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二匹になった猫

朝日に照らされた雪がチカチカとミーツェの眠りを遮ってとうとうミーツェは目を覚ましました。


『雪が止んでるわ。』


空は美しい青空で昨夜の吹雪がウソのようです。


『とりあえずはギルのところへ行きましょう。』


ミーツェは隣で寄り添うように丸くなっていた茶色のシマ猫に声をかけました。


『もう朝か……。おはよう、お嬢ちゃん。』


雪の魔女は呪いを解くことは出来ないけれど、呪いをすり替えることはできると言いました。それを聞いたゴブリンはミーツェを見て自分も猫にしてくれと雪の魔女にお願いしたのです。


『そっちはもう違う道だよ。宿出る道はこっちだ。』


慌ててミーツェはシマ猫について行きます。迷いの森は数時間ごとにその地形を変えてしまい、ギルたちのように専用の地図を持っていないとなかなか森の奥へ行くことも森の外に出ることもできません。


『あなたがいてくれて本当に助かったわ。』


前を歩いていたシマ猫はその声を聴いて少し立ち止まり、ほほを赤らめて三回鼻をかきました。




*****




「ミミ!戻ってきたんだな!」


宿の外で会ったギルはミーツェの姿を確認すると飛び上がって喜びました。昨日彼があきらめた子猫が彼のところにまた帰ってきたのです。


「あの吹雪の中、よく生きて帰ってきましたね。」


ラルフも驚きながらミーツェを迎えてくれました。


「あれ!?」


ギルはミーツェの後ろにいるシマ猫を見て固まってしまいます。


「おい、やっぱりアタイ、猫に見えてないんじゃないか?」


「大丈夫よ。私には立派な茶色のシマの猫に見えるもの。ギルは無類の猫好きだからきっと一緒に世話してくれるわ!」


ミーツェはそうシマ猫を勇気づけましたがギルの眉間のしわはよる一方です。


「まさか、昨日ギル様から逃げたのはその猫のせいでは……。」


ラルフがギルに問いかけましたがギルはまだ固まったままです。


『どうしたの?ギル?』


ミーツェがギルに近寄るとギルはガバリとミーツェを抱き上げました。


「ダ、ダメだ!!そんな小汚いシマ猫にミミはやらん!」


『!?』


抱き上げられたミーツェはギルが何を言っているのかわかりません。


「ギル様。こちらのシマ猫……その、メスのようです。」


「え……!?」


ラルフの声でギルは空気の抜けた風船のような声を出して……


『ふ~っ。』


その様子を見ていたシマ猫はため息をつきました。



******



『だから、お嬢ちゃんはあいつにとって特別なんだよ、フン、バカらしい。』


一緒に面倒を見てくれるものの、ギルの自分に対する態度とシマ猫に対する態度があまりに違うのでミーツェは目を白黒させてしまいます。


『でも……。私は猫なんだからやっぱりギルはちょっと変ね。』


その声を聞いたシマ猫はちらりとギルを見ました。


『確かに猫を恋人みたいに扱うのは変態の部類かもな。まあ、でもお嬢ちゃんは猫でもかわいいさ。きっと見る目があるんだろう。』


『そうかな……。』


恥ずかしくなって下を向いてしまったミーツェにギルの甘い声が聞こえてきました。


「ミミ。寒いだろう?膝の上においで。」


言うなりギルはミーツェを膝に乗せてしまいます。


「おっと、シマはバスケットの中だ。」


『フン、言われなくたっても行くさ。』


シマ猫はいつの間にかギルに「シマ」と呼ばれていました。呼ぶ名前がなくて困っていたミーツェもこれ幸いと「シマさん」と呼ぶことにしました。なんとなく名乗り忘れてしまったミーツェも「シマさん」に「ミミ」と呼ばれていましたが幼少期の愛称だったので違和感がありません。


朝食が済むとギルたちはまた森に向かうことにしていました。雪が降らないことには雪の魔女に会えることはないのですがいつ雪が降るとはわかりません。


『もっと雪の魔女とお話ししたかったわ。また会えるかしら。今度こそギルに会わせてあげたい。』


そんな風にシマ猫に話したミーツェはシマ猫と一緒にギルたちが迷いの森へ行く準備をするのを眺めていました。



*****




「お客様、お待ちください!テルゼの王宮よりお手紙が着きました!」


さあ、森へ出かけようとしたギルたちのところへ宿の主人が駆け寄ってきました。見ると外に早馬が着いています。早馬とは急ぎの手紙を届ける貴族の配達便です。宿の主人から手紙を預かったラルフは確認してからゴム印の付いた手紙の封を切ってギルに手渡しました。


「……。ラルフ。雪の魔女探しは中断だ。父上が倒れたらしい。」


渋い顔をして手紙を読み終えたギルがそう言うとラルフは一瞬だけ辛辣な顔をしましたが


「すぐ、戻る準備を致します。」


といって馬車を取りに馬小屋に向かっていきました。


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