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機械少女と獣のロンド  作者: Noyory
2章 〜去来/ドギィ・ワルツ〜
5/24

2-1 deadmans waltz

 






―1―




 

 約一ヶ月前。

 都市が外部との繋がりを絶った直後のこと。



 都市の北側から入ったJUC特務師団ケルビムの本隊は、雪崩のような勢いで南下していた。


 静かなる轟音を上げる約3万名の兵士の行軍。それが瞬く間に拡がる様は、まるで都市全体を埋め尽くすかのようだった。

 目的は自らをSOSと名乗るテロ組織、その第二波攻撃の抑止と、同組織の行ったオカルトじみた誇大広告(プロパガンダ)で恐慌状態に陥った市民の保護だった。

 ケルビムはアルファベットと数字で分けられた都市の各区域毎に、一から三個の小隊を配置していった。小隊はそのまま地区の守備に入り、本隊は進軍を続ける。そうして一地区ずつ塗り潰すような展開作戦は、現在都市の中央半ばまで完了していた。

 断絶の主要因である多箇所での同時爆破工作での負傷者も同時進行で救助されていく。幸いその数は少数で、直接爆破に巻き込まれた死者は出ていない。これほどの規模の爆破テロで死者がいないことは奇跡的とも言えた。


 しかし偶然などではない。それはテロリスト側と都市管理者、そして特務師団が手を取り合った結果の計算された奇跡だ。それらが実は根元を同じくする存在であることを知る人間は、関係者以外ではごくわずかだった。






 そのごくわずかな人間である背原真琴(ハイバラ・マコト)葵創祐(アオイ・ソウスケ)三城威織ミキ・イオリ橘直陰タチバナ・ナオカゲの4人は、ケルビムの包囲から遠ざかるように都市の南部エリアである遊南ユウナミ区に入っていた。


 彼らは仮の隠れ家に寄った時に車を乗り換えた。ボディの凹みが目立つことと、車の所有者が橘であることが理由である。彼らはここに来るまでに、可能な限り自分達の痕跡を消していた。今4人が乗っているグレーのセダンは盗難車である。

 上座市では一般的であるQPDA端末をキーとするロック機構は、本人のQPDA認証以外では操作不可能と謳われている。しかしそれを橘はいとも簡単に解錠して見せた。実質はハッカーなどの電子技術の熟練者にとっては、普通のキーよりも扱いやすい部類に入るようだ。


 中央区から遊南まで、時間にして40分程の道乗りは何事も無く進んだ。もしかするとSOSの誰か、特に神出鬼没の九龍隼人(クリュウ・ハヤト)という男の追跡を警戒していたが、どうやら杞憂のようだった。


「やっぱりこいつのおかげかな」

 葵は自らの耳を飾るピアスを指で弾きながら言った。他の3人も同様に左耳に装着している。橘から配られたこのピアスは、以前から真琴が使用していた物と同様だ。簡単にいえば極めて強く、限定的な範囲に作用する絶縁体で、顕現能力(インカーネイト)の制御装置の役目を果たすものだ。

「前からマコちゃんが付けてたのは知ってるけどさ。このピアス本当に効果あるんだな。マジで全く使えねえ」

 後部座席で手を中空で閉じたり開いたりしている威織が言った。顕現能力を発現しようとしているのだろう。

 葵も同感だった。失ったわけでないのは感覚で分かるが、それを形として顕せない、なんとももどかしい感覚だった。


「都市のモニタもそうだが、こいつは主に九龍対策だ。あいつの顕現能力(インカーネイト)は、おそらく影を媒介にした探知機(サーチング)とでも言うべき機能もあると思われる」

 多面的かつ深淵を視る目を持つ橘の分析口調。

「サーチング?」

「さっきの気味の悪い仮面の集団を見たか?あれがその根拠をさらに強めた。九龍は自分のことを“影の化身”と称していたが、その答えがあの現象だ」

「うじゃうじゃと湧いてきたガイ・フォークスの仮面か。確かにあんたそいつを九龍って呼んでたな」

「そんな名前の仮面かあれは。まあそういうことだ。あの時影から現れた仮面の集団、その全てが九龍隼人の分身であり…本体でもあるんだろうな。おそらく都市の人口全てをあいつは把握してる。そして電子を媒介に特定の人間の影から自身を具現化…まあ、見た目的には瞬間移動のようなこともできるってことだ」


