Peace1-1
"ふと夜空を見上げると鏡花水月のようなオーロラで満ちていた。8人の心は、不思議とオーロラが告げてくる感情で溢れた。"
あるところに地球のようで少し異なる世界があった。その世界の人間は外見が幼く、13歳で成人する。
小学校は4年あり、5〜8歳まで通う。ここでは様々な科目を体験し、自分の専門分野を探す。
次に専門校が3年で9〜11歳まで通う。大半の人が専門分野に特化した勉強をするが、まだ自分の専門分野が決まっていない人、複数の物事に興味がある人はこの段階で絞る。
大学は基本3年で12歳〜14歳まで通う。エンタメや芸術系は2年、医学系は4年まである。実習を通して社会に貢献する準備をする。
この世界は効率と技術の発展を重視した世界で、長く生きることは非効率的とされ、地球より寿命が短い。
それに伴って、"性別"という概念が重要ではなく、親という概念は役割となった。
-朝-
オーロラの件はたちまちニュースで取り上げられた。"天から送られた手紙とも言われるオーロラ""○○年振りに再来"
ゆら「フィフィ、おはようございます!今日は皆で待ち合わせしていて、山に向かいますよ!」
そうぬいぐるみのフィフィに話しかける。フィフィはうさぎとりすの特徴を持つぬいぐるみで、雑貨屋を営む親がくれた葉っぱ型の髪飾りをお揃いにつけている。小さい頃からいつも一緒にいるフィフィを手に抱え、部屋から出る。
ゆら「行ってきます!」
母「こんな朝早くからどこに行くの?」
ゆら「山です!」
母「課題はもう終わったの?」
ゆら「はい!」
母「明日学校なんだから、早めに帰ってくるんだよ!」
ゆら「分かってます!」
ぼくは人より成長の遅い子どもでした。皆ができていることがぼくにはできない。努力して出来た頃には、皆次のことが出来ている。
どんなに努力しても、才能が求められるものは特に、上手くできませんでした。
(お母さんはそんなぼくを心配して、気にかけてくれてるのに、少し鬱陶しいと感じてしまうなんて…。)
友達と待ち合わせの場所に向かう。桜並木の道は、花びらの絨毯になっていて、桜は緑の葉が目立ち始めている。
ゆら「早めに着いてしまいました⋯あ!フィフィの頭の上に桜の花びらがのってます!記念に家に持って帰りましょう!」
ゆらは桜の花びらを手帳に挟もうとすると、
「ねえ、あの人一人で喋ってるよ。」
「ぬいぐるみ持ってるし、話しかけてんじゃない?(笑)」
「冗談キツいって(笑)そんなんただのヤバい奴じゃん(笑)」
ヒソヒソと話す誰かの声が、ゆらの耳に聞こえてきた。いつものことだった。
この島は昔、社会で上手くやっていけないと判断された人の隔離場だった。だがその人だけでは経済が回らず、貧困問題が絶えなくなり、社会に適合できる者も住むようになっていった。
そうして今は、普通に生きられる人とそうでない人が一緒に暮らしている。しかし島外ではそうもいかないようで、社会に適合できないと診断が下ると、必ずこの島に流される。
ゆら(昔みたいに、社会で上手くやっていけない人だけだったら、もっと分かり合える人も多かったはずなのに⋯。)
みれい「ゆらー!おはようです!」
みれいはゆらの背後から飛びつく。
ゆら「みれい!おはようございます!」
みれい「フィフィもおはよ〜です。目潰して良いですか?」
ゆら「駄目です!」
みれい「でも昨日アニメで『二本指しかなかったら目を狙え』って言ってました。」
ゆら「それ相手が攻撃しようとしてくる時の話でしょう!?フィフィは人畜無害です!」
みれいは専門校からの付き合いで、お互い社会に適応できないことを共有し、大学でも学部は違えどよく遊ぶ間柄です。
みれい「それにしても、ふらん遅いです。」
ゆら「そうですね⋯。あ、メールで『先に行ってて』と書いてあります。」
ゆらは携帯を確認し、ふらんに返信した。
みれい「じゃあ先に行きましょっか!」
2人で歩き出そうとしたその時、
犬「ワン!ワンワン!」
子ども「引っ張らないでー!」
親「2人とも待って!」
子どもは犬のリードを握っているものの、引っ張られていて、親らしき人物は犬と子どもを追いかけている。犬はゆら目がけて突進してきた。
ゆら「わあ!」
みれい「ゆら!大丈夫ですか!?」
ゆらはとっさに犬と子どもを抱きしめた。倒れたゆらの膝に犬が甘えてくる。どうやら、フィフィが気になったようだ。
親「すみません!お怪我はありませんか?」
追いついた親がゆらに尋ねる。
ゆら「大丈夫です。それに、2人とも無事ですよ。」
