銅田一少年の事件簿
私、みゆきと幼馴染のはじめちゃんは叔父のペンションに泊まりに来ていました。
そのときはまさか、そんな悲劇が起きるなんて、夢にも思わなかったのです。
あれは、午後7時ごろのことでした。
私とはじめちゃん、そしてペンションの宿泊客のみんなで夕飯を食べていたときのことです。
「キャアァァァァァァァァァ!!」
女性の叫び声。
その場は騒然となりました。
「な、なんだなんだ!!」
「オーナー! 大変です!!」
「どうしたんだ! 恵理子くん!!」
「201号室の田中さんが来ないので呼びにいったんですが、た、田中さんが……死んでいたんです!!」
「マジで!?」
ざわ・・・ざわ・・・
「床に、こんな、遺書らしきものが残っていたんですが……」
許されないことをしてしまいました。
みなさんには、とてもご迷惑をかけてしまいました。
自分でも、何故このようなことをしたのか、全く理解出来ません。
死ぬことしか、私には罪を償う方法が解りませんでした。
許されようと思うのは、いけないことだとは思うのですが。
死ぬことは、自分が逃げたかっただけなのかもしれません。
天国に行けることを願って・・・。
田中 和義
「HEY! オーナー! コレはドゥゆうコトだよゥ!」
202号室のエセ外国人、ピエール柿さんもご立腹の様子。
「そうですわ! そんな殺人が起こるペンションなんて、前代未聞じゃありませんこと!?」
こんな喋りかたするヤツ現実にいねえよ、と思わせる喋りかたの203号室のデヴィ叶さんも息を荒げています。
他の宿泊客の皆さんは、何があったのかわからないとでもいうように、ポカーンと口を開けてただボーっとしています。魚みたいで少し面白い。
「そして、こんな物も残っていました」
恵理子さんが取り出したのは、黒柳徹子のサインでした。
「な、なぜあの有名人のサインが……?」
みんな、もう夕食のことなど頭にありませんでした。
「な、なんか凄いことになってるわね、はじめちゃん」
「……謎はすべて解けた」
「早ぇなオイ!!」
「みゆき! みんなをここへ集めてくれ!」
「いや、全員揃ってるし」
「じっちゃんの名にかけて!」
「なんでこのタイミングで言うの!?」
「いいですか? 皆さん。これは非常に巧妙に仕掛けられた計画犯罪です。オレはここまで完全に人間の心理を突いた犯罪を知りません。そして、こういうとき、犯人はこの中にいると相場が決まっているので、きっと犯人はこの中にいるのです」
「オイオイ! 急にナニをイイだしタンダこのボーイ! コイツは笑っちまうぜHAHAHA!!」
「そうでござあますわよボウヤ。探偵ごっこはひとりで勝手にやっていればいいざあますわね」
「すべての答えは、この遺書に隠されていました」
「なんだってえええええ!!」
「いいですか? この遺書・・・最後の文字を縦に読んでみて下さい。わかりますか?
『たたんたがん』。そう、これは犯人の名前なのです!」
「なんだってえええええ!!」
「そうですよね。『タタン・タガン』さん」
「……まさか、私の名前が隠されていたとはな」
「いるのかよっ!!」
「だが、少年。それだけで私を逮捕できるのか? 私はずっとここにいたんだ。完璧なアリバイってやつだな」
「しかし、証拠があるんですよ。あなたがやったという証拠がね」
「なんだと! でまかせを言うのもいい加減にしろ!」
「それは、この黒柳さんのサインです」
「!!」
「まさか、ここまで完璧な殺人があるとはね。ある意味、オレはアンタを尊敬しますよ。あんたはこのサインで(中略)したんです! どうですか!!」
「そ、そんなことが出来るなんて! これを(中略)して使えば完璧な殺人が出来たというのか!」
「さすがはじめちゃん!!」
「あの黒柳のデカ頭にそんな秘密があったとはな……」
「あ……アイツが……アイツが悪いんだ!! アイツが……アイツが、私の娘を傷つけたから……っ!!」
「お父さん……。わ、私のために、そんな……」
「そうだと思いましたよ」
「何だって?」
「さっき、娘さんがシャワーを浴びているときに、見つけたんです。胸の中央にある、大きなキズ、をね」
「……少年。ひとつ訊いていいかな。なぜ、私を怪しいと思ったんだ? 自分で言うのもなんだが、完璧な犯罪だったと思うんだが」
「それは……あなたの、服、ですよ」
「服……だって?」
「血まみれですよ」
「……そうか。ハハハ。こいつはうっかりしていたな」
そして、この悲しき事件は幕を閉じました。
すべては――はじめちゃんの推理によって。
ちなみにはじめちゃんはこの後のぞきの容疑で逮捕されました。
完
……なんかすいませんでした(笑)。