 葵と真琴はその仮面の集団を見ていない。それどころか2人の前にその仮面の男は姿を現さなかった。

 葵は九龍隼人本人に会ったことがある。サングラスの奥からこちらを値踏みするような視線が思い出された。


「つまり、あいつも顕現能力者(インカーネイター)なんだな。…でも分身であり本体ってどういう意味だ?」

 橘の煙を吐き出しながらの返答。

「あいつには主体がない。この“眼”で視たから分かる。個人(パーソナル)というものを持っていない。もしかすると奴自身、自分が個体だという認識がないのかもしれない」

「とんだ化物じゃねえか」

「そう考えて間違いじゃない。お前らもあいつには気をつけろ。これから遭遇する可能性が一番高いのがあいつだ」

 そう結んで終えた橘の説明を、真琴は終始聞き流していた。そもそも真琴はまだ九龍と顔を合わせたことすらないから当然ではある。ただ、主体がないという言葉に自分の師である(サカキ)を連想していた。


「ところでこのデザインはナオ兄が考えたのか?」

 葵の質問に橘は途端に渋い顔になった。葵の指は例のピアスの造形をなぞっていた。

「おお、俺も意外だったなあ。こんなとこに気が利く奴じゃないと思ってたもん」と威織も同調する。

「俺がそんなことするか。外注した奴が勝手にその形に加工しただけだ。やけに仕上がりに時間がかかると思ったら、こんなことして遊んでやがった」

 彼らのピアスには、それぞれトランプの(スーツ)があしらわれていた。葵がスペード、威織がクラブ、橘はダイヤ、そして真琴がハートだった。

「なんで僕がハート?」

 助手席で不満げに呟く真琴。

「お前以外にいるか」という橘と葵の声が被った。それを聞いて威織が笑い転げた。横に座る葵にはその動きは酷く迷惑だった。


「いいじゃん、四銃士みたいで。やっぱこういう遊び心が人生大事なんだと思うな」威織は気に入ったようだ。

「四じゃなくて三銃士だろ?」葵の訂正。

「あれ?そんな映画なかったっけ?」

「あるよ。駄作だけど」真琴の訂正。

「人生に遊びが必要なのは同意だ。まあこれから、この街でもっと派手に遊ばせてもらおうじゃないか」

 橘は口元を上げて言いながら、短くなった吸殻を窓から捨てた。マナー違反だが、誰も注意する者はいない。


 車内には緊張感がまるでなかった。街の出入りが封鎖され、その中に巨大な軍隊と影のようなテロリストが共存し、しかもその双方に狙われている者達の振る舞いではなかった。


 だがその立ち位置こそ、彼らが望み、そして手に入れた結果だった。





 外の景色に軍隊は影も形もない。まだこの辺りまで到達はしておらず、都市外辺とも遠いこの区域は、静かなものだった。

 遊南は未だ開発が終わっていない未完成の区域で、既に廃棄されたテーマパークがそのまま残されているくらい手付かずの未開発地区である。もはや動かない観覧車の残骸がそれを無言の内に物語っていた。

 その観覧車を通り過ぎると住宅も少なくなり、更地にしただけで工事が止まってしまった広い平地が広がっている。橘の車はそこに出る少し手前、頑固に立ち退きを拒否する昔からの住人達が住む一画で停まった。


「到着だ」


 橘の声で全員が車から降りた。橘の指し示すそこは真四角のグレーの建造物で、すぐ隣に立つ家の倉庫であると思われた。


「…この倉庫でこれから生活すんの?」

「そうだ」

 威織の不審丸出しの質問に即答して、橘は倉庫の引き戸を開けた。中には何も置かれていない。橘は黒い端末を取り出して何か操作をはじめた。

「下を見てろ」

 次の瞬間、滑らかな音と共に地面がスライドした。そして現れたのは、地下へと降りる階段だった。つまりこの倉庫は、この入口を隠す為だけのカモフラージュのようだ。


「従来、隠れ家ってのはこういうもんだろう?」


 橘は少し得意気に、おどけた調子で言った。






―2―


 




「一応広さとしては充分確保してあるつもりだ。まだ必要な機材の運び込みが終わっていないから、やたら広く見えるかもな」


 4人は地下への階段を降りてすぐの扉を開けたところだった。目の前の空間一面は、外観と同じ落ち着いたグレーカラーで統一されている。

「正直全く準備が間に合ってない。それでも最低限の生活ができるくらいの資材は確保できた。まあ許せ」


「アジト、って感じだな」

 ニヤつきながら葵が感想を漏らした。およそ20平方mほどの空間の中に、等間隔に区切られた部屋が8つあった。中央の通路から枝分かれして部屋が生えているような構造で、突き当たりのスペースには生活家具や冷蔵庫などの電化製品も見えた。

