ナナ編・第零話「灰色の殺陣」
ナナ編・第零話「灰色の殺陣」
錆びたような色をした粉塵が舞い上がり、対峙する少年と大男の間を通り過ぎる。
少年の手には一振りの刀。男の手には黒と紫の自動拳銃。
互いに激しく息を切らし、血走った目を向け合っていた。
「殺す……! てめぇは絶対ぶっ殺す……!」
「しつけぇんだよ、こんのクソガキ……いい加減寝座に帰れや!」
帰れと言って、誰が帰るものか。
いま目の前にいる男は、父親を奸計に嵌めて殺した憎き仇だ。だから当然の事ながら、殺してやるまで気が収まらない。
「バリスタァァァァッ!」
「ちっ……!」
真っ向から向かってくる少年に向けて、男が立て続けに発砲。少年は体を回転させながらも前進して射線を回避。
お互いの距離が、目と鼻の先まで狭まった。
少年が大太刀を振りかぶり、同時に男の銃口がぴったり少年の額に密着する。
「月までぶっ飛べ!」
「てめぇがな!」
風を切る音と、重たい銃声が重なった。
いくら泣き叫んでも、どんなに刃を振りかざしても。
悲しみは消えず、憎悪はただ心身を蝕むだけの怪物へと姿を変えるだけである。
討つべき仇は討ち取った。
けど、刺し違えれば良かったと後悔するには充分な数の屍を、少年は築き上げてしまった。