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銀龍の操獣士  作者: 裕裕
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突破

 ドラゴンに乗り込んだ海斗たちは、空を飛んでいた。

 その数は百を超え、島にいるエース級の操獣士ばかりが駆り出されたため、海斗を含め銀龍の力の持ち主が7人もいた。

 青い海と青い空に上下を挟まれて、目的地の見えない飛行を続けていると、気が遠くなってくる。

 海斗は飛行を続けながら、ブリーフィングでの会話を思い出した。

「デンジハ……ですか?」

 耳慣れない単語を聞き、海斗は思わず聞き返した。

「そうだ」と言って、今回、海斗たちの指揮を務める男が頷いた。

「この島にある奴らのアジトをいくつか調べてわかったが、奴らはロストテクノロジーの一部を手に入れている。聞いた事がある者もいるかもしれんが、日本という国が、世界大戦により滅んだあと、生き残った日本人たちによって、この国は作られた」

 指揮官の男の話によれば、日本が滅ぶ前の世界は、現在よりもはるかに優れた文明を持っていたらしい。

 その昔、世界が高い文明を維持していた頃、大量破壊兵器の使用を無効化する新技術により、戦争はお互いの国力を削りあう消耗戦が中心となった。

 戦争が長期化し、近い将来起こりうる資源不足を恐れた国々は、工場なしで、兵器をつくる方法を研究

しはじめた。

 その一つが、ドラゴン計画である。

 様々な動物の遺伝子を改造し、戦争に都合のいい特性を持った動物が完成すると、敵国に放っていった。 

 放たれた動物たちは、科学者たちに付与された特性を巧妙に利用され、重要施設の破壊や敵国の人間の虐殺を繰り返したうえ、敵国で卵を産み落とし、勝手に繁殖しては敵国を蝕んでいった。

 軍事用に改造された動物たちは繁殖能力を異常に高められており、早いものは3ヶ月単位で世代が交代した。

 計画は成功したかに見えたが、頻繁に世代交代を繰り返したことや、戦争中の急な環境の変化、敵国により捕獲された改造生物の研究の結果などによって、改造生物たちは本来の目的を見失い、逆に自分たちを生み出した国を襲撃するようにもなった。

 人類が資源や人手を失い、消耗しても改造生物たちの勢いはとどまる事を知らず、とうとう人類の大半を滅ぼしてしまった

 生き残った人類も改造生物たちからの逃亡を繰り返しているうちに、科学知識の大半を失った。

「我々がこれから襲撃する場所には、そのロストテクノロジーが一部が隠されている。今の科学力とは比べ物にならない時代にすくられた兵器もまだ存在しているかもしれない……そして、今回の我々の目標は奴らのアジトにあるとされる電磁波発生装置を破壊することだ」

 神経接続生命体クレドス。

 この生物の主な機能は中枢神経を結合することによる感覚共有や運動神経のコントロールにある。

「以前までクレドスは直接的に接合しない限り、それらの機能を発揮できないと考えられていたが、最近の研究の結果、クレドスは目に見えない微弱な『波』を発し、クレドス同士なら多少の感覚のやりとりができる可能性があることがわかった。そして、クレドスはお互いに引きつけ合おうとする性質があるらしい。人間のように理性の強い生物なら、クレドスに操作されることはありえないが、本能で動いている動物たちは万が一クレドスに寄生されている場合、その行動をある程度あやつられている可能性がある。

操獣士の多い地域が狙われていたのは、害獣に寄生したクレドスが仲間のもとへ向かおうとした結果だと考えられている……襲撃があった直後地域を狙われたのも、おそらくクレドスの特性によるものだ。多分、仲間が感じた恐怖心を感じ取って、本能的に助けに向かったのだろう。しかし、ただ単にクレドスによって害獣達が引きつられたにしては数が多すぎるし、そもそも、クレドスが発する電磁波は極めて微弱なためあまり遠くまで伝わらないと科学者たちは考えている……おそらく、クレドスに寄生された害獣たちが人為的にこの島の近くに招かれたんだ……電磁波発生装置を使ってな」

「つまり今回の作戦が成功すれば、害獣たちの発生量を以前の水準に戻すことができるということですか?」 

「おそらくな……この一連の騒ぎが奴らにより引き起こされたものだとしたならの話だが……それでは、具体的な作戦について説明する」

 一通り説明が終わったが、海斗の心の中にはある疑問が残っていた。

 なぜか敵についてほとんど説明がなかったのだ。

 敵が害獣を操って人類を攻撃しているなら、その目的は何なのか。

 そもそも彼らはどういう人間でどういう経緯を経て自分たちと敵対することになったのか。

 そういったことが省かれてるというより、はぐらかされているような雰囲気さえ感じ取った。

 光沢を帯びた黒龍から出てきた男は、人類に復讐すると宣っていたらしいし、訓練生からも上司からも高い信頼を得る神宮寺教官が大量虐殺に手を貸しているぐらいなので、案外、政府の方に非があるのかもしれない。

 しかし、どんな理由があるにせよ、このまま放置していればいずれ人類は滅ぼされる。

 かつてテロリストの卵として育てられていた海斗でさえ、神宮寺たちの動機について全く知らないのだ。

 今現在無残に虐殺されている一般人たちのほとんどは、おそらく神宮寺たちの目的とほとんど無関係なのだろう。

 何より島には怜香がいるし、怜奈の墓もある。

 怜奈と怜香への罪滅ぼしのためにも、彼女を守らなければならない。 

 しばらく飛行を続けていると、黒龍の群れと何度か遭遇した。

 以前にも、島の外の様子を伺いに探索しようと言い出すものがいたが、島から少し離れたところに大量の害獣が住み着いているため、計画はことごとく頓挫した。

 しかし、今は多少の被害は無視してでも進まなければならない。

 無数の黒い影が飛び交う中を海斗たちは仲間を失いながらも突破していった。

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