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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
中学生編 二年生
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クリスマスの買出しと後輩 ①

 朝イチからみっちり三時間の練習で、顧問の先生もいた為に手を抜く事も途中で抜けて休む事も出来ず、さすがに疲労困憊だ。時間は十一時を過ぎたところで、片付けが終わり部室に戻ろうとしていた。片付けが終わる間際に田渕には「ちゃんと行くから安心しろ」と伝えていた。

 たまたま部室に戻る時に枡田に出会う。女子バスも同じ時間帯での練習だった。


「よう、お疲れさん!」

「あっ、先輩お疲れ様です! 今日の練習は疲れましたか?」

「おう、さすがに疲れたよ……でもまぁ、これくらい大丈夫かな、ははは……」


 多少強がりの発言をしたが本当は早く座り込みたいぐらいだ。でも枡田は何故か安心した顔をしている。


「そうですか、良かった……じゃまた後で」

「あぁ、またな」


 そう言って別れたのだが、枡田の最後の言葉に違和感があった。


(何で『後で』なんだ? なんか勘違いじゃないのか、それとも言い間違い?)


 着替えながら考えてみたが答えは出なかった。とりあえず一度家に帰ってから昼飯食べてから出掛けようかなと予定を決めた。

 待ち合わせ時間の五分前にAモールへ到着して待ち合わせ場所を目指す。


「確か正面入口だったよなぁ……」


 独り言を言って早足に歩くと田渕の姿が目に入ってきた。


「悪いなあ、ギリギリになって」

「はぁ、良かった、ちゃんと来てくれた……ありがとうございます」

「ちゃんと行くて言ったじゃん、それじゃ行こうか」


 俺が笑いながら答えてそのままモールの入口へ向かおうとしたが、田渕は何故か手を出して待ったの合図する。


「ちょっと待て下さい! 実はもう一人来るんですよ……あっちょうど来たみたいです」


 ほっとした顔で田渕が俺が来た方向に目をやるので、俺も振り返りその方向を眺めてみる。少し離れた場所にこの辺りでは見たことがない、いわゆる美少女といった雰囲気の子が俺達に気が付き近づいて来ている。


「誰だよ、俺の知っている子か?」

「そうですね、先輩もよく知っている子ですよ」


 軽く笑って田渕は答える。俺の頭の中をフル回転しても誰なのか分からなかったが、やっと手間までやって来て女の子の正体が分かった。


「こんにちわ、宮瀬先輩!」

「あぁーー、ま、枡田⁉︎ 本当にーー」


 多分、俺の顔はもの凄く呆け面しているだろ……全く状況が飲み込めない……いったい何がおきたのか……


「そうですよ〜、もう何でそんなに驚くんですか? 何か失礼じゃないですか……」


 膨れ面をして拗ねたような表情をしたが、枡田はすぐに笑顔になる。俺は少し落ち着き頭の中を整理している。


「これまで制服姿か、バスケの時しか会ったことがないからなぁ……でもここまで印象が違う子は初めてだよ、服装と髪型だけでも全然違うよ」

「ありがとう、先輩」


 枡田は満面の笑みだが、あまりに予想外の可愛いさで思わず照れてしまった。


(確かに元々キレイな顔をしてたよなぁ)


 思い返していたが、田渕はもちろん知っていたのだろう、クスクス笑っていた。


「さて、三人揃ったし行きましょうか!」

「そうだな、本来の目的を忘れるところだったよ」


 やっと動揺が収まり歩き始めた。予め田渕は店を調べていたようで行くところは決まっているようだ。

 三人が並んで歩いているが、やはり廻りの目が枡田に集まる。それだけ美少女ということなのだろう、こっちが恐縮してしまいそうになる。予想外の枡田の登場で肝心なことを聞いていなかった事に気が付いた。


「今更なんだけど、どうして枡田がここに来たの?」

「えーー、来たらいけなかったんですか」


 俺の質問に枡田が不満そうに答えるので、田渕が落ち着いて説明をしてくる。


「実は恵里が僕の彼女の親友なんですよ、それで彼女にあげるプレゼントがどんな風なのがいいのか、好みとか聞いていたんです」

「ほぉ、それは親友に聞けば間違いはないなぁ……でなんで枡田が付いて来たんだ?」

「宮瀬先輩と買いに行くと言ったら、恵里も行くって聞かなくて、それと男だけだと大変だからとか言って丸め込まれて、ついて来ることになったんですよ」


 俺が枡田に視線をやると誤魔化すよう視線を逸らす。


「まあ、いいけど……」


 俺が呆れたように呟いたが、この目立つ状況は予定外で既に疲れ気味だ。

 そんな状況で最初の店に着いたが、さすがにクリスマス前ということもあり狭い店内にたくさんの人がいる。先程の話では予め相談していると言っていたのでおおまかなイメージは決まっているのだろうと二人について行く。

 目的の商品の所で何か相談しながら二人で選んでいて、それを後ろから俺が見守るといった状況だ。


(これって俺は必要なのか?)


 二人にツッコミを入れようとしたが、無駄な気がして黙っておくことにした。どうやらプレゼントはネックレスのようで、金額的にはたいした額ではないが、中学生としてはそこそこの値段だ。


「先輩、これって、どんなですかね?」


 気をつかって田渕が俺に見せに来るが、正直良く分からないので曖昧な返事をするしかない。


「そんなもんじゃないか……」


 田渕の後ろから枡田が不満そうな顔で割り込んできた。


「えーー、なんかちょっとね……」


 そもそも田渕の彼女がどんな顔でどんな雰囲気の子か全く分からない状況で聞かれても困るのだが、田渕の彼女のプレゼントなんだから枡田がそこまで言わなくてもいいのではと様子を見ていた。


「次のお店に行こう、私のお気に入りの店があるから」


 突然、店を出ようと枡田が移動し始める。こうなると誰の為なのか分からなくなってきたが、俺は何も言わずについて行く事にした。

 田渕の表情は不満そうだが、仕方なさそうに枡田の後をついて行った。


「どうなってるんだよ、さっきのじゃダメだったのか?」


 枡田の後ろ姿を見ながら小声で田渕に話しかける。


「どうも気に入らないみたいで、恵里が『それじゃあの子にはね』って言うですよ、自分のじゃないのに……」

「そうか、じゃあ仕方ないな、とりあえず次の店までは付き合うからそこで決めてくれよ」

「そうですね分かりました、努力します!」


 頼むからしっかりしてくれよとついて行くと目的の店に着いた。

 前の店の品揃えより少し大人びた感じの商品が多い印象がする。もちろんここも人が多いので店の外で待つことにする。

 この場所から二人がアクセサリーを探している姿が見える。


 (枡田の髪ってあんなに長かったんだ……)


 枡田の後姿を見て分かった。普段学校では結んでいて髪の長さが気にならなかったのだ。タイミングよく目の前にアクセサリーのコーナーがある。


(この前のお礼もしたいからどれか買ってやるか)


 まだ田渕達はこっちに来る気配はないので、その間にいくつか見比べてあまり派手じゃない髪飾りとシュシュを選んで購入した。

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