1章-2
友達を作ると言っても、まずクラスメイトに話しかけてみなければならない。試しに右隣りの席の女の子に話しかけてみるか。
自分の席に着いた俺は、隣りの席の女の子を横目で見た。銀髪のポニーテールに雪のように白い肌、つり目だが青い瞳は心を安らかにさせてくれるように透き通っており、桜の唇が愛らしい。髪や目の色からおそらく異国の人かと思われるが、それを差し置いても目を引く美人であった。
「右隣りの席の方、すごく美しい方ですねぇ。憧れます……」
ちゅらさんが小声で呟く。
「なら、早速話しかけてみるか」
「え? ですが……いきなり話しかけても良いのですか?」
ちゅらさんが遠慮がちに言う。
「せっかく隣りの席になったんだ。話しかけてみない事には友達にもなれないし、どんな人なのかも分からない。話してみて嫌われたらその時考えたら良いさ」
俺は意を決して、隣りの銀髪の女の子に声をかけた。
「初めまして。俺、上山祥一郎。君の名前は?」
特に驚いた様子もなく、俺の目をまじまじと見つめ返す素振りは美しさの中に気品が見てとれた。そして、
「私は菅原マーガレットよ」
と返事をしてくれた。凛とした声と日本語で返してくれたことに少し驚いた。
「良かった。日本語を話せるんだね。てっきり外国の人なのかなと思っていたよ」
「私ハーフなのよね。お父さんが日本人で、お母さんがアメリカ人なの。生まれてずっと日本で暮らしているから、私は自分のことを生粋の日本人だと思っているけどね」
両手を肩の高さくらいにあげておどけた様子を見せた。
「すみません。安易に決めつけちゃたかな? ところで、菅原さんの使い魔ってどんな動物なの?」
「私の使い魔は雌の黒猫よ。名前は、ノンシュガー。上山君は?」
「俺の使い魔は雌のタランチュラ。名前はちゅらさんだ」
「あら? また変わった使い魔のようね。どんな子なの?」
「少し臆病なところがあるけれど、優しい女の子だよ。今友達が欲しいって言っているから、たまにちゅらさんの話相手になって欲しいんだ」
「は、はい! ただいまご紹介にあずかりました、ちゅらです。たまにお話相手になってもらってもよろしいでしょうか?」
唐突な振りに驚きつつも、ちゅらさんはしっかりと自分の思いを伝えることができた。あとは返事次第だが……
「あらぁ、可愛らしい子ね! いつでも話相手になってあげるわよ!」
「本当ですか! 嬉しいです!」
ちゅらさんは俺の肩の上を飛び跳ねている。本当に嬉しいのだろう。菅原さんも嬉しそうだ。
「あれ? そういえば、菅原さんの使い魔は今どこにいるの?」
「ちょっと散歩に行ってくるってどこかに行っちゃた。仲良くしている上山君達が羨ましいわ」
少し俯き加減で目を細めながら菅原さんは言った。
「そのうち仲良くなれるさ」
「ねぇ」
急に菅原さんが改まって話しかけた。
「上山君もちゅらさんもお友達になってくれるかしら?」
「あぁ、いいとも」
「もちろんです!」
こうして俺とちゅらさんは、菅原さんと友達になることができた。