心の向かう先
短いので二話投下です。
「こんなところに一人でお出かけになるなんて。」
その頃ミーツェが出席しようとした晩餐をすっぽかしたギルは苦虫をつぶしたような顔のラルフに咎められていました。
「……。」
その視線をどうにかかわせないかとギルはそっぽを向いています。
「栗色の髪の娘ですか?」
ラルフはため息交じりにそう口にしました。図星のようでギルはますます黙り込みます。
「いい加減、諦めてください。ロゼフォート様と一緒に訪れているんですよ?ロゼフォート様に知れたら大事になります。」
「……から、……だ。」
「え?」
「だから、もう一度探せるならと、キジロに来たんだ。」
あんなに執着していた「ミミ」も人間に戻ると駄目だったのだろうか、とラルフは思いました。てっきり人間に戻った「ミミ」とすんなり収まってくれると思う周囲の期待とは裏腹にギルは表面上は優しく接していましたが時間が経つにつれてロゼによそよそしくなっていきました。そして、続けられる「栗毛の娘」探し。いくら共に邪神と戦ってくれた勇敢な娘と聞いても所詮は侍女。例え位が高くともキジロの内での貴族となればしれています。
「見つかったとしてもどうするおつもりです。連れて帰っても側室の一人にしかなりませんよ?」
「べ、別に俺は連れて帰るなどと考えているわけじゃない!もう一度話がしたいと思っただけだ。」
ラルフはギルには見えない様に溜息をつきました。女嫌いで通っていたギルも20歳。なんとか妃を選ばないと示しがつきません。なのに国王も王妃もが認めるロゼを妃に迎えるつもりがないどころか正体もわからない栗毛の娘を探しているなんて。キジロへ来れば「ミミ」の良さを再認識できるのではないかという王妃の想いもギルには届いていないようでした。
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「晩餐が中止になったの?」
支度が整ったミーツェは目を丸くして伝えに来た侍女に言葉を返しました。
「それがフェリエ様がご欠席になるとかでロゼフォート様もフェリエ様が行かないなら出ないとおっしゃられてお部屋に籠ってらっしゃるらしいのです。」
「そう。」
意気込んでドレスを選んだミーツェは肩透かしです。
「なんだかギルと会うのを誰かに妨害されているみたい。」
「え?」
「な、何でもないわ。下がってちょうだい。」
ミーツェも思わず本音がでてしまいます。会えないことが分かるとミーツェはますますギルに会いたくなりました。
「はあ。」
ミーツェは
ベットサイドのチェストの引き出しを開けると引き出しの中のメッセージカードを取り出しました。
ミミへ
もしもこれが読めるなら君は僕が思った人に違いないと思う。
どうかもう一度会って欲しい。
〇月〇日
キジロ城下の港で
アルギルより
もう何度読んだメッセージかわかりません。
いてもたってもいられなくなったミーツェは着替えました。どうしてかはわかりませんがそこに行けば
ギルに会えるような気がしたのです。カツラをかぶり、侍女の服を着るとミーツェは港へと急ぎました。