合宿の始まり
~登場人物ざっくり紹介~
「……という訳で、ソーレル術医生化学研究施設の改修工事の間、半年ほどですが医学生の皆様のお身柄をお預かり致します。不祥事や事故のないよう、お気をつけ下さいませ」
侍女頭のアプスはそう言うと、息を継いだ。
「特に、裏庭を通る時は……移動の際は出来る限り端の方をすみやかにお通り下さい。日があるうちはなるべく出入りを避けて下さい」
アプスは、集まっている医学生逹を見回した。医学生は彼女の説明が腑に落ちないらしく、ざわついている。彼等を納得させるにはどうしたらよいのだろう……アプスは白髪の目立ち始めた髪に手をやった。
『裏庭にはよくお館様の姪御様がおいでですので、危険です』
『姪御様はしばしばお戯れに人や生き物を殺められます』
……如何に事実だけを述べても、貴族である彼女逹への不敬罪になり兼ねない。ましてや『お館様も姪御様も少しおかしい』なんて口にする訳には絶対にいかない。例え、使用人の誰もが常々そう思っていたとしても……。
その時、医学生の中から声が上がった。
「貴族さまのお屋敷では様々なルールがあると伺っておりますが、ここではそういうルールなのですか」
黒い髪の少年がアプスを見つめていた。
「え、ええ、そうです」
アプスは半ば救われた思いで頷いた。
「ならば従うのが筋と言うものですね」
「そうです。皆様もお従い下さいませ。お願い致します」
少年の言葉に救われて、アプスは再び強く頷いた。