突発的に書きたくなった物
酒場の前に一人の女性が立っていた。
「ったく、遅いなあいつは」
そういいつつ彼女は相方が現れるのを待つ。
彼女とその相方がこの町に来たのは、少し前のことだ。
来てすぐは町にどんなものがあるのかを調べる、とゆう名目で着いた時刻が遅くない限りは町の散策に当てていた。
まあその相方の趣味とゆうのもあるのだが。
そうゆう時は、集合場所に町にあまり興味のない彼女がさきに来て待っている、というのが通例になっていた。
はあ、と一言ため息をつくと彼女は、おもむろに後ろから剣を引き抜いた。
そして、その剣を回し始めた。片手で、くるくると。
そのまま上に投げ上げ肘の横で柄を受け止め、その剣が向こう側へ倒れていくのを流れていくような動作でキャッチ、また回し始める。
彼女が相方を待っているときはいつもこうしている。
ちなみに回していることは本人自身気づいていない。
今度は、ちょっと上にあげて刃を掴む、そのあと剣腹を使ってペン回しのように回したあと、剣を弾きまた回し始める。
もちろん、その流れるような剣捌きを見て見物人が輪を作って見ていることなど、彼女は知りもしない。
今度は、手と肘を交互に使ってお手玉のようなことをし始めた。さらにたまに一際高く投げ上げる。
その際に歓声が上がるのも、彼女はもちろん知らない。
「ふぅ、満足満足って、あれ?こんなところに人だかり?」
そう言いつつ帰って来たのは彼女の相方だ。
ちょっとした予感を感じつつ、人混みをかき分けて中を覗いて見ると、案の定彼女が剣を回していた。
またか、と思いつつ彼女に近づき声を掛ける。
「おーい、クウェルいま帰ったぞ〜」
その彼の声に気づいた彼女−クウェル・テスタインは、彼の方をちらりと見た後剣を今までで一番高く投げ上げ、
「おい、遅いぞセン」
と言い終わると同時にキャッチした。
とそこで周囲の人々からの歓声と拍手。
そのうるささに顔をしかめながら剣をしまった後、隣にいる相棒−セン・シドゥラルに声を掛ける。
「なあ、セン。こいつらは何に対して歓声を上げているんだ?」
と言った。
「はあ、お前は全く・・・
まあいいや。ところでさいい宿見つけたん だ。なにより雰囲気がすごくいい。お前も絶対気に入るからさ早くいこうぜ。」
「全く、遅かったことにたいする謝罪もなしか・・・おいそんなに引っ張らなくてもついていくからはなせ」
そう言いながら、センとクウェルは人混みを掻き分けて出ていった。
これはまだ彼女らが「戦う踊り子」、「幻影」といった二つ名をつけられる前の無名だった頃の話。