9/9
終章 夢の出口
わたしは大きく伸びをした。久しぶりに熟睡できた気がする。開いた窓から、涼やかな風が舞いこんできた。
素早く仕度をして、リュックサックをつかんで、部屋を出た。
「クロ行ってくるよ」
頭を撫でると、クロは黒い体をくねらせ、ニャーと鳴いた。そして、甘えるように足元に擦りよってきて、わたしを行かせまいとする。そこで、わたしはあることに思い当たる。
「今日は気持ちがいいから、特別にね」
そう言って、クロを抱きかかえた。彼女も山に登りたいみたいだ。
リュックサックの隙間にクロを押しこんで、出かけた。山道では何があるかわからないから、念のためだ。
なだらかなコースを選んで、長いこと登り続ける。山の風が気持ちいいみたいで、クロはリュックサックから頭を出していた。少し見晴らしの良い場所に出ると、クロはリュックサックから飛び出し、目一杯首を伸ばして空を見上げて、鳴いた。