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ローランドの告白

『いま……何と言ったの?ローランド……。』


あまりのことにミーツェの頭は真っ白になりました。


『貴方様は私の子なのです。だから、その容姿も王に似ていると言われる。それこそセーレン様の思惑だった。しかし……あの方は罪の意識に耐えられなかった。』


『お、お母様はあなたと不倫されていたの!?』


『いいえ。このことはもっと深い事情があるのです。10年間もの間世継ぎに恵まれなかった王が何もしないままだったということはありません。実は何人かの方とは子供をお作りになろうとしました。表向きにはセーレン様が御子を産めぬ体だと言われていましたが……』


『子供を望めないのはお父様の方だったのね。』


『……セーレン様は王様の為に子供を生んで差し上げたかった。それも、王にそっくりな子を。』


『どうして?世継ぎはセルー兄さまがいたじゃない!何の為に子供が必要だったの!』


『あの頃王城内はセルスロイ様暗殺の動きが活発でした。いくら優秀だったとしてもその血統では国内では反対する政派もいました。その矛先を少しでも緩め、王の立場を強固なものにしたかったのです。生まれてきた子が男の子だったらもちろん世継になる。女の子だとしても次の世代を支えると。……王も認めたその計画は上手く行ったように思えました。……セーレン様が精神的に病んでしまうまでは。』


そう言うとローランドはミーツェを慈しむように見つめました。


『生まれてきたあなたは王そっくりだった。髪の色も。透き通るような白い肌も。……でも、その瞳の色は王よりも私に似てしまっていた。他の人には気づかないでしょうが私たち三人は気づいていました。特にセーレン様は……。勝手な話です。貴方は望まれてこの世にやってきたというのに、セーレン様は自分の罪の意識に耐えられなかった。しまいにはあなたを抱き上げることも出来なくなってしまった。事情を知らないヘネは他の人間の様に王が外で作った子供をセーレン様に預けたのだと思ったのでしょう。妊娠中から生まれるまで静養地にいらっしゃいましたしね。ヘネはセーレン様の侍女としてセーレン様とこの国に来たのにその時は離していました。そのことで余計に恨んでいたんでしょう。』


『お父様が私に国外での縁組を望んでオリビエと結婚したのか分かったわ……。』


『ミーツェ様!』


『ローランド……私はあなたを「父親」だとは認めないわ。』


『……。』


『少し、一人になりたいの。……お願い。』


するりとセルスロイの手を交わして白い猫は細い溝から暗闇に消えて行きました。


「話は終わったんですね。」


セルスロイがローランドを見ると力なさげにネズミはうなだれるように俯きました。


セルスロイはミーツェの生まれた時を思い浮かべていました。待望の第一子だというのに王妃の不調で静養地で生まれたミーツェ姫。王は満面の笑みで赤子を抱き上げ、王妃はそれに目を背けていました。それを見ていた者たちはミーツェは王妃の子ではないのではないかと噂しました。さも王妃が産んだように見せかけただけではないのかと。しかし、セルスロイには関係のない話でした。ミーツェは誰が見てもキジロ王にそっくりで、黙って育つだけでそのカリスマ性が揺らぐことは無かったのですから。もしも、ミーツェが何も持たない普通の娘ならば……セルスロイは迷いなく自分のものにできたでしょう。


「私はミミの出生には興味ありません。ミミがキジロの王女であることは変わりないのでしょう?ローランド様。」


セルスロイの言葉にローランドは耳を傾けました。この男はすべて知っているに違いない。そう感じていました。


「ミミの呪いは解けませんでしたね。本当にセーレン様はミミを愛していなかったのですか?」


ネズミは首を振りました。自分の告白だけでその先まで話は出来なかったのです。

セルスロイの顔を見るとネズミは紙の上を走りました。


「セーレン様に預かっていたのですね。私がミミに渡しましょう。ミミの行先は分かっています。落ち込んだら行く場所があるのですよ。」


不安げなネズミにセルスロイは優しくそう言ってセルスロイもまた闇に消えて行きました。




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