「わりといい趣味じゃん」

 部屋の中を覗いて威織が言った。威織の頭の中では子供の頃に公園で作った秘密基地の記憶が再生されていた。

「いくらくらい掛かったの?ここ」

 妙に現実的な真琴の質問。

「実は一円も払っていない。ここはある資産家の家でな。この地下室は裏金やら機密文書なんかの隠し場所だったらしい。たまに密談とかに使われてた形跡もある。その後不正がばれて当の資産家は行方知れずになり、この家だけがそのまま残った。勿体ないから架空名義に変えて取っておいた…というか放置していた。まさかこんな形で役に立つとは思わなかったけどな」

「へえ。…でもそれ、なんでナオ兄の物になったの?」


「報酬代わりだ。なんせその資産家を破産させたのは、その仕事を受けた俺だからな」

 煙草の煙と共に、橘は平然と答える。


「…今さらだけどさ、ナオ兄って何の仕事してんの?」

 葵の質問。橘が裏で犯罪すれすれの行為をしてるらしいことはなんとなく気付いていたが、はっきりとその仕事について尋ねたことはなかった。この際だから、一から十まで聞いておいた方がよさそうだと思っての質問だった。


「俺は単なる情報屋だ。オプションで探偵の真似事や企業の情報撹乱なんかもやる」

 橘は短くなった煙草を携帯灰皿に捨てると、また1本取り出し、すぐに火を点けた。

「もちろん正規の仕事じゃないぞ。保護観察の身分ではできる仕事なんて限られてるからな。昔からの伝手を利用した結果、こんな体たらくに落ち着いただけだ」

「保護観察?なにやらかしたんだよ」

 イオリの質問に葵は思わず顔を上げ、反射的に橘の顔を見た。


「殺人」

 威織の質問に橘は即答した。その声には特に何の感情も篭っていなかった。

 


「…ふうん。意外だな」

「そうか?…そうかもな」


 付き合いの長い葵と真琴は、もちろんその事を知っていた。橘がその事について、もうずっと昔に自分なりの決着をつけていることも。だからこそ今のような不自由を甘んじて受け入れ、それに納得している事も。


「いい教訓になったよ。人が人を殺すのに一番必要なものは“状況“だと分かった。殺意とか憎悪とか、あるいは復讐とか、そんなものはすべて二の次だ」

 その言葉に威織は眉を顰めた。

「そうかな…普通逆じゃない?」

「その“状況“になれば分かるさ。殺人ってやつは、言ってみれば罠みたいなものなんだってな」

「…まあいいや、難しいことは分かんねえ」

 威織は納得しかねる顔だが、それ以上追求することはなく。部屋の中のベッドに飛び乗った。一番入口側の部屋を自分の部屋に決めたようだ。

 威織は相手の過去の事情などで人の見方を変える性格ではない。その判断基準は刹那的で前しか見ない。橘もそれを分かった上で話したのだろう。


「まあ、とりあえず今日は全員よく休め。これからどうしていくかは明日でいい。有限だが時間はたっぷりある」





 その後適当に部屋を選び、各々が自分の時間を過ごした。と言っても真琴と威織はすぐに寝てしまったが。真琴は身体的な疲労の為、威織は特にすることがなく、何も考えていない為。


 葵は違った。

 目を閉じると、手放したものが脳裏に浮かんでは消えた。普通の生活。仕事や同僚、そしてこの街にはいない両親への申し訳ない気持ち。


 仕事を継がせる気はないと言っていた父親。彼がその理由として挙げた言葉が葵は好きだった。


『自分の趣味で始めた仕事を子供に押し付けることはしない。お前は、本当にやりたいことができた時、それを仕事にすればいい。選択肢は多い方が人生楽しめるものだ』


 そう言いながらも、真琴らを養う為自分が父の元に就職した時は、こっそり母と喜んでいたのを葵は知っていた。自分の前ではそんな素振りを見せることはなかったが。就職してからの父は、常に厳しい経営者として葵と接していた。


(喫茶店も、結構面白かったよな)


 強情を張り、一生の問題を早々に決めようとする息子に苛立ちもあっただろう。しかし真琴と真綾を養うという父の提案に素直に喜べるほど子供ではなかった。


 そう思うだけの原因があったのだ。


 その時2人は、既に償いきれないほどの負担と迷惑を両親に与えていたのだ。これ以上の負担を両親に与えるなど当時の葵には考えられなかったし、真琴のプライドもそれを許さなかった。


 明かりを消した暗い部屋で、橘に貰った煙草を吸った。ドアはなく、壁の仕切りも天井まで届いていないオフィスのような造りの部屋は、薄っぺらなカーテンだけがプライバシーを保護していた。ここに女性が住むことはできないなと、どうでもいい感想が浮かぶ。

