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ねこと噂話

お久しぶりですいません。


『ミミ、あんたはホントに心の優しい子だ。』


少し眠ってしまったシマ猫が目を覚ますと隣でかわいらしく寝息をたてている白い猫がいます。きっと自分のことを心配して隣に居たのでしょう。なんだかシマ猫はムズ痒い気持ちになりました。


『でも、この城に入ってからひどく頭痛がする。アタイの体何だかおかしい。』


もしかして雪の魔女の魔法が消えてしまってゴブリンの姿にもどってしまうのではないかとシマ猫は心配になりました。でも、そんなことこの小さな心優しい姫に言ったら心配させてしまうだけです。


『戻るようなことがあるといけないからミミとは離れて行動した方がいいな。』


シマ猫はなんだか数日の間にすっかりギルと同じようにミミに自分が骨抜きにされているように感じます。でも、小さな白猫を見てそんな自分も悪くないと思いました。



*****



『体調も悪いのにシマさんはどこへ行ったのかしら。』


朝、目を覚ますとシマ猫の姿はありませんでした。しばらくギルの手伝いをしてからここを離れようと思っているミミは情報収集する気でゆっくりと伸びをして体を馴らしました。


『ギルもどこかへ出かけたみたい。皆お昼には帰ってくるかしら?まあ、いいわ。情報収集と言えば侍女さんたちだもの。』


昨日、通路や部屋の位置を簡単に頭に詰め込んだミーツェは軽い足取りで午前の休憩中の侍女の部屋へと忍び込みました。ここは宮殿の中央にある侍女の控室で王族の世話周りの係りの者が集まっているようです。


「アルギル様が帰ってきたんだって?」


「昨日、ね?コノアは見たんだって!なんか一層恰好良くおなりになっていたそうよ!なんだか、こう、大人の色気ってやつ!?」


「え~!?ウソ!見たい~!」


「アントン卿が早馬立てて呼び戻したらしいわよ!あの高慢ちきな娘がダダこねたんでしょうよ?」


「お父様~。私、アルギル様をお慕いしてるんですの~!とか、なんとか言っちゃってさ!」


「まったく、王妃様の為にアルギル様が頑張ってるってのに何やってんのよ!あの親子は!」


「ほんと、王様が倒れられたのも自分たちが無能なせいじゃない!」


「あ~あ。王妃様が早く目覚めてくれないかしら。」


「あんなさびしそうな国王様を見ていられないわ。」


侍女たちは思い思いを口々にしていました。誰も彼も王妃が目覚めるのを心待ちにしています。


「毎日教会で王妃様が目覚めることをみんなでお祈りするしか出来ないなんて。」


「いつ目覚められてもいいように今日も張り切って王妃様を綺麗にして差し上げましょう?」


「そうね。王様が気を落とされているんだもの。私たちまで暗い顔をしていては王妃様に叱られるわ。」


「そうよ。」


「そうよね。」


王妃は皆からとても慕われる人柄だったようです。ギルの母親がそんな暖かい人で良かったとミーツェは侍女の話しに聞き耳を立てました。


『オリビエだったらギルのお母さんに敵対している人から話を聞くに違いないわ。』


アントン卿……というのはどうやら侍女から嫌われているようです。


『アントン卿のところへ行こう。』


ミーツェはするりと侍女たちの部屋を出ると廊下を走っていきました。



*****


「お父様、アルギル様は戻られたのでしょう?なのに、どうして私に会いに来てくださらないの?」


アントン卿の住まい近くまできてミーツェが耳を澄ましていると少し女の子にしては低音の声の持ち主が父親に抗議していました。


「ジェリー。アルギル様はお忙しくてな……。」


「毎日、お茶の支度して待ってるのに。」


口を尖らせた女の子はなるほど、ギルが言ったようにアヒルのような口をしています。


『あの子もギルのこと好きなのね……。』


ミーツェは急に自分が猫であることが悲しくなりました。


『私はギルとお話もできないもの。』


女嫌いで通っているギルもいつかは誰かと結婚することでしょう。その相手が自分であるようには思えません。猫になった自分の姿が窓に映っています。ミーツェはそっとため息をつきました。



******



アントン卿の所では娘がギルと会いたいとダダをこねるばかりで新しい情報は得られませんでした。仕方なく、ミーツェはギルがいる部屋へと足を運びます。すると、外から大きな鐘の音が聞こえてきました。


カンカンカンカン


カンカンカンカン


『なにかしら。』


ミーツェは窓から身を乗り出して外を見ました。高いお城の窓からは大きな船が港に着く様が見れます。


『絵本に出てくる海賊船みたいだわ!』


船は大きな鐘の音を立てながら赤い国旗をたくさんなびかせています。

にわかに城も騒がしくなっていきました。




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