1話
見切り発車です。
自分の妄想をつめこんだので文はぐちゃぐちゃで読みにくいかもです
楽しんでいただければ幸いです
私はいつだってあいつに振り回される。
義母、私の天敵。
今回だってそうだった。
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「あなたに良い縁談があるのよ。およろこび、大貴族さまよ。もったいないお話だわ。もちろん、受けるわよね」
始まりは学校から帰宅してすぐの縁談話。
貴族さまの家に行くと言われるがまま連れてこられ、置き去りにされた。
外見ばかりが豪奢で、相手の方を待つようにと通された部屋も、中はごてごての装飾品だらけ。正直趣味がわるい。
しばらくして入ってきた「大貴族さま」はシャツのボタンが弾け飛びそうなほどにパンパンのお腹をもった中年オヤジだった。口元には下卑た笑み。身体を揺すってこちらへ歩いてくる。そいつは白い手袋をしていたけれど、こんなやつに手袋越しでも触られるなんて耐えられそうもなかった。身をすくませてつっ立っていた私に、そいつの口から出てきたのはさらに気分を悪くさせるような言葉だった。
「お前がアマンダの娘か……平民にしてはなかなかの上玉だな。さすがに大枚をはたいただけの価値はある。これならば元はゆうに取れるだろうが、わざわざ売り飛ばさなくても私が手ずから可愛がってやるのも悪くない。さすがはあの女の娘だ…身体はよく育っているな。まだ一度も夜を経験していないと聞いているが、こんなものはなかなかない。私こそがこやつを咲かせられるただ一人の男。私にこそ分相応な役目だ。あこの名門貴族ザール家の当主に身体を重ねられるのだ…誇りに思うがよい、娘」
そいつは何かの台詞のように揚々とそう言いきると、手を叩いて誰かを呼んだ。そうして現れたのはどうやら召使いのようで、手には頑丈な手枷を持っていた。召使いはスタスタとこちらへ来て迷いなく私の手にはめるとそのまま部屋を去っていった。私は中年貴族の言葉のせいで混乱していたのと、召使いのあまりの手枷をはめる動きのスムーズさに何一つ抵抗できなかった。
そのときの私の頭の中は、義母に対する「やられた」という思いでいっぱいだった。
(やられた…縁談話なんかじゃなかった。中年貴族は私のことを娼館かどっかへ身売りする仲立ちをする役目だったんだ。でもやっぱり自分のものにしようとしてる。中年貴族のもとから先のことは関しない態度を取って、私の学校への退学の理由をあくまで縁談を受けたことって言える体裁を調えたんだ)
混乱して考えこんでいた思考を浮上させると、すぐ近くに中年貴族が近づいてきていた。
「なんだ、ずっと黙り込みおって。緊張しているのか?なるほど、初めてであるし、何より相手が私ということでは、無理もあるまい。身の程はわきまえているようだな。」
そう言うと素早く手枷のつなぎの鎖を掴み、私は両手をそのまま引っ込めなくなってしまった。これでは本当になんの抵抗もできないまま、こいつに身体を犯されてしまう。いやだ。絶対にいやだ。義母に騙されて縁談なんかじゃない中年オヤジの相手をさせられて、子どもを持てば私はもうこいつから離れられなくなる。逃げられなくなる。そんなのは断固願い下げだ。
中年貴族は私の手枷の鎖をもって寝台へ放り投げ、私は必然的に仰向けのまま押さえ付けられてしまった。ただでさえ両手は自由がきかない。私の身体をかすった中年貴族の下半身の感触が気持ち悪い。生々しくて吐きそうになった。見ているだけで触られたくないと思っていた白手袋の手が私のむき出しの腕を強い力で押さえつけている。片腕を押さえられてはもう片腕は動かせない。いやだ、いやだいやだ、気持ち悪い、さわらないで降りて、離れて!!
「なに、少しばかりお前の体を味見するだけだ。早速深く味わうほど、餓えてはおらぬ。少し、少しだけだ」
奴の手が私の乳房の片方を掴んだ。
嫌だ!!!