 聞こえるのは天井の大きな換気扇と、壁の中から聞こえる電子妨害装置(ジャマー)の音だけ。橘はこの隠れ家(セイフハウス)自体をまるごと都市管理者の目から隠す措置を施したらしい。煙がゆっくりと換気扇に吸い込まれるのが見える。隣の部屋から入り込む橘のPCの明かりで、室内は完全な暗闇ではなかった。


 久しぶりに吸った煙草に心地よい酩酊に似た感覚を味わった。馬鹿で後先を考えず暴れ回っていた、まだ若かった自分も吸っていたことを思い出す。


 まるで老人になったように昔ばかり思い出す自分がおかしくなってきた。声が出ないように笑うのに苦労した。

 なんといっても、これからはその頃よりも派手に暴れようとしているのだ。この滑稽さが笑わずにいられようか。


 色々なことがあった日だった。そして、色んなものが変わった。そしてこれからは自分達で変えていくのだ。


 葵は自分の中で、そうやって区切りをつけた。これまでの自分を埋葬し、そして蘇るために。


 






―3―






 数日間、彼ら4人は地下室で暮らした。


 橘によると、地上ではケルビムが都市全体に展開し、被害のあった施設や道路の修繕に当たっているらしい。

 真琴が橘の部屋を覗くと、そこにはPCのディスプレイとキーボード、机の下にそのハードがずらりと並んでいるのが見えた。そして最近ではあまり見られない置き型の電話が3台も並んでいた。

 橘は1人だけ忙しそうだった。その3台の電話は変わるがわる鳴り続け、橘はそのすべてに応答した。どうやら地上に協力者がいるらしく、その誰かしらから定期的に状況報告が入っているようだ。


「一応この〈眠れる墓地〉(セメタリー)の電波はすべて発信元が分からないようにしてある。ネット回線も同じだ。発信元を探る奴がいれば相当混乱するぞ。なんせ都市内数十箇所を経由し、かつ着信先がランダム化するように仕組んだからな」

 真琴に気付いた橘が、聞いてもいないのに説明をしてきた。何だかこの状況になってから橘はいきいきしているように真琴は感じていた。

〈眠れる墓地〉(セメタリー)って、ここのこと?」

「そう。ぴったりだろ?社会的に死んだも同然の俺達が眠る場所だからな。誰にも邪魔されず、顧みられず、安らかに眠れる墓場だ」

「このままずっとここにいたら、本当にそうなるかも」

「退屈か?」

「もらった本も読み終わったしね」

「なら丁度よかった」


 橘は立ち上がると、すぐ横の部屋のカーテンを開けた。中では葵と威織が修学旅行のようにトランプをしていた。

「持て余してるな」

「そうでもないぞ。ルールを守らないこいつに勝つのは結構難しい」

「俺のズルを尽く見破る創祐さんもなかなか」

 わりと真剣な顔でカードを睨む2人に半ば呆れて、真琴と橘は顔を見合わせる。


「ポーカーかババ抜きか知らんが、続きは帰ってからにしてくれ。地上(うえ)に出るぞ」


「いよいよか?」手を止めて顔を上げる葵。その横で威織がカードを一枚隠した。

「準備ができた。安らかな眠りは俺達にはまだ早いからな。最初の目標の目星もついたしな。実際にこの目で現状を確認しつつ、これからの説明をしようか」


「了解ボス、カードを片付ける。威織、ポケットの中のジョーカーもちゃんと直せよ」


 威織は舌打ちしながらカードを出した。その手札を見て橘が面白そうに呟いた。


「まるで俺達だな」


 そのカードはひとつのデッキではありえないはずの、4枚のジョーカーだった。





 それから間もなくして、4人は久しぶりに地上の空気を吸った。周囲の雰囲気は地下に降りる前と変わらない。軍隊の姿もない。彼等は耳にそれぞれのピアスを装着していた。


「くれぐれも外す時は覚悟しろよ。普段除外されてる分、一度外したら九龍にたちまち探知されると思え」

「分かってるって」

「特にお前に言ってるんだがな、“イオリ”」

 一瞬の間。威織が気味悪そうに答える。

「…急に名前で呼ぶなよ気持ち悪い」

呼称名(コールサイン)代わりだ。真琴の話によると、SOSの中に変装の名人がいるらしい。性別年齢お構いなしの顔なし(フェイスレス)だそうだ。だから対策として俺達の間だけの呼び方を決めといた方がいいと思ってな。“ミキ“の方がいいか?なんならミッキーでもいいぞ」

