頼もしい仲間
『雪の魔女さん、ありがとう。オリビエを救えたら、貴方の呪いもきっと解けるわね。その時は色々とお話ししたいわ。』
ミーツェの言葉に雪の魔女は微笑みました。
『最後に一つだけ……。私の呪いは解けるかしら?私は何ができるでしょう?』
その質問に雪の魔女は少し考えてからこう答えました。
『呪いは負の力。対抗できる力を貴方は持っている。貴方の呪いは許す気持ちから解かれる。』
『対抗する力って?』
『それは、祈り……。』
『許すって?何を……?』
ミーツェの最後の質問はいつの間にか止んでしまった雪と共に消えて行ってしまいました。
雪の魔女は雪と共に消え、辺りは静かになっていました。
銀色に輝く地面がキラキラと光っているのをミーツェは名残惜しそうに少しの間見つめました。
*****
ギルは雪の魔女と会えると雪の魔女に用意していた質問をいくつかしてカナルトの森を離れました。魔女を倒すのに必要なものが有るか……これに雪の魔女は頷きました。それはどんな武器かと尋ねると剣のところでまた頷きました。
「必要なのはオリビエを倒す剣。」
「文献でも心臓を突くとありましたね。」
「ただの剣ではない。「聖剣」だ。大陸に存在する聖剣は4つ。さて、どこから探すか……。」
地図を広げたギルがラルフと思案していると彼の小さな白い猫は地図の上をそのかわいい手で指しました。
「ミミ。そのかわいい手をどけてくれないと地図が見れないよ?」
ギルはそう言いますが猫はその場所をポンポンと前足で叩きます。
「……。フルパップ……?」
彼の白猫は嬉しそうにもう一度その場所をポンポンと叩きました。
******
「しかし、セルスロイが居る教会とは、厄介だな。」
「ギル様が黙っていたことなどバレているでしょうしね。協力してくれるでしょうか。」
「ミミが危険だな。……でも、仮にも命の恩のある猫にひどいことをすると思うか?」
「……さあ?王女はまだ眠ったままなのでしょうか?」
「調べてくれ。ラルフ。取り敢えずはセルスロイと話をしよう。ミミは隠して置く。相手の出方を見るしかない。魔女を倒すという目的は一緒だからな。」
「わかりました。ではフルパップで情報を収集します。」
ギルはラルフに確認してからミミをバスケットに押し込みました。
さて、多少難はあるものの、フルハップに行く事にしました。彼のかわいい白猫が誘導したというのもありますが、地理的にも一番行きやすい所から探すのも良い考えだと思ったからです。フルハップへ行くためにラルフが馬を用意しに行っているのをギルは宿屋の軒下で待っていると声をかける者がいます。
「おい、急ぎなら送って行ってもいいぜ?」
ウィンクしながらギルに話しかけてきたのはデイです。
「デイ!帰ったんじゃなかったのか?」
「レイラにギルを助けてやってくれと頼まれてな。急いで戻ってきたんだ。すぐにキジロに行くのか?俺の船なら4日で着くぜ。」
「ありがとう。助かるよ。でも、フルパップに寄るつもりなんだ。」
「……なにか、雪の魔女から聞けたんだな。お前は大した奴だ、ギル。」
デイは歓心してこの愛らしい甥っ子を眺めました。彼の大好きな姉、レイラにそっくりなうえになかなかのやり手です。片目を失ってもその魅力は衰えることもありません。
「なに、ミミのお蔭なんだよ。俺の幸運の女神なんだ。」
「へえ。レイラが猫に褒美を与えた時には気でも狂ったかと思ったけれど、お前にとってよっぽど大切な猫なんだな。」
「ええ。ところで、デイはどうする?フルハップからキジロまで乗せてもらえれば助かるけど。」
「ふん。水臭いこと言うなよ。従者一人でテルゼの王子様が城を飛び出したんだぜ?レイラでなくとも心配するぜ。これでも腕には自信がある。ここからは俺も付いて行こう。」
レイラ王妃も回復し、ギルが魔女に片目を奪われた不名誉を一人で背負う必要はありません。テルゼ王も復活した今、大国テルゼに怖いものは無いのですから。
「イーサンも元気になったし、お前の為に兵を出してもいいと言っているくらいだ。直接対決なんて危ないことをしなくたってお前の目は取り返す。」
「デイ。父上にも話したが、これは俺の問題だ。確かにオリビエは危険だが、自分で取り返さない事には俺が自分を許せないんだ。なんでも親や周りに頼っていて将来一国の王が務まるとは思えない。それに、母上との仲も上手く行ったんだ。きっと弟や妹の一人や二人増えるだろう?」
今度はギルがデイにウィンクしてみました。それを見てデイは豪快に笑いました。
「お前は実に良い男になるに違いない。」
デイはギルの頭をくしゃりと撫でると守るという決意の表れかギルの後ろに回りました。