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銀龍の操獣士  作者: 裕裕
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誠意

 明かりの消えた廊下で、暗闇の中、物陰に隠れていた海斗が神宮寺の前に姿を現した。

「こんなところで何をしているんだ? 水沢。寮の門限は過ぎているぞ」

 神宮寺は海斗の顔を見ると、肩に担いでいたカバンを落とし一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに険しい表情になって、海斗を叱りつけた。

「気になってたことがあるんです。なんで、今日は授業の予定を変更したんですか?」

 海斗はあまり抑揚のない口調で尋ねた。

「理由については連絡したはずだが?」

「教官が今カバンを担いでる右腕を怪我をしたことになってますね……ところで、そんなに大きなカバンを担いでこんな時間にどこに行くんですか?」

「何が言いたいのかさっぱりわからないな。行かせてもらうぞ」

 神宮寺は鼻で笑うと、海斗のとなりを通り過ぎた。

 門限を破っているはずの海斗を放置したまま……

「神宮寺さん」

 海斗は声を振り絞って、かつて自分の命を救った男の名前を呼んだ。

「これが最後のチャンスなんです。行かないでください」

 神宮寺は肩ごしに振り返り、海斗に一瞥をくれたが、そのまま立ち去ろうとした。

 そのとき階段から十数人の屈強な男たちが飛び出した。

 保安局のものたちだ。

 神宮寺はカバンを投げ捨てて、踵を返したが、海斗の背後からも武装した男たちが迫ってきた。

 神宮寺は海斗を片腕で拘束し彼の首筋にナイフを突きつけて彼を人質に取ろうとしてきたが、彼が悲しげな表情を浮かべたたままじっとしていると、舌打ちをして海斗を突き飛ばし窓から飛び降りた。

 当然、外にも保安局の人間が待ち構えており、神宮寺はあっさり拘束された。

 暴れる神宮寺を見下ろしながら、海斗は深く息を吐いた。

 今日の夕方、黒龍から出てきた男は拷問の末、あっさり自白した。

 これで神宮寺は国家反逆罪で死刑を免れないだろう。

 目的は人類への復讐だそうだ。

 具体的に何をやっているかということと動機については、現在聞き出している最中らしいが、協力者の名前を何人か吐かせることに成功したらしい。

 その中に神宮寺の名前があった。

 保安局の人間は、海斗たち生徒に対して、神宮寺の普段の様子を尋ねてきたが、その時に海斗がその理由を尋ねると、あっさり口をすべらせて、保安局が神宮寺を疑いっていることを海斗に教えてしまった。

 海斗がダメもとで、神宮寺を逮捕する前に自分に説得させて欲しいと保安局に頼み込むと予想外にも海斗の願いは聞き入れられた。

 たかが訓練生である海斗の無理な要求が通ったのは、訓練生でありながら実戦で何度も成果を残していたことと、彼が数少ない銀龍として将来人類の大いなる力となることが予想されたためだろうが、神宮寺は軍や保安局の上層部にも相当信頼されていたらしいから、もしかしたら個人的に神宮寺を何とかして庇いたいと考えているものが上層部にもいたのかもしれない。

 神宮寺が海斗の呼びかけに応じて自首していれば、情報提供を条件に極刑は免れたかもしれないが、こうなってはもう救いようがない。

 急に力が抜け、海斗はその場に座り込んだ。

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