 面白がるように問い掛ける橘。

「やめてくれ。女みたいだし、マスコットだし、マキと被るし。いいよ“イオリ“で」

 不貞腐れて答えるイオリ。

「俺は“タチバナ“でいい。フルネームは使うなよ。意味が無くなるからな。お前らはどうする?別に名前じゃなくてもいいが、恥ずかしいのはやめてくれよ」

「“マコト”」興味なさげに答えるマコト。

「コールサインっぽいのは、やっぱり“アオイ”だろうな」

 その反応を聞き、煙草に火を点けながら、口元を上げてタチバナが言った。


「よくわかった。俺達の誰ひとりとして満足いくボキャブラリィを持った奴はいない。どれだけ淡白なんだお前ら」


 そう言うと全員で少しだけ笑い合った。マコトでさえも少し表情が緩やかだった。


「全員がこの呼称名(コールサイン)に慣れておけよ。特に今までと変わる奴は注意だ。統一して使わないと全くの無意味になるからな。さっきのイオリのように違う呼ばれ方をした時に違和感を抱くくらいになれ。おっと…都合よく“前線基地“も到着だ」


 タチバナの見る方向を全員が向いた。何も見えないが、それが視界に入る前にそのエンジン音と振動が届いた。気付いた直後にとんでもない速度で住宅地の狭い道路を曲がって、タチバナの言う“前線基地”が姿を現した。


 それは全体を黒と白のモノトーンで統一した、大型のトレーラーだった。


 運転席の男が見える。ごついスポーツサングラスを掛けた、パンクロッカーのような金髪のニヤけた顔。呆気にとられるアオイ達の前に、モンスターのようなトレーラーがけたたましいブレーキ音を上げて止まった。


「ういっすー、橘さん。それにはじめましてぇ皆さん。ご注文の品ぁ、お届けに参りやしたァ」


 間延びした気怠い口調で喋る、全身これピアスと言った感じの若者が降りてくる。


「紹介しとこう。余市(ヨイチ)という売れないスポーツ店の店主にして密輸商人だ。こいつが俺達御用達の仕入れ先(トレーダ)を務めてくれる」

「売れないは余計だよぉ。まー今後ともご贔屓に。大抵のリクエストには応えられると思うから何でも言ってー」

「軽っ。なにこの軽さ…」

「お前が言うか?」

 イオリの発言にアオイが突っ込む。

「とりあえず乗れ。これからの作戦は動きながら説明する」

「ナオに…“タチバナ”、このトラックの名前は?」

 マコトの質問。タチバナは内心で感心した。マコトは何にでも名前を付けていくこの儀式の意味に気付いているようだ。そしてその重要性も。


霊柩車(ハースキャリア)と呼ぼうか。関連付けたほうが記憶しやすいだろ」


 怪物のようなトレーラーを見上げながら、マコトは素直に頷いた。







―4―






「計画は二つある。これを同時に進める」


 ハースキャリアに乗り込んで1時間、タチバナが作戦の概要をようやく語り始めた。

 4人はトレーラーの貨物側にいた。その中は前線基地の言葉通り、あらゆる事態に対応するべく様々な設備が整えられていた。タチバナの使うハイテク機器の詰め込まれたスペース、そしておそらく食糧や物資が入ったボックスが積まれたスペース。アオイがチラリと覗いたその中には大小様々な銃器が取り揃えられていた。違和感は感じない。反抗組織となることを現実的に考えればむしろ自然だとさえ思えた。


 トレーラーは左右後方が開閉可能になっており、荷物や設備は可動式のプレートに載せられている。それは運転席でも貨物側でもパネルで操作可能な仕様になっていた。状況に合わせて、すべての出入り口を有効活用するためのアイデアらしい。

 電子機器の設備は可能な限り配線を使用しないよう配慮され、どうしても必要な配線は壁面や天井に収められ、スペースの邪魔をすることがなかった。そしてワイヤレスの機器の電源確保の為、貨物側の内壁すべてに“光式導線“(ルミナスライン)が引かれていた。

 ユピテルの持ち込んだこの技術は上座市のネット、電子環境を飛躍的に簡素化した。このLEDのような装飾めかした光のラインは、都市のメインサーバである〈ルミナス〉を利用した電力供給媒体である。簡単に言えばネットを介して無線で電力を得られるこのシステムでは、都市内のあらゆる場所で利用されていた。しかしトレーラーに搭載されているものは見たことがない。


 4人がいるのは運転席の近くの居住スペースである。そう広くはないが全員が座れるくらいの空間はあった。そこで簡単な昼食を摂りつつ外の様子を確認し、今まで橘の話すハースキャリアの説明を聞いていたのだ。ハースキャリアの壁面は透過部分が広く作ってあり、外の様子がよく見通せた。


