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へタレ野郎とバスケットボール  作者: 束子
高校生編 二年生 夏
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球技大会と夏休み ①

 週が明けて二日間は球技大会だ。今回の競技は男女共にバレーボールで去年と同じだ。前回は一年大会前で体調も万全ではなかったのであまりムキになって参加していなかった。

 今年は何故かクラス全体がやる気になっているので、手抜きすること無く本気でやらないといけない雰囲気なのだ。

 バレー部員がいない代わりに同じ室内球技という理由でバスケ部の俺と皓太はクラスメイトからかなり期待されていた。後は野球部と陸上部の体育会系の奴が主力になっている。


「何か変な緊張感があるな……」

「だろう……何だこのギャラリーの数は⁉︎」


 クラスの女子が周り埋めているのを見渡しため息を吐く皓太の顔を見て俺はぼやいた。

 一年生の時はこんな事はなくて数人の女子が見ていただけだったような気がした。


「担任が余計な事を言うからだよ」


 昨日のホームルームで優勝したら担任の教科の夏休みの課題を減らそうと発言したのが原因なのだ。

 幸いにも最初の試合はあまり体育会系の男子がいないクラスだったが油断は出来ない。しかし俺達のクラスもバレーの経験者がいないのでかなり不安ではある。でもこの試合に出場しているメンバーはそこそこの運動神経をしている。


「まぁ、何とかなるだろう……」


 そう言って皓太は渋い顔をして笑っていた。実際に試合が始まると、俺の不安をよそに意外と簡単に点が入っていった。

 出場しているメンバーの中では身長が高い俺とジャンプ力の高い皓太にボールが集まる。野球部の誠や陸上部の奴は思ったよりレシーブが上手くて相手のボールを拾ってはトスをして俺と皓太に回してきた。

 第一セットは俺達のクラスが圧勝した。


「やるじゃないの」

「いや、意外に決まったな」


 志保が美影と一緒に駆け寄ってきて褒めるように話しかけたので、汗を拭きながら機嫌良く返事をした。美影も嬉しそうな顔で、試合中には志保と一緒になってはしゃいでいた。

 この後の第二セットは出場していなかったクラスメイトと入れ替わるので休憩になり、そのままコートの外で志保と美影の隣りに居て試合を見る事にした。


「こうやって一緒に応援する事は今まであまりなかったよね!」


 第二セットが始まり暫くして美影は楽しそうな表情をして話しかけてきた。確かに美影の言う通り、あまりこんなシチュエーションはないので新鮮な感じがした。

 しかし声援の甲斐無くあっさりと交代したチームは負けてしまい再び俺達の出番になった。多少は休めたけどもう少し粘って欲しいものだ。

 美影達に励まされて第三セットの試合が始まった。試合は第一セットと同じような展開になったが、お互いに慣れてきた感もあり気持ちに余裕があった。


「よっしゃ‼︎ これで初戦突破だな」


 思ったよりも完勝だった。試合に出場したクラスメイトとハイタッチをして喜んでいた。試合を見ていたクラスの女子達も喜んでいる。

 皓太ともハイタッチを交わすとリラックスした表情で笑っていた。


「やっぱり勝つのはいいな」

「そうだな、部活の試合のような緊張感はないけど、クラスの女子達に見られてるから違う感じで緊張感があるな、宮瀬はどう?」

「ははは、そりゃあそうだな……あれだけ近い距離から応援されたらな」


 クラスメイトが集まっている所へ移動すると、美影と志保が嬉しそうな顔で待っていた。


「良かったね、まずは一勝だね」

「うん、次は女子達の試合か……」


 これだけ応援して貰ったらやはりきちんとお返しの応援をしないといけない。次の試合までは時間があるし十分応援しても余裕がある。美影に試合のあるコートを確認して少し休憩してから応援に行く事にした。

 クラスメイト数人とグラウンドの隅に移動して休んでいたら、あまり時間ぎ経たないうちに皓太が立ち上がり試合をしているグラウンドへ再び向かおうとしていた。


「あれ、どうしたんだ、まだ女子の試合まで時間があるぞ」

「いや……志織のクラスが試合をしているみたいだからちょっと覗いてくるよ」

「そうか、さっきの試合にも少し顔出していたからな」


 皓太の彼女はクラスが違うのであまり目立って応援していなかったが、しっかりと皓太に声援を送っていた。


「あぁ、見に行ってないと後から叱られからな……」

「そうなのか……」


 俺が意外そうな顔をすると皓太は苦笑いしながら頷いて小走りで向かっていった。高校に入学してから皓太の彼女に会ったのであまり詳しい性格は知らないのだ。

 でも皓太をもう一度バスケに復帰させたぐらいのなのですごくいい彼女のはずだ。でもどうするんだろう、俺達のクラスとの試合の時は……とひとごとのような考えていた。

 暫くして時間になったので、美影達の試合を見に行く事にした。


「あっ、やっと来た……」


 俺が来たのに気が付いた志保が少しムッとした顔をして出迎えて、隣りに美影が志保の様子を見ながらいつもの事のように微笑んでいた。


「そんな顔しなくてもちゃんと始まる前に来てるだろう」

「だって、もう始まる寸前でしょう、あれだけさっき応援してあげたんだから今度はしっかりと声援を送りなさいよ」


 周りにいたクラスの女子達がクスッと笑いながら頷いている。俺と一緒に来ていたクラス男子達は若干押され気味だった。

 負けず嫌いの志保なので仕方ないと思っていたが、あまり志保の性格を知らないクラスの男子達は少し引いていた。ここで雰囲気を悪くしてはいけないと、俺は引いていた男子達に一言二言を言って気を収めてもらい気持ち良く応援してもらうようにした。


「大変だな……」


 背後から慰めるような口調で皓太が立っていた。


「いつ戻って来たんだよ、もういいのか?」

「もう終わったから大丈夫だ。お前もなかなかだな……」


 大きなため息を吐くと皓太は俺の顔を見て苦笑いをしていた。


「志保にはいろいろと世話になっているからな、これぐらいしてやらないとな」


 まだ出番のない美影がいつの間にか俺の横に来て頷きながら笑顔で話を聞いてた。そんな美影を見て皓太は何故か感心した顔をしていた。

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