その一心で自由だった脚を目一杯暴れさせた。当の本人は私の暴れる脚をどうしようとも考えていなかったようだったが、運良く私の一振りが下半身の一番大事な所にここ一番の強さで当たった。
「ッッーーー!?」
声にならない声をあげてのけぞった中年貴族の姿を見て私は気分がよかった。すっとした。私を押さえる手も、私にかすれる下半身もない。胸を鷲掴みにしたあの不快な手も。蹴ったときはさらにリアルな硬さが伝わってきてより気持ち悪かったが(先に靴を脱がされていたので素足だったのだ)、こんなすがすがしさが味わえるならどうって事はなかった。
そう思っていられたのもつかの間だった。
ようやく少し復活した中年貴族が憤怒の表情でこちらを睨みつけ、気がついたら寝台の下へ吹っ飛ばされていた。左頬が熱さをもってじんじんと痛む。殴られたのだろう。
寝台の下でもぞもぞと起き上がろうと動いているのを余所に、中年貴族はまた手を叩いて召使いを呼んだ。
「おい、麻袋をもて!縄もだ!早くしろ!!」
やっとのことで上半身を起こし顔を上げた私の視界に映ったのは、嘲りを浮かべた中年貴族の気味の悪い顔と、上からスライドしてくる茶色。その茶色はやがて私の視界すべてになった。なにも外の様子が伺えない中、私の体はまた横転した。何事かと思っていると脚の方がきつく引き絞られている。私の体制は自然と胎児のようにうずくまる形となってしまった。手は相変わらず胸の前で戒められたまま。シュルシュルッという音が脚の方で聞こえて、完全に体は伸ばせなくなってしまった。麻袋の口が縄で縛られたのだろう。
せまい、何も見えない、動けない。
こわい。
まだ殴られた頬は痛む。
その痛みがどこも自分の思うままに動かせない恐怖と共鳴して、ひどく胸の音がうるさく感じた。
突然、背中に打撃がきた。おそらく、革靴の感触。頬を殴るだけでは気が済まずお次は背中への蹴りか。一発ではなかった。場所を変えて、二発、三発。外は見えないが、どうやら転がして遊んでいるようだ。痛みは場所を変えているのでまったく麻痺しない。痛い上に、あの中年貴族の思うままに動かされてるという事実がひどく我慢しがたくて、少しでも抵抗しようと腕やら脚やら伸ばせる限り伸ばそうとした。どれだけ大きいのか、長さは私の身長に引きられてしまったのでゆとりはないが、横幅はそれなりにゆとりがあった。とにかくなにか反抗したくて横幅にたくさん蹴りを入れて、腕を伸ばして、がむしゃらに動いた。不思議と、あの忌まわしい義母に連れてこられてからここまでずっと、一言も口はきかなかった。ただ余裕がなかっただけかもしれない。でもそれよりも、私は本能的にこいつらは口を利く価値なんかないってそう判断した気がした。
こんなやつに口きく価値なんかない。そう思って口を引き結び、せめて抵抗してやろうと必死にもがいてたのに、もがいてももがいても蹴りが止まらないからふと突然、私のこの抵抗は奴から見たらひどく滑稽な些細なものだったのではないかと思いついた。ただあいつわ悦ばせるだけなのではないか。
いやだ。誰がしてやるかそんなこと。
私は一切の抵抗を止めて、気絶した振りをした。
どうせ抵抗したって蹴りは止まらないのだ。それならこれからの生命力に生かした方がよっぽどいい。こんな奴のために無駄遣いする体力なんてこれっぽっちもないのだ。
動かなくなった私に気づいて、奴はため息をついて一人、舞台に立っているかのように私に朗々と語りかけてきた。
「もう気を失ってしまったのか……まったく、意気地のない平民だ。せっかく屁でもなくても意地を見せた抵抗をし始めたと思ったらすぐに気絶しおって。まあよい。別に楽しみは今日だけに限ったことではないのだ。次に持ち越しただけではないか。これから、よくよく可愛がってやろう。なんという光栄を賜ったのか、そのしがない頭でよく考えておくのだぞ、平民」
そう話して気が済んだのか、また手を叩いて召使いを呼んだ。
召使いの足音はスタスタとこちらへ近づいてきて、他の者と同じ牢屋に入れておけと言った中年貴族の言葉に了承の意を示すと、私の体は脚を上に釣り上げられた。肩に担がれたのだろう。頭が逆さになって血が上るけれど、今は気絶していることになっているので、声を出さないように口を引き結んで堪えた。
召使いの、牢屋はどこにしますか、という声に他のと同じでよい、と答えた会話を耳の端で捉えた。
「他の」って、まさか私だけではないのか、同じような目に遭った人は。なんて奴だ。人を玩具のように飼い殺しにして、何様のつもりだ。もう既に頭に血が上っているからか、いつもより沸点が低いような気がする。
鉄格子の開く重い音が聞こえて、牢屋の前に着いたのだと気づいた。召使いが数歩進む振動があったと思えば、左半身が床に打ちつけられた。肩からおろされたのだろう。頭はガンガンするし、頬は相変わらず痛む。召使いの出て行くための鉄格子の音がした時には、極度の緊張と、痛む体、中年貴族や召使いなどから離れられたらという解放感と打った頭などなど、さまざま苦痛から放たれたことが重なりすぎて、「他のと同じでよい」と言われそのことについて考えもしたのにすっぽりと頭から抜け落ちたままに、本当に気を失ってしまった。
どうだったでしょうか。
とりあえず止まらないように頑張ります。