「まずは“装備”を渡す」

 そう言って橘が取り出したのは、人数分の黒い携帯端末と、同じく黒い拳銃だった。

「どちらも違法物品だ。これからは軍隊はもちろん、警察とも極力接触するな」

「ナオに…タチバナが今使ってる端末と同じだな。QPDAと何が違うんだ、これ」

「改造端末だ。俺は“偽装端末“(ミミック)と呼んでる。要は地下墓地(セメタリー)の小型版だ。毎回ランダム化された番号を、この4台だけが捕まえられる仕様だ。今後はこれで連絡を取り合う。無線の専用インカムも渡しておく」

「これ本物?…だよなあ」

 拳銃を握り、その重みを感じたイオリの感想。

「使ったことは?」

「あるわけねえだろ」

 当然だろうと言わんばかりのイオリに対し、

「俺はある」「僕も」

 アオイとマコトは平然とそう答えた。

「…え?なんで?」

 イオリの質問にアオイが答える。

「昔、シュウって男の下で働いてた時期がある。俺もマコトも。その時に銃器一般のものは一通り教え込まれた」

 タチバナの確認にアオイが頷く。

「なにそいつ、頭おかしいんじゃない?」

「その時俺達がやってた事を考えると、確かに必要な知識だったと思うよ」

 イオリの非難に対するアオイの答え。

「そのおかげで危ない目に合わずに済んだこともあった。まあ、危険な事をしていたのは疑いようがないけど」

「そのシュウって何屋さんだよ」

「何でも屋。受けた仕事は善悪や法に関係なく遂行する、裏の社会の始末請負人(スイーパー)だった。僕とアオイの師匠みたいな奴がその事業主」

「聞いただけで危なそうじゃん。え、それいつの話?」

「光災の前からだから、もう5年以上前になるか。実際に手伝っていたのは、光災を間に挟んで…2年と少しかな」

 アオイは言いながらマコトの顔を窺った。外を向いてしまった横顔からは特に何の感情も読み取れない。

 しかし、いまだに顔を背けたくなるくらいの傷は刻まれていることがアオイには分かった。自分にとってもこれ以上当時をなぞるのは苦痛でしかなかった。

「で、この銃も特殊仕様になってるのか?もちろん違法なのは分かってる」強引に話題を切り替え、話の先を促す。

「この銃は特殊素材の金属と樹脂でできた、余市が一から組み上げた特注品だ。指紋が残らない特殊素材で出来ている。くれぐれも言っとくがあくまで護身の為の物だ。むやみやたらに使うな」

「随時種類を増やしていく予定だから期待してていいよお」

 運転席から余市が顔を出して、呑気にそう言った。

「凄いな、銃器工(ガンスミス)までこなすのかよ。一体何者なんだ、余市さんって」

「代々法にそぐわない物を取り扱う商人の家系の末裔で、今の余市は10だか11代目にあたるらしい。元々は親父さんの方と親しかったんだが、残念ながら急逝された。それで突然こいつが跡を継ぐ羽目になったってわけだ。見た目はあんなだが流石の血筋で、腕は確かだ」

「本当はさあ、俺こういうの作ってたかったんだよねえ」

 そう言ってひらひらさせる左手の指はいくつもの銀細工で飾られている。どれもデザインに共通性が見られる造りだった。それを見てふと思ったことをアオイは聞いた。

「もしかしてこのピアスも?」

「そうそう、勝手に彫っちゃった。だってあまりに無味乾燥でさあ」

「変な意匠を凝らす悪い癖があるが、こいつの引き継いだ仕入れルートは使える。手を組むには悪くない相手だ」

「頼れる協力者ってことだな」

「その通り。そしてこいつのような協力関係の者をより多く俺達の側に引き込むのが一つ目の作戦だ」

 橘は膝の上に肘をつき、全員に顔を寄せた。


「仲間作りってことか」アオイも同じように顔を近づける。それに対しタチバナは否定の言葉で答えた。

「仲間じゃない、あくまでも同盟関係に留める。実はすでにいくつか目星をつけてる奴らはいるが、当然のように地下組織や犯罪グループの人間ばかりだ。現在都市のシステムによる不利益を被った奴らで、反抗に乗りそうな奴らとなるとどうしてもそうなる」