子供「もう!勝手に走っちゃダメでしょ!それにそのぬいぐるみ、その人のだよ!」
子供がフィフィを加えた犬に怒っていた。
犬「クウン⋯。」
犬は渋々、フィフィを放す。
親「本当に申し訳ありません⋯どうお詫びしたら良いか⋯」
ゆら「大丈夫です、よくあることですから!」
そう言ってゆらは立ち上がり、みれいと歩き出す。
みれい「ゆらにはよく、災難なことが起きますね⋯。」
ゆら「でも、誰かを助けられることもあるので⋯ぼくにできることは、それくらいですから。」
みれい「その場合、いつもゆらからトラブルに突っ込んでるじゃないですか!フィフィもこんなになって⋯」
ゆら「フィフィ、持ち歩きすぎてそろそろ黒ずんできてますね⋯洗濯しないと⋯。」
みれい「兎に角、今日は人里離れた場所でゆっくり過ごしましょう!」
ゆら「と言っても、山を登るだけですけどね。でも、昨日のオーロラ本当に凄かったです!ついお願い事をしてしまいました!」
みれい「お願い事?それって⋯」
ゆら「はい、もちろん⋯(ガタッ」
ゆらが道に敷き詰められた石に躓き転ぶ。
みれい「ゆら!?大丈夫です!?」
ゆら「はい、それよりフィフィが⋯!?」
みれい「ふらんナイスキャッチなのです!」
ゆら「え?」
ふらんはフィフィを見事抱き抱えていた。
ふらん「フィフィは無事だけど、ゆらの方が心配だよ〜。」
ゆら「ふらん!ありがとうございます!」
ふらんはみれいと同じ芸術学部で、ぼくとはみれい経由で仲良くなった友達です。ふらんも社会に適応できないそうで、ぼくとみれいは相談にのりたいものの、ふらんは聞き上手で、いつの間にか相談にのってもらっています。
しかし本当は、ふらんが自分の話をしたくないから話をズラしているのではないかと、みれいは勘づいているが、ゆらは気づいていないようだ。
ふらん「遅れてごめんね。何の話してたの?」
みれい「ゆらが昨日のオーロラにお願い事してたんですって〜。」
ふらん「へー!聞いても大丈夫な話?」
ゆら「は、はい。2人にはいつも相談してますから。⋯その、気になってるかすむ先輩ともっと仲良くなりたいって⋯。」
みれい「現実的な願いですね!フィフィとお話したいとか、かすむ先輩が空から降ってきますようにとかだと思ってました!」
ゆら「は!それもお願いしておけば良かったです⋯。」
ふらん「ま、まあ流れ星じゃないんだし⋯。」
みれい「確かに、オーロラって天からの手紙ともいうらしいです。それなら天に願い事するというより、天からの願いを聞かなきゃかもですね〜!」
ゆら「そ、それならぼくの願いは届いてもないんですね⋯。」
ふらん「ほらほら!今日ふらん達はこの山の御伽噺、湖の上の教会を探すんでしょ〜!」
ゆら/みれい「はい!」
この島の中心にある山は、山頂の真ん中だけ凹んだ不思議な形をしている。その昔、天使がこの山の凹みにあった湖に教会を作り、そこで人々を見守り、時に未来を啓示してくれていたと言い伝えられている。その御伽噺が今は、湖に浮かんだ教会を見つけた者は、天使に願いを叶えてもらえるという都市伝説のようなものに変わった。その理由の一つとして、どんなに上空から山を見渡しても、湖が存在しないからだろう。
ゆら「でもこんな山に本当に湖なんてあったのでしょうか⋯。」
ふらん「山の真ん中が凹んでて不思議な形はしてるけど⋯実際にあったかは分からないもんね⋯。」
みれい「それに、湖に浮かんだ教会ってそんな幻想的なものがあったなら、絵でも何でも残しておいてほしいものです!」
結局、山に入っても普段と変わらず、特に何もなかった。
用意していたお弁当をそれぞれ開き、皆でピクニックを楽しんだ。
みれい「これで桜が咲いてたらお花見楽しめたでしょうに〜!」
ふらん「上まで来るともみの木だらけだよね〜。クリスマスは飾り付けされて綺麗だけど。」
ゆら「それにしても、ここはいつ来ても落ち着きます、ねえフィフィ。」
日が暮れ始めた街並みを眺めるゆらはそう呟くも、ぬいぐるみのフィフィが返事をすることはなかった。
2人はそんなゆらの様子を微笑ましく見ていた。
ふらん「どうする〜?もう少し探索する?」
ゆら「…明日も早いし、帰りましょう。」
そして各自家に帰り、ゆらは眠りについた。
-夜-
ゆら(あれ...?今何時ですか...?家に帰ってすぐ眠っちゃいました...。)
虚ろな目を開けると、人気のない霧の中で身体を起こす。少しすると目の前の霧が晴れかけ、淡い光の先の湖上に、教会がそびえ立っていた。
小説をあまり読まない為、脚本調になっています。




