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序章 夢の入口
夜、わたしは布団に入りぼんやり宙を見ていた。明日は山に登る。だから早めに眠らねばならないが、すぐに目が開いてしまう。
明日が待ちきれない。静謐な山の空気を胸いっぱい吸いたい。今の胸の高鳴りは頂点に達するだろう。だから眠れないのか。いや、これには別に理由があると、わたしは思っているのだ。
最近、寝つきが悪い。しばらく時間がたてば、自然と深い眠りに落ちるから、別に問題でないのだけれど。
霧が発生している中、すぐ先も白くぼやけている山道に踏み出す一歩が大変不安なことがある。
わたしの感じることもその類だ。
眠りに落ちるまでの過程で、不意にガクンと衝撃がくる。まわし始めた歯車がまだ噛み合わずに、空回りしてしまったような。適当な表現か分からないが、薄ぼんやりした感覚の中で、わたしはそう思うのだ。
それに毎回同じ夢を見る気もする。わたしの気のせいかもしれない。