ねこと出生の秘密
話がまとまると4人は城を目指しました。まずは兵舎の一角に使われていない部屋が有るのでそこに潜伏することにしました。3人は黒い服に着替えると暗闇に忍びました。
「城には私の方が詳しい。私は城内の地下道を調べてくるのでお二人はここで待っていてください。」
城に着くとセルスロイはそう言ってギルたちを残してローランドと暗闇に戻って行きました。
「ローランド様、急いでください。」
セルスロイの声に熱がこもります。それもその筈、彼の目的は猫になったミーツェに会うことだったのですから。
*****
「ミミ!」
白い猫を見つけるなり、セルスロイは猫を抱き上げて抱きしめました。
『セルーお兄様!まあ、どうしてここに!?キジロを助けに来てくださったのね!』
頬ずりしてくるセルスロイにミーツェはタジタジでした。
『ギルといい、お兄様といい、どうして猫にはスキンシップが過剰なのかしら。』
ドギマギしながらミーツェは苦笑します。その間もセルスロイはミーツェを離そうとしませんでした。
ちゅうちゅう、とネズミがセルスロイを牽制しました。
「おっと。苦しかったかな。」
セルスロイはそう言うとミーツェを膝に乗せました。
「ミミ、お前の呪いを解くにはどうしたらいい?」
ローランドは文字の表をミーツェの前に広げました。
少し考えたミーツェは諦めてその単語を差しました。
おかあさん
わたし
きらい
「故セーレン王妃の事だね。……そうだと思ったよ。ローランドに聞いた。呪いは心の闇と絡んでるって。ミミの闇となっているのはセーレン王妃に愛されていなかったって事なんだね。」
ずばり、「愛されていなかった。」と言い当てられてミーツェは震えました。そうです、ミーツェの母親が自分を抱きしめてくれた記憶はありません。やはり他の人から見てもそうだったのかと思えばミーツェはますます落ち込みました。
「……昔からの噂です。ミミが本当はセーレン王妃の子ではないのではないかと。ミミはセーレン様の侍女が国に帰った後一時期落ち込んでいましたね。その時なにか聞いていたんでしょう?」
ミーツェは力なくセルスロイを見ると頷きました。
『侍女頭のヘネは国へ帰るとき、誰も居ない部屋に私を呼び出して言ったわ。貴方が生まれていなかったらセーレン様はもっと長生きされたと。貴方がセーレン様の命を奪ったんだと……。』
あの時のヘネの目を思い出すだけでミーツェは心臓が握りつぶされるような気持ちになりました。ヘネの目はミーツェは悪魔の子であるように言っているようでした。
『何て事を!侍女の分際で!』
ローランドは声を震わせて言いました。
「ミミももう子供ではない。真実を知っているのはきっと、義父と貴方なんでしょう?ローランド様。」
その言葉でローランドはセルスロイを恨めしそうに見ました。
『私はセーレン様を守りたかった。』
『お母様の?どういうことなの?ローランド……まさか。』
『勘違いしてはいけません。ミーツェ様。セーレン様は深く王を愛しておられた。』
『じゃあ……何?私は……もらいっこではないの?てっきりお父様がこっそり外で……。』
ミーツェは長年心の奥に隠していた言葉を勇気をだして声にしました。
『それこそ、「まさか」です。あなたは間違いなくセーレン様の子供。出産に立ち会った私が言うのだから間違いないのです。』
『……。』
『黙っていた方が貴方の為だと思っていたのです。私も……王も。貴方の明るさに救われていた。
ミーツェ様……あなたは……セーレン様と……
私の子なのです。』