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コーヒーを買ったのに、りんごジュースが出てきて愕然としました。
…それは、不思議な文字だった。
まるで魔法が働いているようだった。
紺色のきらきらした砂が、小さく震えながら、文字を形作っていた。
今にも元の砂に戻ってしまいそう。
「この文字……日本語でも英語でもない…」
でもどうしてだろう。まるで、文字が私に訴えているみたいに、何を書いてあるのか分かる。
「…歓迎する。
新たなる此の森の住人よ、我が城へ来たれ…?
これ、どういうことなのかな。…我が城?」
そして、文字を読み終わるや否や、砂は別の形状へと変わる。
蝋燭の明かりは摘み取られ、暗くなった部屋に、魔法陣のようなものが現れた。
「…わあぁ……!」
それは白く輝いて、あるものを映し出す。東西南北を示した文字、道と思われる線、森林地帯…そして、
「これがお城…?」
私はとある一点を指差して、呟いた。
と、そのとき、魔法陣は端からどんどん消え始めた。
「わっ、えぇっ待って、どうしよう!」
私は必死に地図に目を凝らし、頭に入れようとした。ところが、間もなく跡形も無くなってしまった。
空中へ浮かび上がった砂は、七色に光りながら、窓の外へと消えてしまった。
その時、女の子の笑い声が聞こえたのは気のせい…?
残された私は、頭の中に残っている地図を、必死にペンを書き殴り、羊皮紙にまとめた。
細部は抜けてしまっているけど、大まかには書くことができた。
「……うーんと。てことは、このドリア食べてしまっていいのかな…?」
誰に聞けばいいのか分からない質問を、一人つぶやいてみる。多分、いいんだと思う。




