表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/61

ミーツェとリボン

「そのアルギル様にもらったリボンと指輪を見せればミミが猫だったってすぐに分かる。ミミ、隠した場所を教えてごらん?私が足の速い者に取りに行かせるよ。」


「隠したのはローランドなの。だから、ローランドに聞かなくちゃ。聞いて、私が取ってくるわ。」


「駄目だよ。私のお姫様。外は雨だよ。」


今にも飛び出して行きそうなミーツェをセルスロイが苦笑して止めました。


「……分かったわ。じゃあ、雨が止んだら……。」


「ミミ。足を擦ってくれるかい?ミミがそうしてくれたら動くような気がするんだ。」


「セルーお兄様は我が儘ね。」


それでも柔らかな微笑をセルスロイに向けてミーツェは言いました。そんな会話をしてから数日が過ぎてしまいました。ミーツェはギルにもらった大切なものを誰かに任せることは出来ませんでした。ですが自分で行くとしてもセルスロイがミーツェは離してくれません。


その日の晩、眠ったセルスロイを見届けるとミーツェは部屋で休みました。でも、ギルのことを想うと眠れそうも有りませんでした。空が白々と明けてきたころ、眠ることに失敗したミーツェは塔から海を眺めました。ミーツェはギルがとっくにテルゼに帰ったと聞かされていました。


「テルゼは……遠いわ。ギル……。明日、お兄様がお医者様に見て貰ている間にリボンを取りにいこう……。」


あの時、自分がミミだと打ち明けていれば……ギルは一緒に連れて行ってくれたでしょうか。それとも、かわいがっていた白猫が人間だったなんてがっかりしたでしょうか。時間が経つにつれてミーツェは不安な気持ちになって行きました。キジロは今や貧しい国になってしまっています。セルスロイが協力すると言ってくれても、もうテルゼ国にとって何の利益もない縁談が上手く行くとも思えません。婚姻がなくともギルはこの国を救った英雄でもあります。


「一目だけでも、もう一度……お会いしたかった。」


ミーツェの目に涙が浮かびました。その時チカチカと光で合図を出しながら近づいてくる船が有りました。


「あれは……!!」


あの船には見覚えが有ります。そう、ギルの叔父のゴーデイトの船です。ミーツェは急いで部屋に戻ると茶色の髪のカツラをかぶって町娘の恰好をすると港へと急ぎました。




*****




「もしかしたらギルが?」


そう考えたらミーツェはいてもたってもいられなくなりました。もう一度だけ、一目だけでもと願いながらミーツェは足を進めました。石畳の港へと続く道をミーツェは転がるようにして走り続けました。


船が見える場所まで行ったミーツェはハアハアと荒い息を整えながら様子を伺いました。先ほど港に着いたらしい船はキジロの紋章のついた木箱を次々と運び込んでいました。


「あれはお父様がギルへの贈り物に用意していたお品。どうして今頃積み込むのかしら……。」


ミーツェはここ数日間のことを思い出していました。オリビエの事件が解決した後はセルスロイの頼みもあって1週間ほどつきっきりで看病をしていました。王様からは何度か広間に来れないかと言われましたがセルスロイの意識が朦朧としていてとても離れることが出来る状態ではありませんでした。最近やっと落ち着いてきたので気になっていたアルギル王子のことを侍女に尋ねるとすでにテルゼに帰ったと聞かされていたのです。


「あ……。」


その時、ミーツェの目には思いがけない人物が映りました。


「ギル……。」


逢いたいとどんなに願ったことでしょう。そのギルが船の方にまっすぐに歩いて行きます。ミーツェは思わず飛び出そうとしました。



「アルギル様ぁ!」



その時、アルギルの名を呼ぶ声がミーツェの足を止めてしまいました。見るとテルゼの時に見たアントン卿の娘ジェリーがアルギルに駆け寄っていました。


「待ちきれずにお迎えに上がりましたのよ!」


ギルは嫌そうにしていましたがジェリーはギルに寄り添うようにくっついていました。後ろから現れたデイは両手を軽く上げてギルに向かって降参のポーズを取っていました。


「どうしよう。出ていけない。」


今までのミーツェなら飛び出て行ってギルに抱きつく勢いだったのかもしれません。でも自分の恋心を知ってしまったミーツェには出来そうにも有りませんでした。角の窓ガラスに映るミーツェの姿はどう見ても町娘で髪はぐしゃぐしゃ。おまけに足は急ぎ過ぎたために裸足でした。とても最新の美しいドレスを身にまとったジェリーと対抗できるとは思えません。


「でも……もう会えなくなるかもしれないから……。」


二度と会えなくなるくらいならとミーツェが姿を現そうとしたとき、ギルの声が聞こえました。


「デイ。俺はギリギリまでミミを探すから待ってくれないか?」


「おいおい。そう言って随分待ったんだぜ?一度帰らないとレイラが心配してる。」


「デイ……。」


「わかった。わかったよ。夕方までだ。それ以上は待たないからな。」


「ありがとう!」


それを聞いたミーツェは嬉しくなりました。


「そうだわ。ギルに貰った指輪とリボンを届けたらどうかしら!そうしたら逢ってもらえるわ!」


馬で駆ければお昼までには西の灯台まで行って帰ってこれます。期待を胸にミーツェは西の灯台へ急ぎました。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