「まあ…そうだろうな。だけど俺達だけじゃ手が足りない、というわけか」

「都市ひとつ、おまけに軍隊付きの連中とやり合うんだ。足りるわけがない。万が一いまケルビムとやり合ってみろ、ハエのように叩き潰されてそこで終わりだ」

「なるほど、それで俺達のような反抗集団(レジスタンス)を…」

「そう、増やしていく。これは攻撃と防御を兼ねた作戦だ。そうやって同調する奴等を増やしていき、まるで都市全体が反旗を翻すかのような状況に持って行く」

「同じようなグループと連携することで、同時に相手の焦点をぼかす効果も狙えるってことだね」

 マコトの言葉にタチバナは頷く。

「要は革命軍よろしくゲリラ戦を展開するってことだ。この都市にレジスタンスのネットワークを築き、それを隠れ蓑にして、俺達は俺達の喧嘩をする」

「まるで人を信じてねえな、あんた」

 茶化すように言うイオリに、タチバナは真剣さをもって答える。


「ひとつ言っておく。これからいろんな奴らと手を組み、協力していくことになる。それこそ有象無象の連中と。中にはたちの悪いのや、もしかすると気のいい奴もいるかもしれない。何にせよ組織網の構築に必要な人材は確保していくつもりだ。だが俺はここにいるお前ら以外に、本当に信頼を置くことはないだろう」


 意外な言葉に全員が思わずタチバナを見た。


「どんなに協力者が増えようが、この4人の独立性は維持する。それがゲームを長く続ける秘訣であり、俺達が生き残るには最善だと思う」


 タチバナらしい回りくどい言い方だった。だがアオイにはその意味するところが分かった。要はタチバナが守りたい人間はこの場にいる人間くらいしかいないのだ。どんなに協力者が増えようがそれは変わらないということを、タチバナは凄く遠回しに告げていた。


「…ほんと、いつの間にイオリとそんなに仲良くなったんだ?タチバナさん」

「こいつに関しては微妙なところだがな」

「何の話だ?そんな仲良くないと思うぞ、俺は。言ってることよく分かんねえし」

 頭の上に疑問符が見えそうなイオリの顔を見て、アオイとタチバナは笑った。マコトも間違いなく真意を理解しているが、素知らぬ顔をしていた。


「話を戻そう。一つ目の作戦は継続的なものだが、こっちは今まさに介入する必要がある作戦だ」

 そう言ってタチバナが取り出したのは青い粒の混じった薬包と、1人の男の写真だった。


楽園(ザイオン)というドラッグを知っているか」

 アオイとマコトは横に首を振った。

「ああ、最近の流行りだろ?結構やってる奴いるよ。典型的なアップ系だって聞くけど」

「お前、やってないだろうな」

 タチバナの鋭い視線と声。

「しねえよ、そんなのなくてもハッピーだ馬鹿」

「ロボスのメンバーでやってる奴は?」

「知らねえけど、ウチにはいないと思うぞ。なんたってロボスのモットーは健康優良不良少年だからな」

「アニメの見過ぎだね」

 マコトが突っ込みを入れるがアオイとタチバナには意味が分からなかった。

「ならいいが、一応メンバーに確認しとけ。こいつはドラッグというより催眠誘導剤だからな」

「え?そうなの?」


「しかも製造元は、おそらく都市管理者(エクゼキュータ)だ」


「…都市管理者が率先してドラッグを作って販売してるのか?でも一体なんで…」

 アオイの質問に、タチバナが訂正を入れて答える。

「間違えるな、これは麻薬の皮を被った催眠の道具だ。これに依存した奴は幸福感と引き換えに、他者からの命令に逆らえないほどに精神が脆弱になる。抵抗と自律意思を奪う危険な薬物だ。加えて肉体的な疲労や痛みにも鈍くなり、常人では考えられん程に強化されるようだ」


「それでこの男は?」

 マコトが先を促す。その目は最初の標的である、野性味のある精悍な顔をした男の写真をずっと見ていた。


「そのザイオンの取引役(ディーラー)だ。音声データから割り出したところ、〈屠殺集団〉(スローターズ)狗井勇吾イヌイ・ユウゴと名乗っている。イオリ、知ってるか?」

「聞かない名前だな。もしかしたらマキなら知ってるかも」

 タチバナの舌打ち。

「そうか、当てが外れたな。ザイオンの拡散規模から、てっきりお前らの間じゃ有名なのかと思ってた」

「こいつをどうするの?」マコトの質問。

「ザイオンの拡散を止めたい。この薬のせいで俺が目星を付けていた何組かが奴らに取り込まれた。おそらく狗井は販売時に催眠を施している。都市管理者側の意向に沿ってな。目的はこの男の確保、そしてその仕入れ先の情報の入手だ」

「写真が撮れたってことは居場所も分かってるんじゃないのか?」アオイの当然の疑問。

「映像は拾える。薬を売ってるところも確認できた。だがその映像元は追跡できないようランダム化されている。ハッカーの仕業の可能性もなくはないが、プログラムに痕跡がなかった。この場合考えられるのは、モニタの使用権限を持つ誰か…つまり都市管理者側が意図的に行っている可能性が最も高い」

