたし、第一、よしくんより遅くは起きれないよね」


 今度は美影が笑みを浮かべて絢に同意を求めるように話して、当たり前のように絢も大きく頷いていた。


「……そうだ、美影、絢、あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」


 昨晩、参拝に行った時には年が明けていたのだが、新年の挨拶をしていないことに気が付いた。改まって言うのも少し恥ずかしいが美影と絢しかいないのだからも恥ずかしさは問題ない。美影と絢は面食らった表情をしていたが、二人が顔を合わせて頷いて息を合わせて挨拶をする。


「「あけましておめでとう。今年もよろしくね。だいすきなよしくん」」


 二人の甘い言葉を聞いて俺は顔が熱くなる。まともに二人の顔を見ることが出来ない……美影と絢はお互い顔をほんのり赤くして楽しそうに笑っている。


「……なんだよ、それ、俺を殺しにきているのか?」


 さすがに新年早々にこのまま一方的に攻めらるのはいけないと思ったが有効な策が出てこない。今年もいろいろとやられてしまうような予感がした。


「次の年もこうやって三人でいることが出来たらいいね」

「まだ年が明けたばかりだよ。もう、あーちゃんは気が早いわね」


 絢の顔を見ながら美影が楽しそうに笑っている。俺も口に出さなかったけど絢と同じ気持ちだった。


「じゃあ、そろそろ食べる準備をしよう」


 俺がそう言うと美影と絢は頷いて、手際良く準備を始めた。あっという間に準備が整い、食べ始める。美影が作ったお雑煮と俺の母親が作った簡単なおせちと美影と絢がそれぞれ持ち寄ったおせちがテーブルの上に並んでいる。


「……すごい豪華だな」


 俺が食べながらぽつりと呟いた。これなら今日の晩飯はいらないな、明日も大丈夫そうだ。三日の昼過ぎに両親達は帰ってくる。美影と絢は夕方には帰るだろうから、帰ってくるまでの間はこれで過ごせそうな気がした。


「……そうね。あーちゃん今晩はどうしようかな」

「……うん、残りそうだね」


 二人が何か相談をし始めて、話の内容から多分俺の家から帰った後のことだろうなと軽く聞き流していた。

 なんだかんだ遅めの朝食になり、片付けなどして落ち着いた頃には出掛ける時間になっていた。昨日、三人で相談して決めた市内の大きな神社に参拝することになっている。テレビでよく中継されている神社なので、人出の多さには覚悟している。


「準備できたか?」


 声をかけると美影と絢が声を揃えて返事が帰ってきた。


「「もうすぐだから、玄関で待っててよ」」


 暫く玄関で待っていると着替えた二人がやって来た。


(……やっぱりかわいいな、二人とも)


 まじまじと見ると恥ずかしいので、照れを隠すように素っ気なく玄関から出ようとすると美影が拗ねたような声で指摘する。


「なにか言うことないの? ねぇ、あーちゃん」


 絢に同意を求めて、絢も頷き拗ねた顔をして俺をじっと見ている。これはちゃんと答えないといけないみたいだ。

 美影はいつものようにスタイリッシュな感じで落ち着いた雰囲気で、絢はふわっとした感じの可愛い服装だ。二人ともイメージ通りで似合っている。


「美影も絢もすごく綺麗で可愛いです」


 簡単なようで改めて面と向かって言うのは抵抗があってやはり恥ずかしい。二人とも俺が照れている表情が見れて満足したみたいで笑顔になっている。


「さぁ、行こう!」


 照れを隠すように俺はすぐに前を向いて玄関を出た。


 電車とバスを乗り継ぎ神社に到着したが予想通り、予想通り人出は多かった。参拝するだけで一時間以上かかってしまい、帰りの電車も混雑していた。さすがに三人とも疲れ気味だった。

 電車から降りて駅前のショッピングモールにいる。ここからバスに乗り換えて家に帰ることになる。


「やっぱりすごい人だったね」

「うん、そうだね」


 絢と美影が疲れた表情をして話している。俺は頷いて聞いているだけでもうあまり体力はない。何故なら、人出が多かったのでずっと美影と絢と密接したような状況が続いていた。最初の頃は緊張してドキドキして嬉しかった。

 しかしだんだんと時間が長くなるにつれて緊張も解けてきたが、常に美影と絢に挟まれた状態だといろいろな意味で疲れてしまった。


(体力的な疲労よりも精神的な疲労が大きくな……贅沢な悩みのような感じがするけど)


 頭の中で妄想していると、不意に思い出した。


「ちょっとここで買い物していいかな?」


 今晩以降のおやつと軽く朝食の代わりになる物を買おうとした。


「うん。でもちょうどよかった……あーちゃんここで買い物しようか」


 美影も思い出したように確認をして絢も頷いている。この時は帰った後に美影か絢のどちらかの家に行くのかと思っていたが、若干時間も遅いような気がしていた。そのことには触れずに、レジの所の所で集まることを確認して美影達と分かれて買い物をした。

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