二年後
墓石の前で、怜香は手をあわせて目を閉じた。
先だった者たちの冥福を祈り、彼女はゆっくりと目を開いた。
「あなたに一つ謝らないといけません。あたし、結婚することになりました」
そう言って、彼女は隣に立っている海斗に視線を向けた。
二年間の養成学校での生活を終えた直後、怜香はずっと交際していた海斗にプロポーズされた。
怜香の外見は二年前とほとんど変わりないが、海斗の方は成長期が遅れてやってきたらしく、初めて出会った頃に比べて彼の身長は7センチ伸び、筋肉も随分ついてたくましくなり、あどけなさの残っていた顔立ちもどこか凛々しくなった。
養成学校を卒業した彼女は、本来なら飛龍の操獣士としてこれから三年間は軍で働かなければならなかったのだが、二年間の学費を海斗が代わりに返納することで、家庭に入ることになった。
新人の海斗の給料は大した金額ではないので、しばらくは倹約しなければならないが、銀龍の力を持つ彼の出世はほとんど約束されているようなものなので、近いうちに裕福な生活を送れるようになるだろう。
だが、今はそんなことはほとんどどうでもいい。
怜奈の遺書の内容を聞かせてもなお、海斗は相変わらず怜香に依存しきっており、自分の子供に怜香を取られたくないからという理由で、しばらくは子供を作らないことになった。
海斗自身、いずれは子をなすことを希望しているようだが、彼の心が安定するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
数年間は二人だけの生活を満喫するとしよう。
「じゃあ、行こうか? 怜香」
怜香は、差し出された海斗の手を握り歩き出した。
まだまだ考えることは尽きないが、嬉しい悩み事なら大歓迎だ。