「なるほどね。この男が管理者と繋がってる可能性大ってことか」

 透過窓の外を見ながら答える。その景色の中には一般人の他に、軍服を着た小銃を持つ兵士の姿が多く紛れ込んでいた。まるで違う国に来たかのように異質な光景。しかしこれから先、この景色が当たり前のものになるのが容易に想像できた。


 管理者の手は伸びている。こうやって見えるところに、そして多分、ザイオンのように自分達の見えていないところにまで。


「最初の作戦を伝える。電子貨幣(キャッシュ)の不正取引を行うグループがいる。まずこいつらを協力者に引き込む。ホームページに自分達の理念を語る馬鹿どもだが、比較的控えめな連中のようだ。おそらく問題なく仲間に引き込めるだろう。アオイ、マコト。お前らが組んで当たれ。“昔”のようにな」

「了解」2人の声が被る。


「俺はどうすんの?」

「同時進行だ、マキって奴に連絡を入れろ。そしてスローターズの所在に心当たりがあれば、ロボスを使って襲撃し狗井の所在を聞き出せ。薬の拡散具合から見て1人ってことはない。必ず他にも取引役(ディーラー)がいる。その誰か、または関係者が捕獲できれば製造元の情報が得られるだろう、そいつを連れて来い。手段はお前の得意なやり方で構わない」

「おおっぴらにやってオッケーてことだな」

 イオリがククッと笑い、了承した合図を送る。


 タチバナが立ち上がる。同時に霊柩車(ザ・ハース)が停車した。霊柩車はいつの間にか西園区に来ていた。目の前には〈ヴェニス〉と書かれた看板の小汚い店。


 大きな音とともに後部のドアが開けられる。

「まずは身繕いからだ。この店には実用的なものが衣料品その他各種取り揃えてある。店主の奢りだ、好きに持ってけ」

「はあ!?聞いてないよぉ、俺」

 その言葉に運転席の余市が仰天して振り返ると、すでに誰もいなかった。


 余市が止める前に彼ら4人はさっさと車を降り、唯一〈眠れる墓地〉(セメタリー)に備えてなかった衣服を物色しに行った。余市は必ずタチバナに請求することを決意し、慌てて4人が持っていくものをチェックに行った。







―5―







 そして現在。


 謎の少年の追撃を振り切った狗井は、馬鹿でかいトレーラーらしきものに、ザイオンの販売場所を提供してくれた名も知らぬ店主が放り込まれるのを“見た“。その視界は限定的で、少年の付近1mくらいしか判別できていない。見える映像も赤外線で表現したようなサイケデリックで抽象的な色合いだ。


 その少年、背原真琴の姿以外は。


 狗井は今、北嶺区の適当に選んで侵入した高層ビルの屋上にいる。戦闘から逃走して、約30分ほど走り続けてこの場所に至った。あの少年からはおよそ5km距離を置いているのが“感覚”で分かった。


 それにも関わらず狗井の脳内には、現在の真琴の姿がありありと浮かんでいた。目を閉じれば瞼の裏にもうひとつの視界が現れる。その中では真琴がすぐ目の前にいるかの如くだった。

 赤、緑、黄の色で構成されたぼやけた視界の中で、“獲物”と定めた真琴の姿だけが鮮明に細部まで再現されている。


(ほう…随分柔らかいんだな。しかしバネのように強靭でもある。どちらにしろ常人でないのは間違いないな…)


 “猟犬”(ガンドッグ)。狗井がそう呼ぶ顕現能力(インカーネイト)の発現だった。狗井が標的と定めた人物を完璧に嗅ぎつけるこの追跡能力は、対象のあらゆる身体状態までも把握できた。そして一度発現すると、相手の息の根を止めるまで永久に解除されない。


 そして狗井の場合、顕現能力の発現は自身が心の内に隠した人格が表面化することをも意味していた。


 自然と笑みが浮かぶ。その笑みは獲物を追い詰める悦びに満ちており、少し前の精悍な顔はすっかり消え失せていた。


(久しぶり…2年振りくらいか。よく我慢したほうだが、あんな上物を見せられちゃしょうがない。それにこいつなら切宮(キリミヤ)に背いたことにはならない)


 狗井は能力の発現に自ら制限を設けていた。それは主に自分の保身の為であり、切宮(キリミヤ)という自分の主人からの命令でもあった。その条件はたったひとつだが、それを満たす者は存外に少なかった。


 そして背原真琴は、その条件を満たしているのだ。


「嬉しいよ少年。お前が“顕現能力者”(インカーネイター)であってくれて。お前が23人目の標的だ」


 狗井の中の“内なる殺人者“(インサイドキラー)の歓喜の声。


 それは以前、およそ1年間に渡り上座市を恐怖に陥れた連続殺人鬼の復活の声であり、その再来を告げる声でもあった。 


 




 


 


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